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zoom RSS 材質によってトラベルソの音色は変わるのですか

<<   作成日時 : 2005/09/17 23:50   >>

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楽器の書棚 (12) 2005/9/17

木管楽器の音響特性を決めるのは、主にボア(内径)の形状です。

今回は、フルートを取上げてみましょう。

バロック以前の、ルネッサンス時代には、ルネッサンス・フルートがあり、管体は内径が円筒(シリンダー)の形をしています。

バロック時代になると、バロック・フルートの外形・内径とも、足管に向かい少しずつ細くなる円錐(コニカル)となりました。 (こちらも参照→トラベルソの内径は複雑なテーパーです)

バロック以後、クラシカルの時代では、管体の内径形状は円錐のままで、一般に径が小さくなりました。 その後、現代に至るモダンフルートでは、内径が円筒に戻りました。

フルートの歴史の中で、内径が、円筒 → 円錐 → 円筒 と変遷したのは、どうしてでしょう?

その時代で要求されるものが変わったと見られます。 ルネッサンスから、バロックへと移るにつれ、それまでの声楽主体から、楽器だけの音楽が楽しまれるようになりました。

フルートの役割りも、徐々に独奏楽器として位置づけられ、多くのソナタや協奏曲が作曲されました。 声楽に比べ、広いオクターブにわたり奏することができ、指穴を拡げずに済む円錐型が、これに貢献したようです。

バロック時代では、現代の大ホールでの演奏とは異なり、宮廷での独特の調律を持つ音楽が楽しまれたのでしょう。 円錐形によるやや曇った音色と、少し抵抗感があり息の通りが少なく、音量も小さなものでした。

クラシカル時代に移ると、交響曲など音楽自体のスケールが大きくなりました。 フルートも豊かな音量と、開放的で、遠くまで通るよう高音域で響くことが要求されたのです。 低くて小さな音では、全くかき消されてしまいますよね。 ただ、狭い管径にて高域オクターブを出しやすくしたものでは、音量はそれほど大きくはないようです。

その後、大きな歌口や指穴を持ち、息の通りも良く、クロスフィンガリングによるこもった音色も一掃する、メカニカル・フルートと呼ばれた多鍵フルートが、数多く改良されました。 さらに、それらの円錐内径が維持されたオールド・システムに代わり、再び円筒型のベーム式への変革がなされ、現代のモダン・フルートが完成しました。

このフルートの歴史の中で、内径設計の違いで音響特性が大きく変わりましたが、同じ時代のフルートでも、使われる材質が異なると音質が変わるのでしょうか。

バロック・フルートの材質の木は、種類により比重とか緻密さが異なり、同じ木でもまた一本一本異なりますから、音色や吹奏感が変わります。

一般に、柔らかく軽い材質では、包み込むような音色で、リコーダーに代表されるように、アンサンブルに適しているでしょう。 また、硬く緻密で重い材質では、輪郭が明確で、他の楽器に負けない独奏(ソロ)に向いていると言われています。

音色は人の好みもあり、何が・どちらが良いとかではありません。 求める音楽と、その解釈や、楽しみ方、演奏場所や合わせる楽器などにより異なって来るからです。

オーセンティック性を求め、バロック音楽をオリジナル楽器やコピー楽器を用いて、当時のピッチ、奏法、演奏場所、解釈に従って演奏する団体が近年多く現れていますね。 CD録音も随分増えてきました。

今の時代では当たり前となった、平均率での、ピッチも高く、音量も豊かで、理想と言えるばかりに発達したモダン楽器によるバロック音楽の楽しみ方のほかに、オーセンティックな世界での楽しみ方もあると思う人が増えてきたからなのでしょう。

このオーセンティックを求め楽しむためには、モダンに慣れ親しんでいる方にとっては、すこし大げさですが、「気持ち・考え方」の切替が必要かも・・。

ところでフォトですが、これは、トーマ・ロット Thomas Lot によるバロック・フルート(トラベルソ)を、材質として エボニー African ebony を選んでつくったもの。

異なる材質として、欧州黄楊 European boxwood や、モパーン Mopane のものと比較すると、やはり、それぞれ異なるのです。 (こちらもご覧ください→楽器の書棚(5)、および→ツートン・カラーのトラベルソの音色はいかに)

わたしには、エボニーは、緻密な材質の中にあって「しっとり」感を含むような音色を生み出すように感じます・・。

【コピー】

材質: エボニー African ebony  イミテーション象牙リング 
     洋白銀製のキー No.0010/No.0423  A=415Hz

【オリジナル】  

所蔵: オックスフォード大学 音楽学部 ベイトコレクション #1139 
製作: トーマス(トーマ)・ロット Thomas Lot パリ 1750頃
楽器: フルート・トラベルソ 黄楊 boxwood  象牙リング 銀製のキー
     換え管が現存 A=396/407/419/425Hz 全長668mm(A=396Hz)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この頃気づいたことで、替え管による音色の違いがあります。
同じ材質を使っているのですが、392hzの方は渋く、輪郭のはっきりしない音色で、低音域が鳴らしにくく、歌口を開け気味に吹くのが良い感じですが、400hzの方は明るく、輪郭のはっきりした音色で、低音域のクロスフィンガリングも鳴りやすく、歌口は比較的閉じ気味で良い感じです。
この替え管、392hzは桐油仕上げ、400hzは亜麻仁油仕上げです。

この替え管のアンダーカットをどの程度の量にするかというのがはっきり分からないところで、今は右手管の音色に合わせてカットしています。
オーボエ好き
2005/09/19 23:40
とても奥の深い内容と思います。
本質的に、@どちらのピッチが本来の設計ターゲットだったか、A製作者が「基準」を手に入れていない状態で、右手管(下管)と左手管(上管)のいずれを基準とすべきか分からないまま調整を開始すること、の2つ。
色々手を加えると、あちらを立てれば、こちらが立たずの無限ループに陥ります。パラメータが多すぎ。右手管の基準がなく、替え管調整をしたとき、もう一方の替え管が調整可能な範囲に入る保証がない。
お手元の製作楽器が、どのようなものか分からず適切なコメントはできません。392Hzが本来の設計だとすると、固定の頭部管と下管と足管でもって、400Hzの音色を同じようにすること自体が無理だと思います。
「替え管」は万能でなく、妥協と限度があると思っています。
わたしのT.Lotでは、392と415では楽器が違うとも感じます・・。425などピッチを取るためボアのテーパーの度と場所を変え、指穴も大きく異なるものですよね。
一般に、415と440とを替え管で対応するのはきびしく、わたしは上管/下管のペアごと変えています(別設計)。結果は別の楽器のようです。
woodwind 図書館長
2005/09/20 01:37
今気づいたのですが、photoのトラベルソ、私に貸してくださったものですね。
私にはじめての415hzトラベルソで多いに戸惑ったのを覚えています。
これのオリジナルには415hzの替え管は無いようですが、
woodwind様の415hzの替え管の長さは、計算によるところのものですか?

というのは、今のところ私の技術では博物館サイズを製作するのが精一杯で、
製作の折にピッチを想定して替え管の寸法を決定することができないからです。
結局音が出るまで作り上げてからしかピッチを公言できないという状態なのです。
オーボエ好き
2005/09/21 22:55
そのとおりです。バロック木管図書館の設立以前、今から4年ほど前に貸し出したのが最初。オーボエ好きさんの後も2人。現在4回目の貸し出し中。そのたびに種々の評価をいただき、少しづつ変えてきていますので、オーボエ好きさんが体験されたのとは異なる特性です。楽器の評価は難しく、「その方に合っているか」が、高い評価を得る最後の決め手。
ピッチの件で言えることはいくつもあり、@測定者による差異あり、A測定条件や基準の律の違いもある、Bピッチ変更は、長さのほか内径の調整ですぐ変わる、C415と419Hzの差はわずかに16セントで、モダンオーボエのごとく2Hzの差がすぐ分かる用い方をしないバロック木管です、Dオーボエ好きさんが一番よくご存知のように、アンブシャーでいくらでもピッチは変わる。・・さて博物館公表の測定ピッチをいかほど信じるかの問題。
わたしは419Hzの長さで415Hzを得ています。
ピッチ変更についても記事に取上げてゆくつもりです。パラメータが多く、順に取上げてゆく必要性を感じています。
woodwind 図書館長
2005/09/22 23:45

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