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zoom RSS 黄楊材の魅力いろいろ

<<   作成日時 : 2007/03/24 20:57   >>

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画像楽器のつくり方 (71) 2007/3/24

黄楊は、きわめて緻密で硬く、加工性の良い材質(広葉樹の硬材)です。

その特性を活かして、洋の東西を問わず、昔から細密の工芸品や、櫛、はんこ、チェスや将棋の駒、定規、弦楽器の指板やあご当て、そして木管楽器に使われてきました。

バロック時代では、リコーダー、オーボエ、トラベルソ、クラリネットなどの木管楽器の材として多用され、その音色は、まさに「木の音」であり、永く親しまれてきたと言えるでしょう。

しかしながら、黄楊の成長は遅く、成木となるまで200年以上。 需要に応じて伐採するあまり、入手がやや困難となってきました。

わが国においても、本黄楊は、はんこの材料として重用されます。 ところが、国産の黄楊は価格も高く、今では、ほとんど中国などアジアからの輸入材に頼っています。

バロック木管の材では、事情はどうでしょう。

当時は、英国、フランスやトルコ産の欧州黄楊が一般に用いられたようです。

黄楊は、産地により少しずつ異なります。 学術名 Buxus で区別すると本黄楊がどうかが明確となります:

●欧州黄楊 (European boxwood) : Buxus sempervirens 比重 0.93
●和黄楊 (Japanese boxwood) : Buxus microphylla var. japonica 比重 0.75
●中国黄楊 (Chinese boxwood) : Buxus sinica  ほか全17種
●シャム黄楊: Rubiaceae gardenia (アジア産の総称としてシャム黄楊とも呼ばれる)

現在では、入手可能な材を求め、本黄楊の代用として分類が異なる材も用いられ、それらも黄楊(ボックス・ウッド boxwood)と称する製作家・メーカーもあるようです。

●カステロ (Castello boxwood) ; Gossy piospermum praecox 比重 0.8
●アマレロ (Piquia Amarello) : Aspidasperma spp 比重 0.75

林業においては、現地呼称あるいは商業取引上の呼称とが入り混じります。 誰も植物学術名を使わず、同じ呼称でも異なる材が存在し、混乱します。

この状況は、漁業でも同じ。 漁師さんは、同じ魚に地方特有の呼び名を使い、また商売上の都合で、異なる種類に別の名称をつけたりします。

魚の王さまと言えば、鯛(タイ)。 腐っても鯛と呼ばれる真鯛のこと。 これにあやかり、タイの名前を付けたものが多いのも実情:

●金目鯛(キンメダイ): キンメダイ目・キンメダイ科・キンメダイ属
●目鯛(メダイ): スズキ目・イボダイ亜目・メダイ科・メダイ属
●イボダイ: スズキ目・イボダイ亜目・イボダイ科・イボダイ属
●キツネダイ: スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・タキベラ属

ところで、フォトに手持ちの黄楊を並べてみました。

すべて乾燥途中のもの。 表面をサンディングし、そのあとタング(桐油)ベースの仕上げオイルを塗布しています。 それぞれ紹介しましょう。

(フォトをクリックし、新ウィンドウのフォトの右下コーナーにカーソルを合わせ、拡大アイコンをクリックすると拡大して見ることができます。)

●時計9時: 欧州黄楊(英国産) 50x49x231mm 実測比重 1.00 乾燥 8.5年

色は白っぽい黄色。 油分の多い灰色の線が混じったり、節や黒点が多く、ときにバーズアイ(鳥目)や、トラ目などの杢が混じる。 オイリングにより黄色が強調される。 長い材が取れず、角材で10インチ=25cm程度。

●時計11時: 欧州黄楊(フランス産) 49x51x251mm 実測比重 1.02 乾燥 9年

色はうすい黄色。 特徴は、英国産と同様。 フォトでは、トラ目の杢が見える。

●時計2時: 欧州黄楊(フランス産) 直径100〜110o 乾燥数年

半丸太の材。 木の芯を含む材は、必ずひび割れが起きる。 これを避けるには、芯を外すように製材し角材とすると、収縮により、断面がひし形または台形となるものの、ひびは入らない。

●時計4時: アジア黄楊(ミャンマー産) 41x78x1050mm 実測比重 0.80 乾燥数年

欧州黄楊より比重はやや小さい。 色は、すこし赤みがかった黄色。 オイリングでそれが強調される。 フォトでは、みごとな杢が見える。 長さが取れるので、オトテール型のトラベルソの中部管などに適する。

●時計7時: 中国黄楊(中国産) 42x80x1051mm 実測比重 0.74 乾燥数年

欧州黄楊より比重はやや小さい。 色は薄い黄色。 フォトでは、オイリングで少し赤みがかって見える。 これも長さが取れるので、テナー・オーボエの上下管も問題なくつくれる。

これらの黄楊を用いたバロック木管が奏でる音色の魅力は、「ぬくもりある木の音」とでも言いましょうか。 

柔らかくて焦点がぼけたり、硬すぎて明瞭過ぎることなく、まさに木管のために生まれてきた黄楊の魅力を感じます・・・ 

 
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
欧州柘植はとても魅力的です。
まだそれで作ったことがないのですが、いつかやってみようと思います。

今日あらたにバロックオーボエ(after Ardenberg)の外径切削をしました。
外径切削に木工旋盤を使うのは初めてで、手でバイトを持ってこわごわ削りました。
いままでは金工旋盤でバイトをハンドルで送っていたのですが、手で固定していた方が曲線が滑らかできれいに仕上がりました。
オーボエ好き
2007/03/26 20:20
オーボエ好きさん、こんばんは。出張中のホテルからコメントします。
●欧州黄楊は、いいですよ。とくにオイリングしたあと、サット色が黄色になるところが、品格あるぬくもりを感じます。
●木工旋盤の初作業、おめでとうございます。こわごわ持っていると、バイトが跳ね返されて、余計に怖くなります。逆にするといいですよ。しっかり、バイトをツール・レストに押さえつけるようにするのです。
●曲線の滑らかさは、やはり木工旋盤ならでは。しかし、油断して、少しでもバイトをツールレストから浮かせるとか、力を抜いたとたん、思わぬ傷が一周いたします。慣れですけどね。
●Ardenbergとは、どの国の製作家でしょうか?ドイツ系ですから、地域的には、オランダあたりまででしょうか。また、今作られている材は、何ですか?ココボロそれともハード・メープル?よろしければ、教えてください。
woodwind 図書館長
2007/03/26 22:21
★Aadenbergはオランダです。管楽器に対して独自の考えをもって製作した人で、オリジナルのリコーダーは演奏者にバロックフィンガリングのリコーダーとは次元の違う喜びを体験できるとか。材料はハードメープルを使いました。ココボロでベルの径を得ようと思うと、大きなテーブル一枚分の板を購入しなくてはいけないそうです。
オーボエ好き
2007/03/29 17:54
オーボエ好きさん、こんばんは。出張から戻ってきました。
●バロックフィンガリングでなく、オリジナルフィンガリングを用いて製作する現代の製作家もいると思いますが、少ないのでしょうね、
●いま、製作されているのはバロックオーボエだと、確かにベル用の材を見つけるのが難しくなりますね。ココボロでも、上手く探せば、テーブル一枚分を購入しなくてもありそうです・・ココボロでその厚さのテーブル一枚分の材の価格はとても高くなりますね。
●ハードメープルではありませんが、杢(もく)の美しい、イタヤカエデ材を入手しています。これは、ファゴット用ですが。このような杢が美しい材によるオーボエつくりも、楽しいかもしれません。
woodwind 図書館長
2007/03/29 21:17
こんにちは。

ワタシのメック製のアルト・リコォダァは、
10年以上前のステンベルゲンのコピィで、
マラカイボ・ボックスウッドで作られてます。

この材は「本当の黄楊」ではないそうですが、
緩やかで、流れるような木目が美しいです。

やはり、メック製のステンベルゲンのペア・ウッドの楽器と
重さを比べてみましたら、ほとんど同じでした。

最近、初期バロゥクのリコォダァが気になります。
材は、プラム・ウッドだったりします。
わたにゃん
2008/01/11 10:30
わたにゃんさん、こんばんは。
●メックのステンベルゲンが出たあと、たしかステンズビーが出ましたよね。ステンベルゲンのカタログですが、ドイツやスイスの首都ベルンの楽器店でドイツ語のものを入手しました。それを今見ると、マラカイボと思われる438D,438ADでは流れるような木目(柾目)になっていますね。こんなに長い流れは欧州黄楊ではなかなか無理ですね。
●それに438Dの方は、少し赤みがかった杢もあり、上の記事のアジア黄楊ににています。
●初期バロックは、メックのKynsekerなどのことですか。ルネサンス・リコーダーでなくバロックタイプが気になるのですね?
woodwind 図書館長
2008/01/11 21:15
こんばんは。

初期バロゥクは、キンゼカーのことです。
ヘンデルの初期のソナタが合いそうです。

でも、415HzのF管などもありますが、
オリジナルのピッチは良く分かりません。

ペアー・ウッドは、
楽器の寿命が短いと聞いたことがありますが、

プラムやメイプルは、どうなのでしょう?
わたにゃん
2008/01/25 00:15
わたにゃんさん、こんばんは。
●ペアー・ウッド、洋梨ですね。ペアーの寿命が短いのですか?初めて知りました。プラムやメイプルの寿命も、わたしは分かりません。
●木管楽器、すなわち息でボアに水滴がつくための寿命と言うことですね。それならば、オイリングのし易さ、あるいは材質自体がオイリーなものなども、寿命に関係するかもしれません。
●バイオリンですが、木管でないためかオリジナル楽器は350年も使用に耐えていますね。ファゴットですが、メープルが使われています。モダンのファゴットも結構使用できている気がします。
したがって、寿命については、手入れとか製法などで変わってくる気がします。
woodwind 図書館長
2008/01/30 21:49

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