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zoom RSS トラベルソの音つくり:歌口と指穴をあけましょう

<<   作成日時 : 2006/02/12 01:22   >>

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画像楽器のつくり方 (44) 2006/2/12

ローズウッド材の1本のトラベルソつくりを見てきました。

音つくりの次のステップは、歌口と指穴あけです。

【木管の音つくり】
 青文字クリックで、以前の連載記事にジャンプします。

 ●ステップ9: 内径のリーミング仕上げ
 ステップ10: 歌口と指穴の穴あけ

【木管のかたちつくり】 

 ●ステップ1: 木取り・木組み
 ●ステップ2: 角材を丸材へ
 ●ステップ3: ガイド穴あけ
 ●ステップ4: 内径とソケットつくり
 ●ステップ5: テーパー削り
 ●ステップ6: マウント取り付け
 ●ステップ7: 外形削り
 ●ステップ8: オイリング

フォトは、これまでに製作してきましたトラベルソ1本と替え管。

リーマーやその他の刃物により、内径を最終に近くに仕上げています。 また、上管・替え上管、および下管のテノンには、糸巻き用の溝掘り加工を施しました。

ステップ8で、オイリングについて紹介しましたが、本格的にリンシードオイル付けを行い、その後2〜3週間乾燥させています。

木管の命は内径にあります。 その木管に息を吹き込み音を出すのは歌口。 そして、内径の実効長を決め、正しい音を出すための指穴が必要です。

今回は、歌口と指穴をあける要点について見てゆきましょう。

●歌口の穴あけ位置の基準

頭部管(ヘッドジョイント)には、歌口をあけます。 歌口位置の基準をどこに取るのでしょうか。 頭部管の下側には、ソケットがあります。 このソケットの端を基準に、正確な位置に歌口の穴をあけます。 この位置と、歌口の大きさで、実効長が決まります。 ( )は基準位置から指穴中心までの距離:

頭部管: 歌口 (155.8mm)

●上管・替え上管の指穴あけ位置の基準

上管や替え上管は、上にテノンがあり、頭部管のソケットと勘合します。 また下にもテノンがあり、こちらは下管のソケットと勘合します。

ソケットの深さが正確でなく、仮に深すぎてもテノンの長さ以上には入りません。 同様に、テノンの長さが正確でなく、短すぎても、その長さ以上にソケットに入り込むことはありません。

これから分かるように、木管の外見上の長さは、上管の両側のテノンを除いた部分の長さで決まります。

したがって、指穴1、2、3の位置は、テノンを除いた部分の上あるいは下を基準に取ります。 ここでは、下を基準にしました。 ( )は基準から指穴中心まで:

上管:    指穴1 (99.2mm)、 指穴2 (62.1mm)、指穴3 (23.4mm)

替え上管: 指穴1 (91.2mm)、 指穴2 (54.4mm)、指穴3 (16.1mm)

●下管の指穴あけ位置の基準

下管の上側には、ソケットがあります。 このソケットの端を基準に取ります。 この端と、上管・替え上管の下側のテノンとが勘合します。 ソケットが深過ぎても、テノンが短すぎても外見長さに関係しません。 ( )は基準から指穴中心まで:

下管:   指穴4 (42.6mm)、 指穴5 (80.4mm)、指穴6 (118.3mm)

●足管の指穴あけ位置の基準

足管も、下管と同様に上側にソケットがあり、その端を基準とします。 ( )は基準から指穴中心まで:

足管:   Ebキー穴 (33.9mm)

●指穴の位置は、一直線上にあるか

通常は、一直線上に指穴を開けます。 しかし、管の長さが長くなる、ピッチの低いトラベルソとか、テナー・リコーダーでは、指穴間隔が広く届きにくいこともあります。

欧米人に比べ、手の大きさが小さい日本人、とくに女性の方とか中学生や高校生では、指が届きにくいことが起きます。 これに対応するためには、一直線上でなく、故意にずらすことも有用。

上管では、左手薬指で開閉する3の穴を、直線上よりほんの少し向こう側(内側)にします。 同様に、下管では、右手薬指で開閉する6の穴を、ほんの少し手前側(内側)にすると良いでしょう。

●指穴を一直線上に配置するには

外形つくりを終えた、上管や下管は、立体的にふくらみやへこみがあり、全体的にテーパーをなします。 一直線上に、穴の位置を決めるには、管の正確な上面出しが必要で、その面に鉛筆などでケガキをします。 これが結構難しい。 平らな面に置くと斜めになるし、Vブロックを用いても傾斜しています。

これを楽に行うには、木工旋盤を用います。 両ストックにセンタを装着し、刃物台の上端を両センタの中心の高さに合わせます。 次に、目的の管をセンタ間削りの要領ではさむと、自動的にセンタラインが確保できます。

管の上面にしたいほうを刃物台に向うようにセットします。 刃物台を定規にして鉛筆をあてがうと、2〜3秒で目的とする「上面」に直線が引けます。

●ドリル穴あけの前にポンチ

穴位置の測定は、適切なノギス等を用います。 直接位置を測るほか、方眼紙に位置決めをしたものを細い短冊状にし、両面テープを用いて管の表面に貼り付ける方法もあります。

一直線上の穴位置を測定したら、ポンチなどで印を付けます。 ドリルの刃が滑らないようにするためです。 わたしは、木工ドリル刃自体で、ポンチの代用としています。

●歌口や指穴の大きさはどうするか

指穴は、位置ばかりか大きさで音の高さ、ピッチが変わります。 またアンダーカット量や、他の指穴からも相対的な影響を受けます。

このため穴は、いきなり所定の大きさにあけず、やや小さめとします。 調整段階で少しずつ大きくしてゆくのです。

フォトの右上をご覧ください。 今回、使用した工具類です:
 - 木工用ドリル: 4mm(指穴6のみ)、および 6mm(それ以外の穴) を使用
 - ハンドリーマー: 1/4in(6.35mm)、9/32in(7.14mm)、19/64(7.54mm)
              歌口およびEbキー穴拡げ 

●穴あけ工具

これらの穴あけには、卓上ボール盤や小型電動ドリルで行うこともできます。 問題は、「押さえ」です。 切削では、削るための刃物の方にどうしても意識が集中しがち。 しかし、それ以上に重要なのは、切られ・削られる側の材の「押さえ」です。 この「押さえ」が難しい。

立体的で、テーパー状の木管をしっかり押さえないと、ボール盤や電動ドリルの勢いで、管がずれてしまいます。 また、いきなり刃を当てると、ポンチの位置に当たると限りません。 また刃物は鋼鉄で、一方、木材は縦横に均一ではありませんので、たての繊維方向に対して、木材自身の「押さえ」が効かず、バリっと欠けることがしばしば。

わたしは、なんと、穴あけは「手動」です。 小型のハンドドリル。

木工バイトつきの工具箱で管をはさみ、ハンドドリルで、手加減しながら削ります。 最初に、「欠け」を起こさないことに集中し、穴が開く最後の一瞬でとくにトルクが必要ですが、ここはゆっくりだましだまし行います。

ボール盤などで、押さえが不十分だと、穴あけの最初や最後の段階で、せっかくつくってきた木管を台無しにしてしまいます。

モダンオーボエやクラリネットなどの木管の量産工場での穴あけでは、事情が異なります。 旋盤のセンタ間はさみの状態で、専用ドリル刃のついたドリルチャックがいくつもあり、管を既定値だけ回転させたり、ドリルチャックを所定の位置に移動し、穴あけ、穴ぐりを行うようです。

一旦、穴をあけたら元には戻りません。 とても緊張する工程ですが、それもまた楽しいのです。

【関連記事】  青字クリックで、その記事にジャンプします。

 ●歌口の大きさで、実行長が変ります
 ●唐傘のお化けではありません、リーマーです
 ●玉磨かずんば光なし、木管磨けば光あり
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
オイルが乾燥してようやく次ぎ工程へ進むのですね。
糸巻き部分は溝があった方が糸がずれにくいのでしょうか?
私は溝を掘っていないので、糸巻きに少しでも油断があるとずれてます。
オーボエ好き
2006/02/13 19:22
●リンシードオイリング後時間が経つと、以前の簡易オイリングの表面の色合いよりもっと深く濃くなりました。
●テノンの溝は、わたしには当然必要と思っています。ないと、滑って前部片側に移動します。また、とくに両端部分の糸の境界をきっちりと抑えることができます。オリジナルの図面などで溝が確認できます。
●もっとも、現代のバロック木管製作者やメーカーでは、コルク板を巻きつけている場合もあります。このときは、少しコルク帯のへこみを入れてからにしているようですし、さらに外見をオリジナルの用に見せるために、コルクの上から糸を巻いているものも見受けます。
woodwind 図書館長
2006/02/13 21:23

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