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zoom RSS バロック・クラリネットのバレルの誕生

<<   作成日時 : 2007/04/28 15:58   >>

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画像クラリネットのバレル(樽)をご存知でしょうか。

クラリネットは、1枚のリード楽器。 リードをマウスピースのテーブルに載せます。

モダン・クラリネットでは、載せたリードの固定にリガチャーという金具で締め付けます。 ドイツ式では、糸巻きによります。

糸巻き式の元をたどると、クラリネットが誕生したバロック時代に遡ります。

クラリネットの前身には、シャリュモーがありました。 一見、リコーダーのイメージ。 リコーダーの逆テーパーとは異なり、管はまっすぐで、上部にマウスピースがあります。 マウスピースに1枚のリードが、巻き糸で留められています。

これを改良したのがバロック・クラリネットで、1700年にデンナー J.C.Denner が貢献したと言われています。

バロック・クラリネットのイメージは、→こちらの記事に、大小2本示しました。

デンナーの初期クラリネットは、3分割。 ベルは、リコーダの足管のイメージ。 上管の先端にリードが付けられるものの、シャルマイに比べ長いもの。

デンナーの息子ヤコブ・デンナー J.Denner が、1710〜1720年ごろに製作したバロック・クラリネットは4分割。 ベルは、バロック・オーボエのそれと酷似。 ただ、上管の上に付くマウスピース部分には、丸いふくらみがあります。 モダン・クラリネットのように短いマウスピースではありません。

バロックからクラシカル時代への移行期に、バレルとマウスピースが分かれ、モダン・クラリネットの形式が確立されたようです。

その証拠とも言うべき、オリジナルが現存しています。

1760年ごろの製作家、ジョージ・ミラー George Millar の作品がそれで、英国オクスフォード大学のベート・コレクションに保存されています。

双子とも言うべき、2本の類似した後期バロック・クラリネットです。 2本とも外形は、全く同じ。

では、どのように違うのでしょう。 1本は、一体型のマウスピースを持ち、バレルとマウスピースがくっ付いています。 もう1本は分離型で、マウスピースとバレルとが別々になっているのです。

わたしは、ベート・コレクションで実際に手に取って観察することができました。

フォト手前は、双子のクラリネットのうち、分離型の方を復元製作したもの。 材質は、オリジナルどおり、マウスピースもバレルも欧州黄楊。

フォト後方には、比較のためにモダンのそれらを示し、材質には、マウスピースにプラスティックが、またバレルにはグレナディラが使われています。

ところで、一体型が分離型となったのはなぜでしょう。

わたしが思うに、マウスピースの製作は、その内部構造(内径)がやや特殊で複雑な形をしており、バレルと切り離すことにより、幾分かは製作しやすくなります。

しかし、それ以上に、マウスピースを容易に取替えられることが主要因なのでしょう。

モダン・クラリネットの演奏家や愛好家にとって、マウスピースはリードと合わせて、音出しの命とも言うべきもの。

リードが載り上下運動を起こすレイ(フェイシング)部分の長さや、リード先端における開き具合(オープニング)として、種々の値を採ることができます。

演奏家・愛好家にとっては、鳴らしやすく、求める音色と吹奏感を得るため、ことのほかマウスピースを選びます。

楽器メーカーだけでなく、専門メーカーも種々のパラメータや材質を変え、とても多くの種類を開発し、販売しています。

一方、分離されたバレルですが、その長さが長くなるとピッチが低くなります。 このバレルも、種々のものが作られ、取り替えられるようになっています。

このようにモダン・クラリネットでは、マウスピースやバレルがクラリネット本体とは別に、多種のものから、好みに応じて選べます。 リードやリガチャーもしかり。 音色や吹奏感が違うようです。

この吹奏感とか反応に大きく寄与する要因として、リード厚さのほかに、オープニングがあります。 平らなリードの内側面がマウスピースのレイから離れ、リード先端に至るまでの開き度合いが決め手。

このパラメータを変えるために、元々一体であったマウスピースとバレルを分離したのでしょう。

一旦、分離されたマウスピースは、とくにクラシカル時代以降では、本体の黄楊とは異なる材として、黒檀なども用いられたようです。

後期バロックからクラシカルへの移行期に話を戻しましょう。 ミラー作の双子のクラリネットのオープニング(左/右)は、以下の値を持ちます:

●一体型: 1.04/1.0mm (レイはオリジナルと見られる)

●分離型: 0.8/0.9mm  (レイは先端から20oほど、ヤスリで削った跡あり)

今も昔も、その人に合ったマウスピースが最良。

各国の楽器博物館に保存されているオリジナルのクラリネット本体には、バレルは付いているものの、分離型となったマウスピースが紛失しているのを多く見かけます・・


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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深い写真です。
マウスピースのテノンは結構長いんですね。ほとんどバレルと同じ位にも見えます。
ダブルリードよりはリードを用意するのは簡単なのでしょうか?
モダンのものを加工して転用がききますか?

バスオーボエの舟形ケーンで作っていたのですが、厚みを薄くする必要があることに気づきました。

オーボエ好き
2007/04/30 21:07
オーボエ好きさん、こんばんは。
●広角レンズのイタズラもあり、手前のものほど大きく・長く見えます。しかし、それだけでなく実際もテノンは長いです。バレル全長58.7o。マウスピース・テノン長37o。クラリネット上管のテノン長21.1o。したがって、バレル内での隙間は0.5o。
●リードは、市販のモダン・クラリネットのものを使用。バロックでは、テーブル長が短いので、市販のものを短くつめています。参考までに、別のF管バロック・クラリネットの方は、市販のモダンのEs管用のリードを削ってつくります。
●モダン用の転用が利くかの答えは難しく、本当のオリジナルでのリードに関する情報がなく、プロのバロック/クラシカルのクラリネット奏者に、どのようにしているか聴くしかないのが実情。
●バスオーボエの舟形ケーンは、バロック・オーボエの話かと思いますが、モダンの市販のバスオーボエ用は、確かに大きそうですね。英国には、バロック・オーボエ用の舟形ケーンを売っていますが、モダンのバス用に比較すると小さめです。したがって、厚さも少し薄いか?
woodwind 図書館長
2007/04/30 22:13
館長さま
お久しぶりです。
以前からバレルの形状が気になってました。
あれは、当然内径も「樽状」に膨らんでると思うのですが、あそこを直管でなくあえて樽状にする事でどんな効果があるのでしょう?
(上の倍音が出やすくなるとか?)

確かフルートも歌口近くの内径が少し膨らんでるのでは無かったでしたっけ?
まるな
2013/11/20 19:52
まるなさん、コメントいただきありがとうございます。レスポンスに2年かかっていますが、最近、結構、製作に打ち込むことができるようになり、クラリネットやオーボエのリード楽器の研究をしています。バレルですが、樽型は外径だけで、内径には關係しません。バレルの上部の内径は、マウスピースのテノンを受け入れるだけの径(約20mm)であり、バレルの下部の内径は、上管のテノンを受け入れるだけの径(約21mm)となっています。したがって、音響特性を決める楽器としての内径は、バレルは一切関係せず、マウスピースや上管自体の内径(ともに約14.4mm)で決まります。クラリネットの内径は、一般に上から下まで円筒で、直線的です。バレルの形は、もともとのバロック初期のクラリネットの外形デザインが、装飾性を持たせふくらみがあり、その影響だと理解しています。
woodwind 図書館長
2015/11/13 11:25
館長さま

お久しぶりです。
質問へのレスポンスありがとうございます。
なるほど、バレルの形は装飾性だけですか〜フルートの内径イメージがよぎり、深読みしてしまいました。

自分の楽器(シルクロード・オーボエ/管子)は
西洋楽器の発達方向=「音域/音量/転調領域の拡大、効率性」とは違い、キーは無い原始的なダブルリード楽器なので、自分の手の大きさ、指で押さえられる数と距離範囲だけの指孔のみで、上の倍音領域の出やすさは殆ど考慮されてない構造なのですが
自分はこの楽器の上の倍音領域がもう少し鳴りやすくならないか?〜という興味がずっとあります。
多くの楽器はペルシャで生まれ、そこからシルクロードなどを通って世界中に形を変えながら伝わって行った〜という説を聞いた事があります。
ダブルリード楽器も最初は野外向きの大きな音のものが多かったのが、ヨーロッパでは室内楽的なデリケートな演奏が出来るよう楽器が改造されて行ったと言いますね。
 
クラリネットやオーボエのキーが発達する過程に何か自分に役立つヒントがあるかも?〜と全くの門外漢ながら、こちらのサイトにもちょくちょく寄らせてもらっている次第です。



まるな
2016/02/29 23:51
まるなさん、お久しぶりです。菅子の第1と第2指穴の間隔だけ広いですね。右手中指は飛ばして使わないのかと思いきやそうではないですね。菅子の画像を見るにつけ、最近見つけた「バンブー・サックス」を思い出しました。竹製の管にシングル・リードを付け、第1と第2オクターブを出すようで、新しい考えの楽器みたい。円筒菅のクラリネットがオクターブでなく、1.5オクターブの12度上の音域を出しますが、サキソフォーンは開くテーパーでオクターブを出す。このときわたしが思うに、メンズールの設計ですが、パイプオルガンでは、長さの長短だけでなく、高音域を出すため管を細く、低音域を出すために管を太くします。オーボエもクラシカルやモダンへと管が狭くなっていきます。広がりテーパーは、そもそも、低音から高音まで出しやすい対応になっていると思います。そこで、管子も内径設計を広がりテーパーにして、音域を拡げることはできないのでしょうか。オクターブ上の音域が出しやすくなる気がします。竹管では内径のテーパーは作りにくいでしょうか。尺八は中を漆で塗って内径をつくりますが、同様な手法で細めるのはいかがでしょうか。ただし低音域の豊かさが犠牲になる気がしますが・・。まるなさん、このサイトも引き続き立ち寄ってください。
woodwind 図書館長
2016/03/01 22:18

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