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zoom RSS オトテール・トラベルソの総象牙フット・ジョイント

<<   作成日時 : 2007/07/14 23:42   >>

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画像楽器のつくり方 (78) 2007/7/14

象牙は、文字通り象の牙。 アフリカ象やインド象の牙。

これら象牙(アイボリー)は、ワシントン条約にて輸出入の規制がなされています。

野生動植物の国際取引の規制により、採取・捕獲を抑制して「絶滅のおそれのある野生動植物の保護」を図ることを目的として、1973年3月3日にワシントンで採択されました。

バロック時代のフルート、トラベルソの中には、総象牙でできたものもあります。 (→こちらを参照)

象牙は、また、分割型のバロック木管の接続(勘合)部のソケットに割れ防止の補強リング(マウント)として用いられました。 (本象牙のリングのついたオリジナル楽器の例→こちらを参照)

わたしは、本象牙でなく、代替材としてイミテーション・アイボリー(人工象牙)を用いています。 プラスティックでできていますが、外見はそれらしく見えるように、年輪のようなうすい模様も入っています。

人工象牙 alternative ivory/immitation ivory ばかりか、水牛の角や海亀の甲羅(鼈甲)など保護動物の材も、プラスティックで模擬されたものがあります。 (→こちらを参照)

ソケット部のリングの幅は、狭いもので3o、広いものでも15〜30o程度。 これらが、分割型トラベルソの、頭部管、下管、足管のソケット部、および両端のキャップと足管端に取り付けられます。

ところで、初期のバロック・フルートには3分割のオトテール型のトラベルソがありました。(→こちらを参照)

オトテールによるトラベルソは、本物が紛失しているものの文化保存のためでしょうか、複製(コピー)されたと言われています。 ベルリン楽器博物館、およびサンクトペテルブルク楽器博物館に所蔵されているものがそれです。

いずれも総象牙ではありませんが、大きなキャップと、フェール(バレル)および足管(フット・ジョイント)がすべて象牙で作られています。

ベルリンには、わたしは6回も訪れたことがあります。 楽器博物館へは2度ほど立ち寄ることができ、オトテールとノースのオリジナル楽器を、ガラスケース越しに観察しました。 その姿は、とても優雅で気品があります。

フォトは、そのフット・ジョイントを人工象牙からつくっているところ。

プラスティックですから柔らかく、木工旋盤のバイトを当てるとシュルシュルと削れます。 削りカスが、長い帯状となりそれが回転している材に絡みつきます。 ときどき絡みついた削りカスを手で取除きます。

この工程の前には、フォースナービットでソケットとボアのくり抜きを終えています。 それを旋盤のテールストックに取り付けた回転センターで押さえるように支えます。

フォスナービットについては、→こちらを、またそれを用いてくり抜く様子は、→こちらを参照ください。

問題は、プラスティックですから熱に弱いこと。 フォスナービットあるいは木工バイト(→こちら)で削るとき、摩擦熱で材自体がたいへん熱くなります。 その結果、材は柔らかくなり、指で掴み力を加えると円の断面が楕円のようになってしまいます。

人工の象牙の切削工程では、熱を冷ましながら、ゆっくり作業することがコツかもしれません。 また、削り粉ですが、粒子が大変小さなものが出て浮遊します。 長い間床に落ちて来ないと思われます。 そのため、この作業には防塵マスクの着用をお奨めします。

集塵機を用いない場合、作業後に削りカスを電気掃除機で取除きます。 ところが掃除機の後ろからは、すり抜けた微細なカスが空中に舞うことなります。 そのため、わたしはマイクロ・フィルタの付いた集塵機を1時間ほど回します。 (→こちらを参照)

それにしても、39o径の人工象牙ロッドからソケットとボアを掘り、さらに外側削りを施した後に残る削りカスは膨大。 体積にして「半分くらいは切削する」ためでしょう。

人工象牙の価格も安くはありません。 しかし、本象牙で足管を削り出すことを考えると、貴重な資源をかなり無駄使いすることになります。 まあ、ベルサイユ宮殿での音楽など、王室のための楽器だったと言うことでしょうか・・・  


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

象牙でできた木管ってありますか
1785年:ポッターの特許申請フルート
象牙のほかにもイミテーション材があります
オトテール型のバロックフルートをご存知でしょうか
木管とは木をくり抜いた管(くだ)です
●フォーストナー・ビット:きれいな穴あけができます
美しい木管は、よく切れる刃物から生まれます
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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
☆プラスチックの特性のため切削時に注意が必要なのですね。
☆木製のフットジョイントと比較してみると面白いかもしれません。
オーボエ好き
2007/07/23 19:31
オーボエ好きさん、こんばんは。
●プラスティックですので、刃物で容易に削れて、すなわちキズが容易についてしまいます。また、ついつい多めに削ってしまいがち。
●木製のものとの差が出そうな気もします。わたしの、オリジナル楽器でも、足管や下管などの本象牙部分も、幅が15o程度であり、あまり本象牙の効果を意識していませんでした。
●ところが、最近、本象牙製の足管やキャップなどのついたオトテールモデルを拝見する機会があり、足管単体を持ってみて、その重さ(比重の高さ)に驚きました。ネットで調べると比重1.7〜1.9。手持ちの人工象牙を今計測すると、1.2弱。
●象牙は、黒檀やグレナディラよりもずっと重い。確かに、音色に影響する気がしてきました。
●以前、オーボエ好きさんが、コメント欄ででしきりにリング(象牙や金属)の効果を取り上げられていましたが、確かに効果があるかも。
●人工象牙ですら、黒檀より少し重く、黄楊よりはずっと重いので、試してみる価値はありそうですね。
woodwind 図書館長
2007/07/23 23:40
★たとえばオーボエのリード用の糸ですが、ナイロンは響きを止めてしまうようで重厚な音色になって今いますが、融通の聞きにくいリードといえます。
★絹糸で作ったリードは響きが糸とともに十分に振動し、繊細な表現がしやすいです。
★この経験から、もしかしたら比重の重い材質が影響を及ぼすのではなく、材料が振動を止めてしまうのか、反射するのか、共振するのか、そんなところと関係あるのではとも考えています。
★僕が金属リングを使っているのは、木材よりずっと多く振動の反射が起こると仮定しているからです。
オーボエ好き
2007/08/29 23:03
オーボエ好きさん、こんばんは。
●昨晩、TV番組で、三弦(三味線)の弦つくりを見ました。絹の繊維をより線とし、10mほどの長さの弦を作るのです。よった後、ところどころ残ったささくれを一々手にはさみを持って削り取っていました。この絹糸の弦でないと、あの伝統的ないい音色が出ないとのこと。・・ふーむ、どの世界でも、とても微妙な領域を追い求めているのだなあと思いました。
●反射の意味を音響/電気工学でなく、材がしっかりして、管の中での振動を受けて自身が吸収せず、跳ね返す、の意味ですよね。その仮定は、当たってそうですね。ゴルフクラブの面のボールの反射係数のように硬くていい材質は、自身は変形せず、ゴルフボールだけがへしゃがってエネルギーとして一旦蓄えられ、遠くまで飛ぶのと同じようなものでしょうか・・
woodwind 図書管長
2007/08/31 00:22
☆三味線の弦製作は微妙なんですね。鍛えられた耳でないと意識できない領域なのだと思います。
☆反射の件ご推察のとおりです。ゴルフボールの表現はとても面白いです。遠くに飛ぶと言うところが遠鳴りと重なってイメージしました。
☆人工象牙をためしていますが、効果が今ひとつ足りません。象牙の代替材料は本象牙に似た比重の物を探すのが良い様に思います。しかし金属リングでは効き過ぎています。今は比重にして小数点以下のレベルで材を探さないと実験が続かなくなっていて歯がゆいです。
オーボエ好き
2007/10/08 19:46
オーボエ好きさん、こんばんは。
●人工象牙、比重1.2ほどでは効果が足りないとのこと。本象牙比重1.7〜1.9あたりとなると、人工大理石がよさそう。ある読者の方から、試してみてはと言われています。それは、システム・キッチンのテーブル・トップの材です。某メーカーの製品ですが、少々の熱では溶けず、かといって石というよりややプラスティックのような感じのもの。これが使用できると、オーボエおよびクラリネットのベルの最下端の72o径ほどの材が、心配なくいつでも手に入ることになります。板状のものを、ドーナツ状に切り出して、はめると言うわけ。
●当面、わたしは今の人口象牙で続けますが、是非一度試されたらいかがでしょう。金属よりは、軽いですね。それに熱伝導率は金属より低そう。それほど冷たい感触とはならない気がします。
woodwind 図書館長
2007/10/08 21:38
人工大理石という手がありましたか!!
ありがとうございます。実験再開出来そうです。
オーボエ好き
2007/10/09 07:06
★人工大理石ではありませんが、比重1.8の樹脂でヘッドキャップを作ってみたところ、響きが少なくなり、反応が悪くなりました。おそらく効きすぎだと思います。
★人工象牙の上から金属リングをつけると反応が柔らかに表れるようです。この組み合わせでやっています。
オーボエ好き
2007/10/14 17:25
オーボエ好きさん、こんばんは。
●それにしても、感性豊かな人ですねー。ヘッドキャップの効果って、それほど違いがあるねですか・・わたしなんぞは、トラベルソのヘッドキャップをはずしてみたのと比較して、とくに差が感じられまでんでした・・トホホ。
●人工象牙の上の金属リングで、「柔らかに」なるって、何を基準とされたのでしょうか?@人工象牙のみA金属のみBなにもない木材C上の比重1.8樹脂、どれでしょうか?いずれにせよ、その差が感じられるとは、うらやましい限りです。
●実験結果がでましたら、一度、【何を、または何と何を、どこに適用したとき、結果が、どの場合と比べて、何がいかほど、どうなったか】について整理してお知らせいただくとうれしいです。他の読者とともに、大いに楽しみにしています。
woodwind 図書館長
2007/10/15 20:35
☆”柔らかになる”は木材+金属リングより木材+人工象牙の方が効きが甘いということです。
☆昨日までの実験結果から金属リングの廃止し、人工象牙を用いることにしました。
☆金属リングは人工象牙の代替とはなりえないことがはっきりしてきました。両者を用いた結果は同じ傾向にあっても効いた強さや響きがことなります。
金属リングはモダンっぽい感じの音色や音量になります。また奏法にもそれなりの負担を要します。この負担は浪々と歌うには適している様に感じますが、トラベルソはそのような使い方が適しているかどうか。。。。。人工象牙に気づかされたというところです。
☆金属リングはベースが木製のトラベルソ(Quantzコピー)には度を越した調整ではないかと気づいてきました。
オーボエ好き
2007/10/17 21:15
オーボエ好きさん、こんばんは。
●人工象牙に気づかされたとのこと。以前、木管づくりにおける方向性について、ご意見をお伺いしたことを記憶しています。そのときにオーボエ好きさんからは、モダン楽器の方向性を意識したものを強く感じ取りました。
●わたしの方向性は、バロック時代の再現をやはり目指したいと思います。現代の演奏家のニーズに合わないかもしれません。たとえば、大ホールにおけるトラベルソの演奏。
●もちろん1本のトラベルソもかなり響くものであると、クイケン氏来日のおり感じました。大ホールでのてソロでしたが。ただ、これがもし大人数による協奏曲であったなら、ややかき消されると思います。現代の演奏家は、やはり音量を要求されるとは思います。
●引き続き、色々な試みについてその結果を是非教えてください。
woodwind 図書館長
2007/10/20 21:52

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