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zoom RSS 黄楊のオーボエのベル材、確保はいかに

<<   作成日時 : 2006/01/29 02:07   >>

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画像楽器のつくり方(42) 2006/1/29

バロックやクラシカル・オーボエつくりでは、ベル材の確保がたいへん重要となります。

オーボエでもクラリネットでも、 ベルは本体管よりも広がった形をしており、その分太い材が必要なため。

「そんなの、たいしたことではない」、と思われるかも知れません。 ところが、必要とされる本体管の2倍もの径の材は、種類によっては入手が困難なのです。

木管楽器には、広葉樹の硬材が適しますが、一般的に幹はあまり太くなりません。 樹齢200年で、やっと直径20cm程度。

木管楽器の需要に合わせ、次々と伐採してゆくと、やがては径の細いものしか残りません。 伐採自体が禁止され、輸出入も制限されます。

バロック時代から、木管に適するため多く使用されたものに黄楊(つげ)があります。 とても緻密で、鋸で切った面などツルツルしています。

フォトは、欧州黄楊 European boxwood の丸太(ログ)や半丸太から、ベルの木取りや、その結果を示したもの。 フォトを、クリックし拡大してご覧ください。

丸太も半丸太も乾燥するにつれ、芯(中心部)へ向いひび割れがおきます。 これは、年輪の方向と、それに直角な方向とで、乾燥の収縮度合いが異なるためです。

ひび割れを避けるには、芯を含まないよう、原木から早い段階で角材にし、注意して乾燥させるのがよいでしょう。 170mmの径の丸太からは、理屈上、60mmの角材が4つ取れますが、収縮を考慮すると、190mm(7-1/2インチ)ほどの材が必要。

フォトの後列は、径が190mmでなく、150mm(6インチ)強しかない半丸太から、ベルに必要な60mmの丸材の木取りを試みているところ。

この程度の径の半丸太では、2つ切りは無理。 なるべく太い部分から、ひとつのベルを確保すべく意図したもの。 でも、フォトでは見えない底部に、芯に向ったひび割れが少しあります。

フォトの前列右は、同様の半丸太の材で試みたもの。 外目には、少しのひびが見える程度で、ある深さで止まっていることを期待。 でも、木工旋盤で丸材にしてゆくと、削っても削ってもひびは止まらず。 結果、ご覧のとおり、・・・残念。

欧州黄楊は貴重な材で、幹ばかりか枝も利用します。 枝は、幹に比べさらに細くなります。

フォト手前の2つは、径が3インチ(75mm)の欧州黄楊の丸太から、テナー・オーボエのベルの切り出しを試みたもの。

右のは、元々、少しの欠損部が外から見えていました。 まあ、たいしたことはないだろうと甘く考え、旋盤で外形削りを進めました。 中にゆくほど大きな巣がありました。 ・・・・・う〜む。 結局、ボツ。

左のは、最大径74mmものベル用に、ギリギリの3インチ(75mm)丸太から取ったときのもの。 外皮に近い部分(辺材 sap wood)は、黒点とか、巣や割れなどたくさんあり。 丸太ですから、当然、芯を含みますから、ひび割れも。 削ってはみたものの・・・・断念。 これも、ボツ。 切り落としました。

欧州黄楊は、とても良い材。 でも、良材部分の歩留まりが悪いのです。 おそらく、20〜30%ぐらい。 フォトの試みでわかるように、大きな良質の部材は、なかなか取れません。

市販の角材では、長さも100〜225mm(4〜9インチ)程度と短く、30〜45mm(1-1/4〜1-3/4インチ)どまりが多いのです。

欧州黄楊には、また、油分の多い灰色がかったすじとか、フォトの手前右端の切り出し面に見られるような黒点などが多く含まれます。

オーボエ、オーボエ・ダモーレ、テナー・オーボエでは、ベル材の確保が先決。

欧州黄楊でなく、代用材としてのカステロ Castello boxwood や、アマレロ Piquia Amarello では、直径が30〜40cm近くに達します。 多少は、入手しやすいでしょう。

フォトの左端の円柱は、イエロー・ウッド。 角材を丸材にし、ベル用に乾燥させているもの。 このように、ベル寸法の角材が入手できたものから始めるのも、オーボエつくりのひとつの考え方かも知れません。

ところで、モダンオーボエやモダンクラリネットに使用されている、グラナディラ African blackwood: Dalbergia melanoxylon ですら、幹の直径は通常、40cmほど。

黄色い辺材を除くと、黒い心材 heart wood は、少ししか取れず、また、「巣」などの欠損も多いのが事実。 貴重な材に変わりありません。 長さ130mm(5インチ)の、モダン・クラリネットのベル用に、台形の材が市販されているものの、品薄状態。

「バロック木管図書館」のブログ開設1周年記念号の今回。 あえて、失敗の事例を取りあげてみました。

失敗もあり、それが楽器つくりの成功のもととなっているからです・・。


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
ベル材の確保は難しそうですね。
私はとりあえずの実験器はつぎはぎして作ることにしました。
オーボエ好き
2006/01/30 14:29
●そうですね。つぎはぎ方式もいいですね。
●わが国の、仏像彫刻には寄木づくりがありますね。数メートルもある高さの、運慶や快慶作の仁王像も、多くの部品からなるもの。
●わたしも、テナー・オーボエ(オーボエ・ダカッチャ)には、この方式を取っています。
woodwind 図書館長
2006/01/30 22:48
おぉ!ダカッチャも製作されていたのですね!
もう完成しているのでしょうか?
今、ちょうどベル部分のリーマーを縦に分割しているところです。
この作業が一番きついです。
オーボエ好き
2006/01/31 14:08
●正確には、テナー・オーボエでしょう。同じ音域で、ダカッチャ(丸く曲がっている)のや、タイユ(仏語か)がありますが、似たようなもの。わたしのは、Wijneのテナー・オーボエです。
●完成していませんが、ある方に、貸出し、評価いただいています。大木名楽器を、全部、欧州黄楊で使ったため、重いです・・。
woodwind 図書館長
2006/01/31 23:02
ここ数日ひたすら失敗しています。
昨日と本日でバロックオーボエの上管のボーリングとリーミングをやってみましたが、失敗でした;まず両側から3.5mmと5.5mmのロングドリルでボーリングしましたが、両方の穴はきれいにつながりませんでした。リーミングも試みたのですが、wellからボアが始まるところが大きくずれてしまいました。結局3本挑戦しましたが、1本もできませんでした。
オーボエ製作ってトラベルソとは違う難しさがありますね。
オーボエ好き
2006/02/04 20:19
●バロックオーボエの試みを開始されたとのこと。トラベルソと異なることが多いですね。そのために、記事にしようと計画していました。同心を保つのに、トラベルソでは1方向から注意すればよかったものが、オーボエでは、2方向から必要だからです。
●下管では、トラベルソとテーパーが逆なため調子が悪い。ベルでは、両方向の同心確保工夫が必要。上管では、井戸と内径との両方からの同心確保が必要。さらに、上管は細すぎて、ガイド穴あけが出来ない・・
●わたしが思うには、上管は片方向からを基準にしてあけてしまい、その後それを基準に井戸のリーミングを行うことで解決。いかがでしょう。
woodwind 図書館長
2006/02/05 00:46
片方からロングドリルで穴を開けたところ、大きく中心からずれてしまいました。
そこで、10 x 100 mm程度の穴を開け先端にも刃をつけたリーマーで掘り進めたところ、焦げ付きも発生しましたが、なんとかボアを作ることができました。
金工旋盤の芯幅が足りず、ジョイントを突き抜けるリーマーを作ることができなかったのですが、急遽9mmのドリルロッドで最小径のリーマーを作り、成功しました。

目下の問題はベルのオープニングのところ。段をつけた工具を作ったのですが、逃げ角がイマイチ。また試行錯誤です。
オーボエ好き
2006/02/05 17:45
●片方からの穴あけの発想は、わたしは正しいと思っています。問題は、小径のロングドリルが、思わぬ方向に曲がってしまうこと。このため、以前のロングドリル紹介記事に、「鋼鉄でも曲がる」と記しました。その意図は、この穴あけ。
●だましだまし、10mmや8mmのロングドリル(最初はショートドリル)で進め、最後は4mm(クラシカルの場合)で進めます。あきらかに偏芯するでしょう。その基準で外形を削っても、ボアが完全でないのが残りますね。この修正のリーマが決め手。
●ベルは、また難しいですね。径が大きいだけに・・。
woodwind 図書館長
2006/02/05 18:53

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