楽器のつくり方 (60) 2006/6/15欧州黄楊の半丸太から木取りして開始した、オーボエダモーレつくり。 モデルはアイヘントップ Eichentopf で、ピッチはA=415Hz。 ついに、音合わせである最終段階まで進みました。 音つくりのために、トラベルソの場合では歌口だったように、ダモーレでは、リードが必要です。 オーボエダモーレのリードは、ボーカルと呼ばれる短い管と、それに足して、つないでかぶせる短いリードチューブを用意します。 そのチューブに、オーボエと同様にリードを作ります。 このボーカルとチューブを分割する分割型は、バロック当時にも見られます。 これに対して、バロックオーボエでは、当時はチューブ一体型が普通。 ただ、リードは消耗品でもあるし、微妙なピッチや吹奏感調整等のため、バロックオーボエでも、分割型を用いる方も、プロ・アマを問わず多くいるようです。 分割型では、ボーカルと、リードチューブのテーパーが合うことが重要。 合わないと、息漏れなどが起きます。 ただし、この部分でのテーパー度が変化することの影響には、良し悪しがあるようですから一概に問題とは言い切れません。 バロックオーボエや、バロックオーボエダモーレでは、ボーカルとリードの入手が重要な課題となります。 管本体より、音決めの要素が強いとも言えそう・・。 この連載のオーボエダモーレに関しては、ボーカルを2種入手しました: @同モデルを扱うプロ製作家のボーカルとチューブを購入 Aその製作家によるコピー楽器のボーカルをコピーしたものを入手(読者の好意による) ボーカルに合わせ、リードチューブは、モダンのコーラングレ(イングリッシュ・ホルン:EH)のものを用います。 市販のEHチューブは、メーカーにより微妙にサイズが異なります。 できる限り合ったものを選びます。 わずかに合わない場合、糸を巻いて調整したり、シェラックで埋める方もいます。 フォトは、ダモーレ本体に、Aのボーカルに最も合うEH用チューブでつくったリードを取り付けています。 リードのケーンには、(英国で入手した)市販の「バロックオーボエ用」の、短く幅の広いものを用いています。 フォト下に並べたものは、右から順に、 - @の製作家のボーカル - 自作リード(EHケーンを用いた幅が狭すぎるもの) - 読者の自作リード(幅が広い) - 読者の自作リード(もっと幅が広い) これらリード/ボーカルを、ダモーレのリード井戸いっぱいに差し込みます。 ボーカルに巻いた糸で調整しますが、井戸いっぱいに丁度入るようにします。 さて、音あわせ(音程:ピッチ合わせ)には、フォトに示す電子チューナーを使用します。 市販のモダン楽器用のチューナーは、A=442Hz中心で、演奏者用。 これに対し、楽器つくり、中でもバロック木管つくりの立場では、必要とするチューナーが異なります。 - 復元楽器のピッチが未知 (リード・チューブが現存せず) - 調整前は、各音のピッチは当然バラバラ - 当時の音律として何を採用すべきか チューナーに要求される条件をあげてみると、 ●ピッチ範囲: A=390〜A=470Hz − ベルサイユ A=392〜403Hz あたり − バロック A=415〜419Hz あたり − クラシカル A=425〜435Hz あたり − モダン A=440〜444Hz あたり − ハイピッチ A=465Hz〜 あたり ●音律: 平均律/ミーントーン/ヴァロッティ・ヤング/純正律/その他・・ ●相対ピッチ: セント(Cent)表示必須 ●メーター: アナログ表示が追いかけやすい ●比較音: 音を耳で聴いて確かめることあり チューナーに向って音を出し、メーターで「セント」を読取ります。 場合により、チューナーからの音も耳で聴いて比較します。 セント読み取りしたものを、グラフ用紙に書き込み、「眼で見て確かめる」方法を採っています。 フォトのグラフ用紙は、中心が、A=415Hzとそこからの絶対周波数値のほかに、「セント」表示を記入しています。 こうすることで、種々の異なるピッチ、A=392HzとかA=430Hz の場合でも、中心の A=415Hz を それらのピッチに読み替えるだけで、セント表示では、そのまま使えます。 ★フォトをクリックします。 現れる新しいウィンドウを画面いっぱいに拡げます。 画面の中のフォトの右下コーナーあたりにカーソルを動かします。 現れる四角い拡大アイコンをクリックすると最大拡大画面表示となります。 グラフ用紙の詳細まで見ることができます。 その新しい画面を閉じると、本ページに戻ることができます。★ 各種リードを付け替えて測定しました。 第一オクターブが低めで、短いリードが必要。 リード幅が狭いと、最低音域C/D/Eのビビリが出ます。 幅広リードでは、安定しますが、ピッチは低目となり、長さを短く調整することが必要。 何度もトライし、楽器に合うボーカル/リードチューブ/リード(ケーン)を選びます。 本体の指穴調整を行わない状態で、まず、適切な「リード」を探すのです。 全体の様子を、グラフ用紙に取ったデータを眼で見て確かめます。 適切なボーカル/リードが得られたなら、ピッチの合わない音を調整してゆきます。 グラフ用紙のデータから、その音を変えるには、どの指穴が関係するかをよく考えます。 指穴および内径削りの調整は、きわめて微妙。 グラフをよく「読み」慎重に行い、調整の結果、変化した分をグラフ用紙に書き込んでゆきます。 木管ですから、ある音の指穴調整は、他の音程や音の鳴りにも影響します・・・ 音程合わせには、トラベルソと同様、内径のプロファイルが決め手で、正しい内径のリーミングがなされていることが重要。 オリジナル楽器の内径は、あるべき姿から変化していることもあり、楽器復元の難しさがあります。 他の楽器や文献など、参考できるものを基準に、内径を決めて取り掛かることとなります。 時間を掛け、ボーカル/リードも種々試し、指穴調整と場合により内径再リーミングを行い、正しいピッチだけでなく、吹奏感など、気に入るまで続けます。 オーボエ/オーボエダモーレつくりの要点は、トラベルソの場合と異なり、「リード」という新たなパラメータが加わる点にあります。 「リード」は、人それぞれにより合うものが異なるもの。 自分の音を作ってゆくのが、オーボエ/オーボエダモーレつくりの本質とも言えるでしょう・・ 【関連記事】 青字クリックで記事へジャンプします。 ●トラベルソの調整:指穴の大きさで音程を変えます ●指穴の大きさが、いろいろあるのは何故? ●トラベルソの音つくりは、リーマーによる内径仕上げから ●木管のピッチはどうやれば変わるのでしょう ●木管の音響特性を決める鍵は内径にあり |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
オーボエ・ダモーレができてくるのを楽しみに拝見しています。いよいよ、音合わせですね。 |
A.O. 2006/06/15 15:58 |
リードについて。わたしは市販のイングリッシュホルンのケーンをつかいませんが、それは幅が狭いからではなく丸材の直径が小さいからです。つまりカーブがきついので、リードにしたときに開きすぎてしまい、コントロールできないのです。丸材の直径が15mm のものを使っています。バロックオーボエ用として売られているのは、直径の大きいものです。 |
A.O. 2006/06/15 15:59 |
☆A.O.様初めまして。オーボエ仲間に出会えることができてとてもうれしいです。ダモーレも吹かれているとのこと。愛のささやきが聞けるなんてたまりません。 |
オーボエ好き 2006/06/15 21:56 |
●A.O.さま、お久しぶりです。以前のコメントにありました、Bruce Haynes の「A History of Performing Pich」と「The Eloquent Oboe 」の2冊の洋書、運よく読者の方から同時にお借りできました。ご指摘のように、大変な内容の本ですね。リード/チューブ/ケーン/管体について、研究いたします。 |
woodwind 図書館長 2006/06/15 22:26 |
オーボエ好き様はじめまして。よろしくおねがいします。いつも館長様とのやりとり(とても数学的?すぎてついていけないことも..とほほです)を読んで、お二人ともすごいなぁと感心しています。 |
A.O. 2006/06/15 22:42 |
館長様、試奏させて頂けると嬉しいです。楽しみにしています。実は秋の演奏会でダモーレをたくさん吹くので、最近いろいろと研究しています。かなり長いことこの楽器をやっているのですが、リードに関してはいつまでたっても変更があります。体力が落ちてきて、若い頃のように(少々合わないリードでも)力ずくで吹いてしまう、ということができなくなったからかもしれません。 |
A.O. 2006/06/15 22:58 |
A.O.様 |
オーボエ好き 2006/06/16 07:24 |
●A.O.さん、「数学的」なコメントのやりとりが続いているようで、反省しています。本、バロック図書館では、各記事を、「日記風」でなく、あとで編集し一冊の本ができるような「客観性の」スタイルで、あえて書いています。そのためか、フランクであるべきはずコメント欄が、足を引っ張られている風がありますね・・・反省。 |
woodwind 図書館長 2006/06/16 07:37 |
☆本日自作オーボエで初の練習。 |
オーボエ好き 2006/06/16 20:40 |
●自作オーボエの完成おめでとうございます。Stanesby Srの内径6oの井戸のどこまで、差しているのでしょうか。チューブ外形が6oならぎりぎりまで、内径が6oなる、その手前まで。このあたりの、議論が多そう。 |
woodwind 図書館長 2006/06/16 23:57 |
☆これから調整してもっと表現できるようにしていこうと思います。 |
オーボエ好き 2006/06/17 19:44 |
●16-20mm差し込んだあたりが良好と言うのは、この、特殊なStanesby Srの件でしょうか?それともバロックオーボー全般でしょうか。井戸の30oの深さのあと、約50oも平行に続くボアが気になります。 |
woodwind 図書館長 2006/06/17 23:08 |
☆図面はEdin. 3321です。 |
オーボエ好き 2006/06/18 20:05 |
●Edinburgh大の3321とのこと。同大学から購入している一覧冊子vo.l2 partEにありました。62はc.1700で、3321はc.1730で、いずれもA=410Hz。3321は最小内径6.62oで、わたしが変だと感じていた62の6.40oが長く続く不思議なボアではないかも知れませんね。30年の差がありますから。62の方は、a fine, dark and even tneで、3321のほうは、soft, dark tone とありますが、はたしてそうでしょうか? |
woodwind 図書館長 2006/06/19 08:44 |
☆62と3321の差については何とも62のコピーは作っていません。 |
オーボエ好き 2006/06/19 10:45 |
●オーボエ好きさん、Edinburghの3321と62とを同一視して、これまでコメントに対するわたしの意見を述べてきていました。3321自体、わたしは知りませんので、無責任な回答もあったと思います。ごめんなさい。 |
woodwind 図書館長 2006/06/20 09:13 |
☆3321と62の図面を両方持っていますが、大差ないです。各ジョイントの長さと指穴の位置が若干異なる程度です。この大差ないところが図面上のコメントにある様な差になるのかもしれません。 |
オーボエ好き 2006/06/20 19:28 |
●3321と62の図面データがたいして変わらないとのこと。と言うことは、内径設計については、設計思想があり、そのように作っているのでしょうね。わたしは、Steenbergenなどオランダのオーボエを優先することとしたいと思いました。 |
woodwind 図書館長 2006/06/20 20:10 |
☆羊毛とリードの実験結果再び。 |
オーボエ好き 2006/06/24 16:03 |
☆削り過ぎたリードなら羊毛によって抵抗感が増すので、再び使えるかもしれません。私のも重なる実験により削り過ぎの印象ありですが、羊毛で使えています。 |
オーボエ好き 2006/06/24 16:08 |
●羊毛のミュート効果の件、各種実験参考になります。ただし、私のばあは実際での使用場面はあるかしら・・ |
woodwind 図書館長 2006/06/24 19:21 |
☆私の場合の低音のビビリの問題はLow Eですが、これは123 45-esで解決しています。それではなくLowC,D,E音量大き過ぎ、コントロールしにくいと言う点が改善されました。 |
オーボエ好き 2006/06/25 16:34 |
●LowC/D/Eの大きすぎの件、了解しました。 |
woodwind 図書館長 2006/06/25 18:50 |
☆確かに繊細な細工で機械作業だけで、その作品に宿る心まで再現できるとは考えにくいです。分割については全くおっしゃる通りと考えています。それで可能な範囲の工作を行って、仕上げは手で行うということになるのではと考えています。 |
オーボエ好き 2006/06/25 20:27 |
●仕上げを手工とし、心を宿すお考え、いいと思います。 |
woodwind 図書館長 2006/06/26 19:17 |
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