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zoom RSS オーボエ・ベルつくりでは双方向の同心確保が要るのです

<<   作成日時 : 2006/04/03 23:26   >>

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画像楽器のつくり方 (47) 2006/4/3

オーボエ・ダモーレ用に確保した丸材から、ベルつくりを見てゆきます。

その前に、木管楽器の各部の「方向」を定義しましょう。 左右、上下とか縦横、あるいは頭側とか足側と言う表現も、定義さえきちんとすればOKでしょう。

通常オーボエは立てて演奏し、トラベルソは横に構えます。 そのため、オーボエは上下とか、フルート(トラベルソ)では左右とかが合いそうに思えます。

ところが、楽器つくりでは、楽器を逆さまにしたり、横や斜めにもするわけで、上下とか左右とかが通常通りとならず、イメージするにはやや混乱しそう。

「バロック木管図書館」では、とくに誤解なき場合、以下のように定義します。

●東西南北: 

楽器を組み立てたとき、以下を北の方向とします(従って反対側は南):

@リコーダー:  くちばし側
Aオーボエ:   リードのある側
Bクラリネット: マウスピースのある側
Cフルート:   ヘッドキャップのある側

分割型の楽器の一部も、組み立てたときの方向で北や南と呼びましょう。 オーボエ下管では、上管のテノンと合うソケットのある方が「北」。 ベルのソケットと合う方が、「南」。

南北と直角の方向を「東西」と呼びましょう。

●話はそれます。 地球(儀)を表す地図ですが、北半球に住む人にとっては北を上にします。 北(極)のことを上と呼びたくなります。 しかし南半球では、地図は逆さま。 地図の上は南(極)側。

また、中国の都やわが国の京都(平安京)や奈良(平城京)は、東西南北に合わせた碁盤目状で、北や南は分かりやすい。 しかし、宮中から見て右を右京、左を左京と呼びます。 京都では、右京は地図で左側の西に、左京は右側の東にあります。

●話は楽器に戻り、定義によれば、オーボエのベルの穴の開いた底は、南。 下管と勘合する側が、北。

フォトは、最大径56.8oが必要なダモーレのベル用に確保した、欧州黄楊の丸材。 元の材は、→こちら。 手前側が太いので、南に使用します。 すなわちベルの出口側。

元の丸材の両端の面は、斜めになっており、いい加減ですので、まず両端とも、正確に「直角出し」を行います。

ベルの北側には、下管と勘合するソケットを作ってゆきます。 このため、南をチャックに取り付け、北を、ドリル(フォースナー・ビットなど)で、ソケットの穴や、ベルの中心穴をあけます。

一方、南には出口の丸穴があり、この穴から空洞部分を削ってゆきます。 このため、北をチャックに取り付け、南からドリル削りや、空洞削りを行う必要があります。

以上から、南北双方(向)からのチャック結わえが必要なことが分かります。

問題は、ベルの各部、例えばソケットやそれに続く内径部分、空洞、外形や外形飾り、出口の穴、穴周辺の飾り溝など、これらがすべて同心を保ち、また高い精度を確保する必要があること。

片方向のチャック結わえによる、トラベルソつくりでは遭遇しないことです。

どのようにして、双方向の同心を確保するか。 これがオーボエ、ダモーレ、クラリネットなどのベルつくりの要点です。

片方向チャック結わえにて、ベル本体の完成後に、北に同心のソケットをつくれるでしょうか。

本体の結わえがなく、独立して穴あけを行うと、たいていズレてしまいます。 ズレたソケットを「基準」に、センター間削りで外側の飾り部分を作っても、最初につくった外側と必ずズレてしまいます。

今回は、北を加工するため、まず南をチャックに正確に取り付けることを考えます。

フォト左は、木工旋盤用のチャック。 外側が「アリ溝:あり継ぎ」(ドビテール:dovetail)にて、圧縮する3爪タイプ。 チャックについては、→こちらを参照。

これに合わせて正確に、ベルの南に、ドビテールを同心を保ちつつつくります。 寸法は、2インチ(50.8o)に75度の角度。 手前のノギスで、正確に50.8oを出しています。

チャックのドビテールと、この丸材につくったドビテールとが、しっかりと勘合し、南側を同心状にきっちりと抑え込みます。

次回は、南をチャックに取り付けて、木工旋盤による北側の中心穴明けやソケットつくりへと続きます・・・。

【関連記事】   青字クリックで記事にジャンプします。

かろうじての確保:黄楊のオーボエのベル材
黄楊のオーボエのベル材、確保はいかに
木工旋盤のチャック類は、どのようなものですか
同心円の確保は、仮想の中心点の生かし方が決め手
同心円をなす木管ばかりなのでしょうか
わずか1ミリ厚のソケットに、象牙マウントを取付けます


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コメント(17件)

内 容 ニックネーム/日時
初めまして。とても参考になる記事が満載で、ワクワクしながら拝見しています。
私は趣味で楽器を作っています。今制作中の楽器はクイント・スピネットです。
他には、ベントサイドスピネットやガンバ、リュートなど作りました。
私自身、アマチュアアンサンブルでは、モダンのObとFgを吹いています。
トラベルソやバロックオーボエも持っていますが、周囲にバロック楽器を持っている人がいないので、結局は、吹く機会が殆どありません。
自分自身で作ってみたい木管は、バロック・クラリネットです。木工旋盤と金属旋盤は持っているので、いずれは挑戦したいと思っております。
私のブログに製作記事等、載せておりますので、宜しかったらご覧下さい。
全くのアマチュアで、とても恥ずかしいのですが・・・・
http://nekocicci.exblog.jp/
チッチの父
2006/04/04 19:27
●はじめまして、チッチの父さん。まだ一部ですが拝見しました。美しいスピネットですね、私の興味あるものを製作されていますので、とてもワクワクさせられるサイトです。よろしければ、リンク集にてリンクを張らせてください。
●東京、目白にある古楽器のお店には、スピネットやガンバ、リュートが、トラベルソやオーボエのほかにあります。とくに感心したのは、バロックギターとヴィイエラ。大変美しい仕上がりで感動もの。私がつくりたいのは、キットと呼ばれる小型バイオリンん、バロックバイオリン、リュート、ガンバ、チェンバロ・・きりがありません。
●当面、この「バロック木管図書館では」、木管を取り上げていますが、大好きな「木のぬくもり」、の意味では、弦楽器も作り始めるかもしれません。そのときは、よろしくお願いします。
●バロック・クラリネットは、比較的つくりやすいものと思っています。今は作品フォトしか記事にしていませんが、先々は、作り方の要点を取り上げるかも知れません・・いつになることやら。
●色々と、コメントなり、作り方の要点とかを教えてください。「木のぬくもり」の世界は同じですから。
woodwind 図書館長
2006/04/04 22:52
★オーボエの場合はトップもボトムも両方向から内径に手を入れる必要がありますね。
私は特にボトムのソケットがうまくいきませんでした。結局わずかにずれています。
一旦チャックから外すと同心を確保するのがとても難しくなりますね。
★チッチの父さんはじめまして。ブログを拝見しました。”全くのアマチュア”の作品とは思えないスピネット!美しい!いい仕事ですね。バロックオーボエには細かい彫刻や彫金細工を施したものがありますが、私は未熟なのでそれらには手がだせていません。ダモーレを所有しているのがとてもうらやましい!
オーボエ好き
2006/04/04 23:23
*図書館長さま
リンクして頂けるのは嬉しい限りです。宜しくお願い致します。
*オーボエ大好きさま
うちのブログを見てくださって有り難うございます。私はバロックも勿論好きですが、近代フランスものも大好きです。
チッチの父
2006/04/05 22:39
●チッチの父さん、ありがとうございます。それではリンクを張らせていただきます。わたしのは、よろしければいつでもどうぞ。
●オーボエ好きさん、私の見たダモーレの、ベルソケットは、とてもずれています。内径も、大暴れです。したがって、いつの時代の製作家の楽器も、大きくずれる要素があれば、製作途中の誤差とか、水分による経年縮小などを疑ってみるべきで、素直な内径をまず基準とすべきでしょうか。
woodwind 図書館長
2006/04/06 20:07
内径については、複数あたってみたところ、直線的な円錐よりは内部で広がりのあるボアをしている傾向にあるので、その意味で素直なボアを基準とするのはよいと思います。バックプレッシャーを減らしすぎないように注意してボアを広げ調整する必要があると思います。
私の場合とんでもない大暴れには手がだせません。tertonはそれであきらめました。
オーボエ好き
2006/04/07 12:58
●「内部で広がりある」ボアは一般的ですが、私の言うのは、スプーン・リーマーか直線リーマーの使用により、スプーンリーマーの使い方の稚劣さにより乱れている場合があり、これは「ならした」値を採用すべきと言うことです。
●「バクプレッシャー」を減らしすぎない、とのことですが、「バックプレッシャー」とはどのようなことを差しているか、すみませんが教えていただけませんか?
woodwind 図書館長
2006/04/09 10:33
バックプレッシャーとは音を出したときのエアーに対する抵抗感のことです。
オーボエの場合抵抗感がある程、演奏しやすいようです。
しかし抵抗感が強すぎれば表現力が損なわれ単調になり、逆に弱すぎると音をコントロールすることが難しくなり、うるさい演奏になってしまうようです。
オーボエ好き
2006/04/09 17:04
●バックプレッシャーの件了解しました。とくにオーボエでは、この抵抗感は感じやすいと思いますが、トラベルソでも同じようなものでしょうか?コントロールと関係してくるのですね。
woodwwind 図書館長
2006/04/11 21:29
経験上トラベルソよりもオーボエで抵抗感を感じています。
トラベルソの場合、右手管でテーパーの広いものと狭いもの(広い方の内径は同じで狭い方は1mmの差)を作ってみたところ、バックプレッシャーではなく、次のことが気になりました。
★狭い方は息が指穴まで届かない(例えばEなら6まで息がスムーズに流れない)感じで、特に低音域で音量が小さく、”鳴らないなぁ”と言う印象。その上Mid D E F#辺りが最大で30cent上ずりました。オクターブ下は変わらず。音の粒だちがハッキリして、繊細。
★広い方は低音域が良く鳴る。高音域は鳴らしにくい。全体に音の粒だちがハッキリしない。大味。
ボアが広い方がオクターブが広くなることはアンダーカットから想像していたのですが、今回の実験の結果はボアが狭い方がオクターブが広くなってしまいました。不思議です。
オーボエ好き
2006/04/13 00:20
●オーボエの方が、抵抗感があること、了解しました。
●トラベルソの実験ですが、すべての条件がわからず、なんとも言えないのですが、コルクの位置は不変だったのでしょうか?
●狭い方で、広域が30セント上がったかに見えたのは、オクターブ間が異なったので、コルク位置を替えるべき。コルクを抜く側です。そうすると、管が長くなりますから、低域の音が下がります。もしこの前提条件の仮定が正しければ、一見、上の結果の「逆で不思議」さが、実は不思議でないのかもしれません。いずれにせよ、他のパラメータをよく記録しておいて、条件を教えていただけると助かります。そうしないと、何がなんだか分からなくなります。
woodwind 図書館長
2006/04/17 22:21
条を申し上げませんでした。失礼しました。
条件
★このトラベルソはオクターブが上管が狭く、下管が広いと言う状態でした。そのため
★コルク位置はhのオクターブを合わせる目的で位置を決めていました。実験ではコルク位置の変更は無し。
★コルク位置を30セントのうわずりのために抜くとhのオクターブが狭くなり都合が悪かったです。あっちを立てればこちらが立たず状態でした。

”オクターブ間が異なった”は”オクターブ間隔が広くなった”で良いでしょうか?
他に考えるために必要な条件があれば教えてください。
オーボエ好き
2006/04/19 21:34
●文章にすると、分かりづらいですね。静的特性のグラフ(ピッチの差を各音で取ったもの:基準Aからのズレが各音わかる)を見れば一発。「オクターブが広い」とかの表現は、絶対値でないからです。例えばH’とH”のオクターブが狭かったとしても、両方ともそもそも絶対値で低いのか、高いか、それとも片方が高いのか・・
●おそらく、第一オクターブのH’が絶対値で低いのではありませんか。A=415Hzの基準に対して第一オクターブのE’,F#’は合っているのにH’が低い。きっとC”もC#”も低い。これは上管のボアと指穴を替えるしかない。コルクで合わせ切れますか?コルク合わせは、私は通常D’,D”とD”’。H’が何であれ気にしません。
woodwind 図書館長
2006/04/20 10:17
A=415hz平均率での各音のズレ。コルク位置はmid D high Dで調節29mm
_______________C#____H____A____G____F#____E____D
狭いテーパー
2nd___________-50___-40__-15___15___10____20___35
1st____________10____20____0__-20__-35___-30__-60
広いテーパー
2nd___________-60___-45__-12___15__-15____10___ 0
1st_____________0____20____0__-20__-50___-30__-60
計測してみた結果です。最初からこれを投稿すべきでした。失礼しました。
F#に関しては狭い方がkeyd fluteのフィンガリングです。Hのオクターブを合わせることは考慮していません。
オーボエ好き
2006/04/21 15:09
●データありがとうございます。それをグラフを描いてみると一発に分かりますね。やってみてください。
●ご指摘のD,E,F#の上ずり問題より、まず右手管(下管)の調整が先に必要と思います。第1オクターブの、D,E,F#、Gを合わせないと、元の議論ができません。下管の1mmのボアの差の議論にもかかわらず、第一オクターブで、1o差の両方の下管とも合っていません。最低音Dは仕方がないとしても、E,F#、Gはまずあわせるべきと思います。
●その後で、第二オクターブの30セントの議論ができると思いますが、いかがでしょうか。
woodwind 図書館長
2006/04/24 18:18
アドバイスありがとうございました。
数値よりもグラフの方が感覚に訴えてきました。
ご指摘通り、1オクターブの右手管の音程もよくありません。これを先に解決するとのこと、方針が定まり、やる気が戻ってきました。
Quantzの時よりも右手管のオクターブがアンダーカット無しの状態でも広かったこと、右手管と左手管の1オクターブの音程のバランスが離れていることから、アンダーカットを大きく施すことをとても躊躇していました。
”最低音Dは仕方ない”、とても勇気づけられます。
オーボエ好き
2006/04/24 23:02
●「あちらを立てれば、こちらが・・」と、同時に、不可解な泥沼に入り込みがちです。分かります。
●トラベルソの音程(ピッチ)合わせですから、わたしの、トラベルソ連載記事のほうでも取り上げますので、そちらも是非ご覧ください。
woodwind 図書館長
2006/04/25 22:01

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