![]() 尺八という楽器をご存知でしょうか? 小学校の音楽教材に、縦笛(リコーダー)が導入されたのは、戦後のわが国の復興にあたり、米国の指導によると聞きます。 そう言えば、わたしも小学3年のとき、スペリオパイプ(リコーダー)の鼓笛隊だった・・。 最近は、和楽器に親しむということで、尺八、筝、和太鼓も導入された様子。 尺八の長さは、尺貫法で、「一尺八寸」、メートル法で545mm。 竹の管で、縦に構え、歌口は上にあります。 歌口からのぞくと、まあるい景色が見えます。 早い話、ずん胴のパイプ。 両の手で5つ穴を閉じると、上の歌口と下端で、両方に穴の「開いた」管(くだ)で、「開管」と呼ばれます。(開管/閉管は、→楽器の書棚(8)) 竹を輪切りにし、斜めに切ったエッジが歌口。 エッジに息を吹きあてて空気振動が起こり、管長で決まる定在波の音が出ます。 フォト右は、「新設計なる、寸足らずの尺八です」。 ・・・・あっ、冗談です。 フォト左とともに、フルート・トラベルソの頭部管(ヘッドジョイント)です。 T.Lotのコピーで、キャップを除いた長さは、221mm。 内径(ボア)は、19.6mm。 (T.Lotの全容は、→楽器の書棚(5)) 説明の都合で片方を裏返しにし、歌口が見えないように撮影しました。 キャップを外し、中のコルクも抜いて見ると上にポッカリ穴が開き、尺八と同じような管になりますよね。 今回は、木管の音響特性として、管の長さと歌口の関係を見てみましょう。 とくに、「実効」の長さです。 ●尺八のごときの管(フォト右) 上と下に穴が開いていますから、波の振動は両端で最大(腹)、真ん中で最小(節)となる定在波です。 基本(基音)となる、周波数を求めてみましょう。 15℃における音の速さは、340m/秒。 長さ221mmの管が、1/2λ(波長)に対応するので、波長は λ=442mm: 340m ÷ 0.442m = 769Hz → ピッチに直すと A=384Hz (第二オクターブ音) ●トラベルソの頭部管(フォト左) ご存知でしょうか、頭部管だけでも音が出せるのです。 下の穴は良いとしても、上の穴は、一体どうなっているのでしょう? 歌口が見えます。 その上には、コルクの栓がしてあります。 コルクの下端は、歌口の中心から、23〜28mm程度。 これでも、両端があいた「開管」なのでしょうか? ハイ、もちろん開管です。 では、「実効長」は、どう考えればいいのでしょう? コルクの栓の下端から、管の下までの空気粒子が振動するのだから、その長さでしょうか? それとも、空気が出る実際の穴は、歌口がだから、その中心と管の下までなのか。 答えは、いずれでもありません。 尺八のごとき管のポッカリ穴に相当する上端の仮想の穴は、実は、コルクを通り抜け、その上部にあります。 これを求めるため実験をしました。 頭部管だけ吹いてみて基音を実測したところ、 A=392Hz プラスマイナス40セント(Cent) でした。 (実音は、第二オクターブのA音=784Hz) これから、実行長を求めると、 340m ÷ (392 x 2) ÷ 2 = 0.217m = 217mm 楕円(10.5mm x 8.4mm)の歌口の中心は、下端から156mm。 したがって、仮想の上端は、歌口の中心より上方へ、 217-156 = 61mm のところ。 すなわちコルク栓を通り越します。 ●モダンフルートの場合 モダンフルートの原型は、ベーム(T.Boehm)が作りました。 彼の書 The Flute and Flute Playing (→文献集)には、A=435Hzのモダンフルート理論があります。 歌口は、12.2mmx10.2mm。 頭部管の内径は、17〜19mmの放物線近似のテーパー。 仮想の上端は、歌口中心から、 68.5mm にあります。 コルク位置は、17mmですから、やはり、コルクを通り越しています。 ●歌口の穴の大きさによる実効長 実は、木管の内径(ボア)と歌口の大きさにより、実効長が変わるのです。 フォト左の通常のトラベルソで、歌口を内径と同じ大きさまで拡げたとしましょう。 そうすると、これは、その位置で、管を輪切りにしたのと同じとなりますね。 したがって、管の下端から歌口までの、尺八となります。 実行長は短くなり、ピッチが上がります。 逆に、歌口を小さくしてみましょう。 T.Lotの初期のものは9mm程度の円形。 この場合の仮想位置は、歌口のさらに上方にシフトします。 もっと小さくすると、仮想位置は、実際の頭部管の上方、何もない空間の位置となります。 どんどん、ピッチは下がります。 ●バロック木管の設計とピッチ調整 それなら歌口を唇で覆い、穴を小さくするとピッチが下がるのでは? はい、フルート・トラベルソは唇でピッチを調整できます。 しかも相当量、変えることができます。 尺八もそうです。 5つ穴しかなく、あとは奏者が口で調節したり、指穴を少し塞いだりして半音階相当を作り出すそうです。 小さな穴は音が出にくく、また管が長くても同じ。 インピーダンスが増加し実効長が長くなってピッチが下がります。 大きくすると出やすく、アドミッタンスが増加しピッチが上がります。 歌口に限らず、木管の指穴の大きさを変えることで、各音のピッチが調整できます。 逆に、指が届かない場合に、指穴の大きさを変えて、届く位置に開けることができます。 バロック木管は、このようにして設計されているのです。 フォトのT.Lotは、頭部管は比較的に長く、頭部管自身のピッチがA=392Hzとなっていることから、当時フランスの、いわゆるベルサイユピッチを出すことが基本となっていると想像します。 上部替え管を変えることにより、木管のピッチが変えられます。(→木管のピッチはどうややれば変わるのでしょう) ただ、あまりに高いピッチに変えるには、頭部管自体の長さも短いものにすべきでしょう。 ところで、コルクを通り越したところに仮想の上端穴があるのですから、コルクよりも上の頭部管の部分は不要なのか? はい、切り取っても音が出ます。 ただし、楽器の重量バランスを考慮して、頭部管の長さが設計されているのです。(→ツートン・カラーのトラベルソの音色はいかに) 穴の大きさがピッチに与える影響を取上げましたが、結果として引き起こされる、音色や音量、あるいは反応にも、違いが出て来ます。 ベームは、19世紀、モダンフルートにて、理想の位置に理想の大きさの指穴をあけました。 彼に至る、バロック木管は、製作家(モデル)により、種々設計が異なり、独特の音色を出していることを書き添えておきます・・・。 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
モダンと比べてトラベルソは本当に様々な寸法で設計され、作られているようですね。 |
オーボエ好き 2005/09/11 08:45 |
オーボエ好きさん、こんにちは。 |
woodwind 図書館長 2005/09/11 11:55 |
現在はモダンを演奏することはありませんが、 |
オーボエ好き 2005/09/12 08:12 |
音量のせいで近所迷惑だそうですが、我が家ではトラベルソであっても、「近所迷惑だからやめなさい・」と言う言葉が飛び交います。(音量もさることながら、下手な演奏だからと言うこと・・) |
woodwind 図書館長 2005/09/18 00:04 |
いい響きの場所ですが、反響が遅い場所はなかなかないですね。 |
オーボエ好き 2005/09/19 23:47 |
わたしの経験では、欧州および米国でのあちこちの教会、それも小さめな教会が良かった気がしています。教会の石造りです。ただ、ミラノのドゥオモの横のは周囲がうるさくてだめ。 |
woodwind 図書館長 2005/09/20 01:09 |
記事の誤りを訂正しました:モダンフルートの仮想位置で、文献での51.5mmは、コルク栓の端からでした。わたしの文章表現は、歌口中心からとしたので、68.5mmがただしい値です。 |
woodwind 図書館長 2005/09/22 23:26 |
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