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zoom RSS クラシカルとモダン・オーボエを比較してみました

<<   作成日時 : 2005/05/15 22:01   >>

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オーボエの歴史を見ると、やはり他の木管と同様、キー数が増える多鍵楽器として発達しました。

それがよく分かるよう、クラシカルとモダン・オーボエを並べて比較してみましょう。

[フォト左] クラシカル・オーボエ Thomas Cahusac Sr 1780ごろ
       全長 632.5mm (リード含む) イエロー・ウッド 220g
       音穴10 キー2  A=415Hz (わたしの復元作品)

[フォト右] モダン・オーボエ Rigoutat RIEC シンフォニー
       全長 658mm (リード含む)  グレナディラ  675g
       音穴23 キー23  A=442Hz (リグータ社製)

多鍵の木管は、指が届かないところでもキー・メカニズムにより開閉するので、オクターブを出しやすくする音穴なども、自由にあけることが可能となりました。

クラシカル・オーボエでは、指穴は6つ(ダブルホールは1つと数える)。 それに、キー2つを使い操作するEb穴とC#穴と、あとはレゾナンスホールが両サイドに一つずつ2個あります。 合計で、音穴は10個。

モダン・オーボエで、同様に音穴を数えてみたら、なんと23個もありました。

これら音穴を、両手の指で開閉するわけです。 そのためのキーの数は、クラシカルがたった2つなのに対し、モダンでは、指穴までもキーパッドとなり、合計23個と大幅に増えています。

結果はどうなるでしょう? とても重くなります。 フォトのもの同士では、なんと3倍!

モダン・オーボエは、とても重く、左手親指を引っ掛ける金具があります。 この親指で支えるところが痛くなりますね。 (モダン・クラリネットも同様で、タコができます)

では、多鍵にすると音響特性が変わるのでしょうか? 音響特性は、リードチューブから始まり、ベルに到るテーパー状の内径で決まるので、キー数の多少は基本的に関係しません。

しかし、バロックやクラシカル・オーボエでは、各音を決める指穴の大きさと位置に関して妥協せざるを得ません。 半音階は、クロスフィンガリングで作り出し、正しいイントネーションと満足な音色を得るのが難しいのです。

モダンでは、指穴の位置自体はそれほど変えないものの、第3オクターブ・キーとか、半音階のための音穴も追加され、正しいイントネーションで、また楽に演奏できるように改良されました。 重くなったのは、そのための代償と言えるでしょうか。

音響特性のうち、管の長さで決まる基音のピッチを比較しましょう。 (フォトをクリックし、さらに右下に現れるアイコンをクリックして拡大し、物指しを当てましょう。)

フォトでリード先端は同じですが、第一、第二の指穴同士を順に・・・・、そして、C#音の音穴位置を比較して見てください。 少しずつクラシカルの方が長くなっていますね。 音を決める基本の管長として第一指穴からC#音穴までの長さの比率を求めると、クラシカルは、モダンの 1.06倍となっています。 

フォト左のクラシカル・オーボエは、実測で A=415Hz のC管。 この1.06倍を計算すると 丁度 A=440Hz となり、フォトの右がモダンピッチであることと一致します。 フォト右のモダン・オーボエの方が長いのは、最低音がC音でなく、それより全音低い、Bbまで出せるようにしているからです。

楽器演奏において重さは重要です。 わずか50gでも感じが変わります。 また、単に全重量ばかりか、「持ち重り」と言って、たとえ同じ重さでも、重量バランスが違うと、ずいぶんと感じが変わります。 クラシカル・オーボエは軽くて持ちやすいですよ。

最後に、材質によって重量がどのように変わるか比較してみましょう。 フォトの Thomas Cahusac Sr クラシカル・オーボエの場合:

・イエロー・ウッド Yellow wood      比重 0.75 → 220g 実測 【とても軽い】
          (フォト左のもの: 楽器の書棚 (1) も参照 No. 0211)

・欧州黄楊 European boxwood なら 比重 0.93 → 270g あたり 【普通】

・エボニー African ebony         比重 1.03 → 301g 実測 【ずっしり】
          (楽器の書棚 (6) を参照 No. 0214)

【注】 内径設計がクラシカルとモダンでは異なり、厳密には、長さがそのままピッチに比例はしません。 今回も、音響特性を決める要素について、管長の効果を大雑把に捉えています。




 

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タイトル (本文) ブログ名/日時
オーボエ
オーボエオーボエ楽器の一つ。本項で詳述。第二次世界大戦時にイギリスがドイツ爆撃に使用した航空支援装置。----オーボエは、木管楽器の一つで、上下に組み合わされた2枚のリードによって音を出すダブルリード式である(複簧管楽器)。オーボーともいう。フランス語のhaut bois(高い木(木管楽器))が語源... ...続きを見る
楽器の基礎知識
2005/07/28 05:37

コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
今回もとっても興味深く拝見しました
モダンオーボエの重さは、演奏の喜びを妨げそうに感じます。せめて指で押さえるところくらい、キーパッドなしの方が...とよく思いました。
フォトのクラシカルオーボエは4thホールもダブルなんですね。
ネットで見たグランドマンはシングルだったので、製作家によって異なっていたのですね。
オーボエ好き
2005/05/16 10:22
興味深くご覧いただき、ありがとうございます。とても励みになります。
久しぶりにRIECを出してきたら、なんとまあ重いことか・・。
第4のダブルホールですが、通常は丸くへこませるのですが、実物は、ベイトコレクションで見ましたし、接写撮影もしていますが、へこみがありません。まあ、そこのところは慣れの気もします。
トラベルソとは異なり、開いてゆく方のテーパーですから、オーボエは右手の指間隔が広くなります。わたしのRIECは、手の小さな女性でもOKとなるくらい、第4ホールカバーが二重のようになっています。わずか4mmくらいでしょうか。でもこの短さがとても重要ですね。
woodwind 図書館長
2005/05/16 22:29
RIECの第4キーの件は同感です。私のシンフォニーはキーの上に板が貼付けてあるようになっていました。フィリップリグータ氏がインタビューでこの点について、女性奏者の大い日本からの要望だということでした。
リードが気になるのですが、woodwindさまはモダンもロングスクレープなんですね。
RIECはJDR試用とのことなので短いリードでもいいのでしょうか?
私の経験からは???です。
私のシンフォニーはヨーロピアンなので、日本で一般に使われているリードのサイズでは全く音程が取れませんでした。私のリードを人に見せるとダモーレ?と言われていました。
面白いRIECですね。上下管はトラディショナル、ベルはシンフォニーのように見えます。
オーボエ好き
2005/05/17 13:57
リード研究のオーボエ好きさんの貴重なコメントですね。
@ロングスクレープしか作ったことがありません。モダンはもう1本ありBundyです。25年前に米国に滞在していたことがあり、オーボエを試みたくなり楽器屋でレンタル品を購入。米国ではロングのリードで、リードつくりの購入本もロング。それ以来ロングとなったわけ。結構、深くくわえてしまっているかも。
ARIECは購入した15年前の当時、JDRの特別仕様のベルを付けたシンフォニーがあり、そのベルをRIECに付け、確か日本に合うように調整したものをJDR仕様としたみたい。さすがにオーボエ好きさん。上下管はトラディショナルなのでしょう。当時のカタログではそれまでのRIECもあったと記憶します。
B短い、長いリードの定義はどれくらいでしょうか?通常は72mm。コルク付きチューブ長も、1〜2mmの差。全体で2mmぐらいの差だと442+−2Hzぐらいでしょうか。ダモーレ用か?と言われたのですか?
Cオーボエ好きさんのはヨーロピアンは、フランスで購入されたのでしょうか。音程がとれないのは、第3オクターブあたりのことですか・・。
woodwind 図書館長
2005/05/17 21:44
私のリードに対する短いと長いの定義は次の通り
超短い 全長68mm(ブルースワインシュタインはもっと短かったかも)
短い  全長70mm
普通  全長71-72mm
長い  全長73mm-74mm
超長い 全長75mm-76mm(オーストリアでRigoutatを吹いていた人はこんなサイズだったらしい。)
私のは全長74mm tip幅7.6mm。モダンにしては幅が広すぎということでダモーレ用かということでしょう。Jazzは440が一般的なのでこのサイズが必要だったのです。
私のは個人の楽器商がフランスのRigoutatで直接買ってきたものです。
音程が取れないのは全域ですね。リード長を74mmが適していると気づくまでが長かったです。
オーボエ好き
2005/05/18 12:38
A=440Hz用のために2mm長い必要があったのですね。それにしても、Jazzでオーボエというのは普通によく演奏される方がいらっしゃるのでしょうか?Jazzにもよるのでしょうが、メインはディキシーのクラリネットにように絶え間なくやるのか、それともソプラノサックスのようなのか、いずれにしてもわたしはJazzでオーボエを聴いたことがありませんので、よろしければ教えてください・・。
woodwind 図書館長
2005/05/21 00:04
基本的な長さとして74mm必要で、440hzの為にtip幅が7.6mmだったという訳です。
442hzのためには全長変わらずでtip幅7.4mmと言う具合です。
ピッチのために全長を変えることはありません。
それをするとハーモニックスやマルチフォニックスなど構成音の音程が崩れるのです。
モダンテクニッックを使わなくてもおそらく全長をいじってしまうと部分音の音程は崩れているのではないかと思います。良い響きはしなかったと記憶しているので。

Jazzのオーボエの使い方ですが、USAにはオーボエでjazzを演奏する方は多いようです。
私はソプラノサックスをまねたスタイルをしていました。BossaNovaではフルートをまねていました。
Jazzを通して即興演奏を身につけて、Jazz以外にもセッションの幅が広がっていました。フレーズのキャッチボールが好きでした。
オーボエ好き
2005/05/21 19:08
う〜む。たいへん微妙な世界のようですね。その全長のわずかな差で、ハーモニクスやマルチフォニックスの「構成音の音程」が崩れる件。
すばらしい感覚をお持ちですねー、うらやましい限りです。
トラベルなどは、一定の内径で2オクターブ半を作り出しますが、厳密には高調波の関係がうまく取れませんよね。パイプオルガンのように比率一定で高音にゆくほど細く・短くするなら別ですが。トラベルソでは管径と長さにおいて、歌口や指穴は一定。いくらアンダーカットの工夫で、高いほうと低いほうのオクターブを何とか保ったとしても、高調波の含まれ方(および位相)はきっと異なる気がします。
オーボエ好きさんのような聴力と感性の持ち主の方は、楽器の絶妙な評価が可能になるのでしょうね。
ボサノバではフルートで低い音域で聴かせるバラード風のものや、心から涙し感情を歌い上げるようなものがありますが、オーボエでは、やはりフルートの高音域での類似性を追求されるのでしょうか。
ところで、即興とフレーズの掛け合い。これはいい。単なる楽器演奏(操作)技術の話を超え、とっても音楽というか「人と楽しめる世界」で、いいですねー。
woodwind 図書館長
2005/05/21 23:53
ボサノバですが、やはりオーボエではフルートの4オクターブに及ぶ
高音を駆使するパッセージをまねするのは難しいです。
それに及ばなくても高音域をつかったコミカルさはだせます。
低音域で聞かせるものの方がいい感じですね。
結局ソロで退屈せずに聞かせるには、様々なパターンを使用していくことになります。
オーボエ好き
2005/05/22 09:01
やはり、相当、演奏を自由に楽しんでおられますね。うらやましいです。また、いろいろ教えてください。
バロックあるいはクラシカルのオーボエでも、Jazzやボサノバのパッセージにも適した方法で、音楽を生み出すこともきっと考えられるのでしょうね。最近は、尺八や竜笛などを交えた音楽表現もあるでしょうし、オーボエ好きさんの先生といわれる方など、笙なんかで、そのようなミックスした音楽つくりもあるのでしょうかねー。
woodwind 図書館長
2005/05/22 21:39
ないと思います。
彼は演奏はしません。作るときに吹くだけです。
演奏能力が高ければ良い楽器を作れると言う訳ではなく、
逆に演奏能力が低くても良い楽器を作れるということを目の当たりにしたのは良い経験でした。しかし、演奏能力とは関係なく、耳と感性は比類なきものです。
演奏の練習を通してそれらを培った私にはとても不思議に感じられました。
オーボエ好き
2005/05/26 12:19
わたしも、その比類なき感性と耳があればと、うらやましい限りです。
今日、文献集に載せました図書を読んでいたら、19世紀中ごろのベーム式フルートのあたりで、フルート製作家と(メカニカルフルートの)発明家と演奏家とは1人でやっているが、必ずしも1人で全てやるのでなく、分業でもいいのでは、との当時の考え方がありました・・。また、10数年〜20年前に読んだ古楽雑誌で、オランダやベルギーに古楽関係で留学されたわが国の古楽演奏の開拓者(現在の著名な演奏家の方々)の談話があり、オーボエもリコーダもみな自分で作り、クラスでの演奏で「自分の欠点を楽器のせいにできない・・」との面白い記事があったのを覚えています。英国でも音楽関係の大学で、トラベルソなど楽器の製作コースがあります。面白いですよね。
woodwind 図書館長
2005/05/27 22:40

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