楽器のつくり方 (47) 2006/4/3オーボエ・ダモーレ用に確保した丸材から、ベルつくりを見てゆきます。 その前に、木管楽器の各部の「方向」を定義しましょう。 左右、上下とか縦横、あるいは頭側とか足側と言う表現も、定義さえきちんとすればOKでしょう。 通常オーボエは立てて演奏し、トラベルソは横に構えます。 そのため、オーボエは上下とか、フルート(トラベルソ)では左右とかが合いそうに思えます。 ところが、楽器つくりでは、楽器を逆さまにしたり、横や斜めにもするわけで、上下とか左右とかが通常通りとならず、イメージするにはやや混乱しそう。 「バロック木管図書館」では、とくに誤解なき場合、以下のように定義します。 ●東西南北: 楽器を組み立てたとき、以下を北の方向とします(従って反対側は南): @リコーダー: くちばし側 Aオーボエ: リードのある側 Bクラリネット: マウスピースのある側 Cフルート: ヘッドキャップのある側 分割型の楽器の一部も、組み立てたときの方向で北や南と呼びましょう。 オーボエ下管では、上管のテノンと合うソケットのある方が「北」。 ベルのソケットと合う方が、「南」。 南北と直角の方向を「東西」と呼びましょう。 ●話はそれます。 地球(儀)を表す地図ですが、北半球に住む人にとっては北を上にします。 北(極)のことを上と呼びたくなります。 しかし南半球では、地図は逆さま。 地図の上は南(極)側。 また、中国の都やわが国の京都(平安京)や奈良(平城京)は、東西南北に合わせた碁盤目状で、北や南は分かりやすい。 しかし、宮中から見て右を右京、左を左京と呼びます。 京都では、右京は地図で左側の西に、左京は右側の東にあります。 ●話は楽器に戻り、定義によれば、オーボエのベルの穴の開いた底は、南。 下管と勘合する側が、北。 フォトは、最大径56.8oが必要なダモーレのベル用に確保した、欧州黄楊の丸材。 元の材は、→こちら。 手前側が太いので、南に使用します。 すなわちベルの出口側。 元の丸材の両端の面は、斜めになっており、いい加減ですので、まず両端とも、正確に「直角出し」を行います。 ベルの北側には、下管と勘合するソケットを作ってゆきます。 このため、南をチャックに取り付け、北を、ドリル(フォースナー・ビットなど)で、ソケットの穴や、ベルの中心穴をあけます。 一方、南には出口の丸穴があり、この穴から空洞部分を削ってゆきます。 このため、北をチャックに取り付け、南からドリル削りや、空洞削りを行う必要があります。 以上から、南北双方(向)からのチャック結わえが必要なことが分かります。 問題は、ベルの各部、例えばソケットやそれに続く内径部分、空洞、外形や外形飾り、出口の穴、穴周辺の飾り溝など、これらがすべて同心を保ち、また高い精度を確保する必要があること。 片方向のチャック結わえによる、トラベルソつくりでは遭遇しないことです。 どのようにして、双方向の同心を確保するか。 これがオーボエ、ダモーレ、クラリネットなどのベルつくりの要点です。 片方向チャック結わえにて、ベル本体の完成後に、北に同心のソケットをつくれるでしょうか。 本体の結わえがなく、独立して穴あけを行うと、たいていズレてしまいます。 ズレたソケットを「基準」に、センター間削りで外側の飾り部分を作っても、最初につくった外側と必ずズレてしまいます。 今回は、北を加工するため、まず南をチャックに正確に取り付けることを考えます。 フォト左は、木工旋盤用のチャック。 外側が「アリ溝:あり継ぎ」(ドビテール:dovetail)にて、圧縮する3爪タイプ。 チャックについては、→こちらを参照。 これに合わせて正確に、ベルの南に、ドビテールを同心を保ちつつつくります。 寸法は、2インチ(50.8o)に75度の角度。 手前のノギスで、正確に50.8oを出しています。 チャックのドビテールと、この丸材につくったドビテールとが、しっかりと勘合し、南側を同心状にきっちりと抑え込みます。 次回は、南をチャックに取り付けて、木工旋盤による北側の中心穴明けやソケットつくりへと続きます・・・。 【関連記事】 青字クリックで記事にジャンプします。 ●かろうじての確保:黄楊のオーボエのベル材 ●黄楊のオーボエのベル材、確保はいかに ●木工旋盤のチャック類は、どのようなものですか ●同心円の確保は、仮想の中心点の生かし方が決め手 ●同心円をなす木管ばかりなのでしょうか ●わずか1ミリ厚のソケットに、象牙マウントを取付けます |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
初めまして。とても参考になる記事が満載で、ワクワクしながら拝見しています。 |
チッチの父 2006/04/04 19:27 |
●はじめまして、チッチの父さん。まだ一部ですが拝見しました。美しいスピネットですね、私の興味あるものを製作されていますので、とてもワクワクさせられるサイトです。よろしければ、リンク集にてリンクを張らせてください。 |
woodwind 図書館長 2006/04/04 22:52 |
★オーボエの場合はトップもボトムも両方向から内径に手を入れる必要がありますね。 |
オーボエ好き 2006/04/04 23:23 |
*図書館長さま |
チッチの父 2006/04/05 22:39 |
●チッチの父さん、ありがとうございます。それではリンクを張らせていただきます。わたしのは、よろしければいつでもどうぞ。 |
woodwind 図書館長 2006/04/06 20:07 |
内径については、複数あたってみたところ、直線的な円錐よりは内部で広がりのあるボアをしている傾向にあるので、その意味で素直なボアを基準とするのはよいと思います。バックプレッシャーを減らしすぎないように注意してボアを広げ調整する必要があると思います。 |
オーボエ好き 2006/04/07 12:58 |
●「内部で広がりある」ボアは一般的ですが、私の言うのは、スプーン・リーマーか直線リーマーの使用により、スプーンリーマーの使い方の稚劣さにより乱れている場合があり、これは「ならした」値を採用すべきと言うことです。 |
woodwind 図書館長 2006/04/09 10:33 |
バックプレッシャーとは音を出したときのエアーに対する抵抗感のことです。 |
オーボエ好き 2006/04/09 17:04 |
●バックプレッシャーの件了解しました。とくにオーボエでは、この抵抗感は感じやすいと思いますが、トラベルソでも同じようなものでしょうか?コントロールと関係してくるのですね。 |
woodwwind 図書館長 2006/04/11 21:29 |
経験上トラベルソよりもオーボエで抵抗感を感じています。 |
オーボエ好き 2006/04/13 00:20 |
●オーボエの方が、抵抗感があること、了解しました。 |
woodwind 図書館長 2006/04/17 22:21 |
条を申し上げませんでした。失礼しました。 |
オーボエ好き 2006/04/19 21:34 |
●文章にすると、分かりづらいですね。静的特性のグラフ(ピッチの差を各音で取ったもの:基準Aからのズレが各音わかる)を見れば一発。「オクターブが広い」とかの表現は、絶対値でないからです。例えばH’とH”のオクターブが狭かったとしても、両方ともそもそも絶対値で低いのか、高いか、それとも片方が高いのか・・ |
woodwind 図書館長 2006/04/20 10:17 |
A=415hz平均率での各音のズレ。コルク位置はmid D high Dで調節29mm |
オーボエ好き 2006/04/21 15:09 |
●データありがとうございます。それをグラフを描いてみると一発に分かりますね。やってみてください。 |
woodwind 図書館長 2006/04/24 18:18 |
アドバイスありがとうございました。 |
オーボエ好き 2006/04/24 23:02 |
●「あちらを立てれば、こちらが・・」と、同時に、不可解な泥沼に入り込みがちです。分かります。 |
woodwind 図書館長 2006/04/25 22:01 |
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