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zoom RSS 音つくりには、歌口つくりが欠かせません

<<   作成日時 : 2006/03/18 16:18   >>

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画像楽器のつくり方 (45) 2006/3/18

ローズウッド材から、トラベルソつくりを順番に見てきました。

歌口と指穴あけをラフにあけたら、次は音を出してその後の調整ができるように、歌口をつくりましょう。

青文字クリックで、以前の連載記事にジャンプします。

【木管の音つくり】
 
 ●ステップ9: 内径のリーミング仕上げ
 ●ステップ10: 歌口と指穴の穴あけ
 ステップ11: 歌口つくり

【木管のかたちつくり】 

 ●ステップ1: 木取り・木組み
 ●ステップ2: 角材を丸材へ
 ●ステップ3: ガイド穴あけ
 ●ステップ4: 内径とソケットつくり
 ●ステップ5: テーパー削り
 ●ステップ6: マウント取り付け
 ●ステップ7: 外形削り
 ●ステップ8: オイリング

フォトは、これまでに製作してきましたトラベルソの頭部管の歌口の周辺。

基準位置に6mmの穴をあけ、リーマーで7.54mmまで広げ、その後、主に木工ヤスリで広げてゆきます。

歌口や、指穴の広げに使用する工具は、製作家によりいろいろ。 先の細い切り出し(小刀)、先の曲がった刃物、電動小型ルーター等・・。

道具には、それぞれ特性があります。刀の類では、材質の繊維方向と垂直方向とで、ちょうど鋸の、縦引きと横引きがあるように、丸穴周囲に関し削れ具合が異なります。

●目標の寸法

フォトは、T.Lotモデルの復元を目指すものです。 歌口寸法は、10.6mm x 8.4mm の楕円型。 アンダーカットは、内径(ボア)部で、13.5mm x 11.4mm 。

この楕円は、一般的に、大きく思えるかも知れません。

当時、T.Lotの歌口の標準は、8.3mm x 8.15mmだそうで、その後の時代の変遷で大きくなったか、あるいは誰かが大きくしたか。

他のトラベルソではどうでしょう。 1740ころのパリで、Paul Villars作のトラベルソが現存します。 その歌口は、9.2mm x 8.6mm (アンダーカット 12.9mm x 11.8mm)で、これも、後で広げられたのではと言われています。

わたしは、博物館所蔵の楽器複製を基本とします。 上記の大きな楕円の利点は、豊かな音が得られこと。 また、モダンフルートからトラベルソに持ち替える方にとって、馴染みやすいことでしょう。 

いずれにしても、後期バロックに向かい、歌口が大きくなってきたころの影響と想像します。

●実際の寸法

歌口の調整は、リコーダーでのエッジやウィンドウウェイのボイシングと同様、とても微妙です。

フォトの状態は、少しだけ小さめで、外形 10.55mm x 8.35mm で止めています。 アンダーカットも、途中まで。今後、トラベルソ全体の調整段階で、歌口は最後まで微調整することとなるでしょう。

●アンダーカットと実際のイメージ

アンダーカットの量は、製作家によりさまざま。一様でなくある部分だけ削るとか、2段階のカットにするとか、いろいろ。

オックスフォード大学音楽学部のベイトコレクションにて、実物のT.Lotを研究させていただきました。 実物は、歌口のアンダーカットも結構深く、また平たいイメージでした。

(ちなみにT.Lotの指穴のアンダーカットは、それはそれは深いものでこれ以上のものは他にないくらいです)

●アンダーカットで何がどうかわるか

開管であるトラベルソの、一方の側に開いた穴が歌口です。 歌口を大きくすれば、ピッチが上がります。 アンダーカットも同様。 深く削れば、穴を大きくしたのと等価でピッチがあがります。

しかし、歌口の場合は、指穴と違って、ピッチ量の高低効果より、アンブシャーへの影響が大です。

細くした唇の隙間から息を当て、歌口の向こう側のエッジで空気が2分されます。 このとき、前傾する角度、あるいは頭部管を手前に回す量は、アンダーカットに依存します。

頭部管に、ドリルで垂直に穴を開けると、ほぼ90度の角度のエッジが得られます。 頭部管を奏者側の内に向け45度傾けるか、あるいは45度前傾して吹くと、エッジを2分するでしょう。

前傾しないスタイルの奏者の場合は、歌口の開口面が真上でなく、45度も内側に傾ける必要があり、Quantzによると、これくらい傾けるとあります。

アンダーカットの効果を見てみましょう。管厚5.5mmの頭部管で、片側1.5mmのアンダーカットの場合、外側の円周部分も考慮すると削り取られる部分は約30度。 したがって、エッジは60度。

2分のため、30度の前傾、あるいは頭部管を30度内側に回します。 もちろん、10度の前傾と20度の内向けの組合せも可。 ひとそれぞれで、組合せの最適値があるみたい。

アンブシャー方は、演奏者でまちまち。 唇の薄い人やそうでない方がいらっしゃるかと思えば、わたしのように下あごが相当引っ込んで、したがって出っ歯の人もいます。 

わたしなどは、Quantzが提唱するように、下あごを相当突き出すようにしてトラベルソを吹くようにしています。

異なるトラベルソを吹き比べてみましょう。 歌口のアンダーカット量、および歌口サイズの違いにより、アンブシャーつくりが異なるために、慣れるのにしばらく時間がかかることでしょう。


【関連記事】  青字クリックで、その記事にジャンプします。

 ●歌口の大きさで、実行長が変ります
 ●木目も鮮やかなトラベルソはフランス宮廷の香り
 ●材質によってトラベルソの音色は変わるのでしょうか
 

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
アンダーカットで頭部管の角度が変わるんですね!
私は自作では90度程内側に向けています。だんだん内側に向けるようになってきました。あまり内側に向けると音量と響きが乏しくなるので、その辺りを注意しています。
楕円の削り出しは難しいですね。少し削っては頭部管を横に向けたり、逆さにしてチェックして削っています。
オーボエ好き
2006/03/19 18:41
●90度も内側に向けているのですか? 皆さん結構内側に回す方とお会いしましたが、相当ですね。
●でも、ステンズビーJrのフルートダモーレの図面を見ると、頭部管が普通でないのです。普通は、歌口のある面が上面で、そこの刻印しているんのですが、このダモーレは、最初から歌口を内側に45度まわしたとき、刻印が上面に来る位置に刻印されています。フルートダモーレですから、サイズも大きく、そのようになるだろうとは想像できますが、色々ですね。
woodwind 図書館長
2006/03/21 10:48
ステインズビーは例外なく、頭部管の刻印がそのようになっています。 このことは、頭部管を内側にまわすことを示唆しているのは間違いないでしょうが、奏法としてはいわゆる内吹きにする
こと以外に、次のような解釈もあって、私はそちらを採用しています。

指穴を外側に向け、左手人差し指の付け根に楽器を乗せてしまう。こうすると、下唇に圧力をかけないで演奏することができ、音色や表現の上でメリットがあります。
gomale
2006/03/22 22:45
●gomaleさん、こんにちは。コメント。ありがとうござおます。
●後者の解釈、たいそう気に入りました。わたしの作った小冊子に、この載せ方と内向きにする件を記載しているのですが、「下唇に圧力をかけないで」の表現まで書いていません。
●実際、小冊子の中で、私自身は、頭部管を内向きに、また下巻も内向きにすると記していますが、gomaleさん流に言うと、頭部管を内向き、上管を外向きにして人差し指で安定させ、下管を内向きにする、というのが正確な表現ですね。
●なぜ、そうするかの理由が重要ですね。
woodwind 図書館長
2006/03/25 09:30
同じ意見の方がいらっしゃるのは、心強いです。
自分の方は10年ほど前に、オリジナルのステインズビーを通して得た結論ですが、woodwindさんがどのようなことからその発想を得られたのか、興味があります。

理由については、能動的に動くのは下あごの方ですので、下唇に圧力をかけないと、よりコントロールがし易いように感じます。

また、全く別の観点として、上唇でコントロールすると「m]下唇でコントロールすると「f]のニュアンスが付くように感じます。「m」という音には、im・・・の否定とか、死とかの意味がありますし、「f」の音は、far,future,forward,など外側に向いた意識を表します。
基本的には「f」の方が好ましいのではないでしょうか。

gomale
2006/03/25 12:26
gomale様初めまして。
私も同じ意見です。このようなフォームにして上達が促された覚えがあります。1keyトラベルソでは人差し指の付け根に楽器を載せ、親指の先で挟んでいます。
keyd fluteでは親指もkeyを使うので、人差し指の付け根に楽器の重さがよりかかるように頭部管を回していますが、親指は常に楽器からは慣れていた方が都合良いので、モダンフルートの3点支持になっています。
f m のニュアンスについては、初めて耳にします。
アンブシュールがfはフルートっぽくてmはオーボエっぽいですね。モダンオーボエのレッスンでmの方が良い音するという話があったような。
最近はオーボエばかりですが、またトラベルソに戻ったら耳をそばだててみようと思います。
オーボエ好き
2006/03/25 23:22
●文献集にも載せましたが、バロックフルートの教則本の中で得た知識と、Quantzの著書の中からの影響だと思います。能動的に動くのは、「下あごの方」ちう表現は、もっと多くの方が知るべきいい表現ですね。
●面白いですねー。mとfの議論。極端に言うと、mは丸めて突き出す、タコの口、fは横に引く感じ。上記、教則本には、唇は、緊張させないとあり、口の写真まであります。それを見ると、モダンフルート奏者の多くに見られる、横に引く感じとは異なります。Quantzは、適度に下唇で覆うと丸い音が出て良いと書いています。でも、それと、下あごを突き出すこととは別で、Quantzは下あごの突き出しで、オクターブのコントロールのことを記しています。
woddwind 図書館長
2006/03/26 08:54
mとfについては、ちょっとこじつけを書きましたが、音の終わりの変化に着目しての意見です。 音の終わりでアパチュアを絞る必要があったとして、上唇でやるのと下唇でやるのとで、ずいぶんニュアンスが違うと思われるので書いてみました。
gomale
2006/03/26 15:22
●gomaleさん、面白い情報ありがとうございます。今やって見ると、そのニュアンスは、わたしのがどれだけ意味があるかは知りませんが、mの方はプツと切れる感じです。下あごの動かし方ですね。
woodwind 図書館長
2006/03/28 21:04

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