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help リーダーに追加 RSS 指穴の大きさが、いろいろあるのは何故?

<<   作成日時 : 2006/04/27 22:50   >>

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画像リコーダーとかトラベルソなどバロック木管楽器で不思議なのは、指穴の大きさが一定ではないことです。

これはどうしてでしょう。

まず言えることは、「各音で正しいピッチ(音程)を得るため」です。

バロック木管楽器は、キーの数は少なく、指穴を指で直接開閉します。 人の手や指はある程度の大きさで、指穴間隔を大きくはできません。

操作しやすい位置に指穴があり、すべてを同じ大きさにしても正しいピッチが得られるとは限りません。 では、各音のピッチはどのように決まるか。

今回は、それを決める総合アドミタンスを見てみましょう。

フォトは、例としてソプラノ・リコーダー(C管)。

吹き込む息は、ウィンドウェイを通りエッジに当たります。 息の流れが上下に分かれ、そこでの渦の振動を基に管内に空気の柱ができます。

エッジ窓と指穴とで、両端が開いた開管と呼ぶパイプが形成され、その実効長で決まる波長対応の高さの音が出ます。

実効長は、管長ばかりか、エッジ窓や指穴の大きさに依存します。 管の内径に比べ、小さいと実効長は長くなります。

音の高さ=実効長を、総合アドミタンス視点で調べてみましょう。

●総合アドミタンス

基音を出す第一オクターブの各音の高さ=音程は、運指に対応した総合アドミタンスで決まります。

アドミタンスとは、息の通りやすさ。 アドミタンス値が大きければ音は高くなります。

指穴の各アドミタンスは、穴径が大きいと息が通りやすく、アドミタンスが大。 管の遠くに穴があれば、息が通りにくく、アドミタンスは小。 指で塞ぐと息は出ないので、アドミタンスは0。

ソプラノ・リコーダーでは、左手親指穴(0)を閉じ、残り指穴を全開すればC#’”。

このとき、息はどこから出るでしょう。 エッジ窓(W)と、左右の指穴(1)〜(7)と、足管出口の穴(C)とからです。 (ダブルホールもひとつの穴とします)

C#”’の運指は:  ●|○○○|○○○|○ 

各指穴番号にaを付し、開放時アドミタンスと表記すると、C#”’に対する通りやすさは、すべての穴のアドミタンスの総和となります:

   Σ(C#”’)=Wa+0+1a+2a+3a+4a+5a+6a+7a+Ca

エッジ窓(W)は、開管の片方で、そのアドミタンスWaは一定。 開管のもうひとつの穴は、残りすべてが関係します。

・塞いでいる親指穴(0)から息は出ず、アドミッタンス0。
・エッジから最初に開いている指穴(1)のアドミタンス1aにより、音程がほぼ決まります。
・次の指穴(2)は少し遠く、2aは、1aより小さく少し影響。
・次の指穴(3)はさらに遠く、3aによる影響はほんのわずか。
・ ・・ 足管穴(C)は、あまりに遠すぎ。 Caは小さ過ぎて手で塞いでも影響しません。

●クロスフィンガリング

リコーダーは、両手の指で操作する8個の穴の開閉を組合せ、音階(12半音)をつくりますが、クロスフィンガリングと呼ぶ運指で半音階を実現します。

ソプラノ・リコーダーで、G”と、半音低いF#”を出すときの総合アドミタンスを調べましょう。

G”の運指は:    ●|●●●|○○○|○

   Σ(G”)=Wa+0+0+0+0+4a+5a+6a+7a+Ca

F#”の運指は:  ●|●●●|○●●|○

   Σ(F#”)=Wa+0+0+0+0+4a+0+0+7a+Ca

G”は、最初の開放指穴(4)のアドミタンス4aでほぼ決まり。 次の5aと6aが加担し、少し音程をあげた結果の音です。

これに対し、F#”はG”から半音下がった音で、クロスフィンガリングにて実現。

総合アドミタンスでみると、最初に開いた指穴(4)が主要なアドミタンスを提供。 次の指穴(5)と(6)は閉じており、加担するアドミッタンスは共に0。

これら2つを、近似的に比較しましょう:

   Σ(G”) ≒ Wa+4a+5a+6a

   Σ(F#”)≒Wa+4a

共通なエッジ穴のWaのほかに、F#”を決める主要アドミッタンスは4a。 それに、5aと6aを加えれば半音上がります。

逆に言うと、一般に、「半音下げる」には、ある音の音程を決める主要指穴を飛ばし、「低い側の2つの指穴を塞げばよい」と言うこと。

この原理に基づき、リコーダーなどバロック木管楽器の半音階がつくられます。

実際には、低い側2つでなく、3つ閉じたり、広域オクターブでは1つだけ閉じるものもあります。

●指穴の大きさは、変えられますか

指穴間隔を変えると、あわせて各指穴の大きさを変えます。 また、ある音を出すためには、総合アドミタンス一定の範囲で、各穴の大きさの組合せはいろいろあり得ます。

●運指との関係

リコーダーに運指が異なるものがあるように、バロック木管楽器は、時代、製作者(モデル)により採用された運指がさまざまです。

総合アドミタンスの式で分かるとおり、各指穴の大きさや位置を変えアドミタンスの総和が一定となる組合せを求めればよいのです。

●バロック時代の音色

同じ実効長で音程が同じと言うのは基音です。

小さな指穴からは、小さく弱々しい音しかでませんし、クロスフィンガリングも、こもった独特の響きです。 これは基音のほかに、近傍の音および倍音の含まれ方が異なるからです。

各指穴の大きさは、製作者(モデル)の考えに依り異なり、したがってモデルにより響きや音色が異なります。

バロック木管の響きや音色は魅力的なもので、それを引き出す要素のひとつとして、指穴の大きさがいろいろなのでしょう・・・


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トラベルソの指穴位置は、どのように決まるのでしょう


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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
これまで経験的にしっていた指穴の大きさについて、この様に説明可能だとは知りませんでした!
数式で表されているととても分かりやすいですね。
オーボエ好き
2006/04/28 14:23
はじめまして。Hautboy 奏者のA.O.と申します。
しばらく前から少しずつ読ませて頂いております。とても興味深い記事ばかりで、すばらしいですね。
 さて、指穴の大きさについての記事のなかに、「実効長」ということばがでてきました。実はいま、Bruce Haynes 著 の「A History of Performing Pich」という本を読んでいるのですが、sounding length という語とspeaking length という語が出てくるのです。この二つがどうちがうのか、また、日本語ではなにか決まった訳語があるのかということがわからないのです。「実効長」とはこの二つの語のうちのどちらかなのでしょうか。また、「The Eloquent Oboe 」(この本は驚くべき本です!)には acoustic length という語も出てきます。それぞれの語が使われている文脈での「意味」は分かるのですが....。
 教えていただけるとうれしいです。

A.O.
2006/04/29 14:56
●はじめまして、A.O.さま。「興味深い記事」と言っていただきありがとうございます。記事を書くにも、結構強い意志とエネルギーが必要なものですから・・励みになります。
●記事を公開する以上、無責任なことは書きたくありませんが、色々と間違いもあるだろうと思います。
●お尋ねの件:文献集の、Philip Bate氏のThe Flootのp.21のFig.7に、The effective souding lengthとあります。これを実効長としています。ポイントは「effective」の部分。実長(real length)でない点です。 ある図書で、souding length を見た覚えがあります。実長(管の実際の音に関する実長)でしょう。
●souding/speaking/acoustic lengthは、同義語ではないでしょうか:形容詞effectiveがついていなければ。文脈からも実効長を述べていないか、あるいは逆に「当然、実効長のこと」を差しているかも。
●トラベルソではコルク位置を越え、オーボエもリードより上の架空の点が振動の「腹」にある実効長に意味がありますから。
woodwind 図書館長
2006/04/29 20:24
 さっそくお返事くださってありがとうございます。
なるほど、やはりこの三つの語は同義語と思われるのですね。著者にも確かめてみようと思います。(いままで気にはなっていたのですが英語の文を作るのが苦手なもので.....)
 私は演奏のほうが専門で、物理や数学は大の苦手です。『オーボエもリードより上の架空の点が振動の「腹」にある実効長に意味があります』というのがどういうことなのか、考えてもわかりません。お時間のあるときでけっこうですから、説明してくださいませんか?  これからもこのブログを拝見するのを楽しみにしています。
A.O.
2006/04/29 23:18
●具体例を示します。わたしのオーボエはリグータRIECで、リード含めた全長658mm。最低音はBb。A=442Hz。
●オーボエは開管です。ベル端あたりが「腹」。リードチップあたりも「腹」でBbの半波長の気柱ができていると考えられます。
●常温でのBbの半波長は726mm。すなわち、なぜか「実効長」=726mm。
実際の全長(実長)は、658mm。その差の68oはどこへ行った?
●テーパーがつくほど円筒より管を短くできます。オーボエ本体の先にテーパーのあるリードパイプとリード。テーパーをきつくすると、実質短いリードで実効長を長くできます。もしテーパーを止めれば、68mmぐ〜んと伸びた管と等価。
●リードをくわえた時、丁度、のど仏あたりが実効上の「腹」となります。
woodwind 図書館長
2006/04/30 08:53
 館長さま、説明してくださってありがとうございます。実は上の説明を読んでも「ん〜??」という感じだったので、管楽器のやさしい物理学についてのサイトでお勉強してきました。基礎がわかっていなかったわけです。お恥ずかしいです。
 もう一度読んでみて、やっと(おぼろげに?)わかったつもりです。ステープルを短くしたり、コニカルにしたり、太くしたらどうなるか、経験的にはわかっていたのですが。 そういうことだったんですね!
A.O.
2006/04/30 16:34
●演奏者の立場では何気なく使っている楽器ですが、良く見ると不思議でいっぱい。
●製作者の立場では、これが悩みの種になります。ちょっとした寸法とか、塗装とか、穴の角度とか・・・・何がどうなっているのか、複雑に絡みます。そこで、この記事のように、一つ一つ分解して説明しています。ただ、自身でも十分納得がいかないこと多し。
●これからも、引き続き記事をご覧ください。
woodwind 図書館長
2006/04/30 22:01

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