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zoom RSS 大きくてま〜るいオトテール・トラベルソのヘッド・キャップ

<<   作成日時 : 2007/07/28 16:34   >>

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画像楽器のつくり方 (79) 2007/7/28

オトテールのトラベルソは、初期バロック時代の3本継ぎ。

それまでの時代のルネサンス・フルートと異なり、内径にテーパーを導入したバロック・フルートのはしりの代表格。

その姿は、独特でとても優雅な形をしています。 オトテール型は、→こちらで取り上げました。

リコーダーと同様、先に行くにつれ絞りのある内径テーパーを持つだけでなく、ルネサンス・フルートの1本構造に対し、「分割」したことが特徴。

最初は、1本(ワン・ピース)を分割した2本継ぎ(ツー・ピース)も出ましたが、その後、オトテール型では、3本継ぎ(スリー・ピース)と構造変化が起きました。

ところで、3本継ぎですが、その呼称は適切でしょうか。 何を以って、3本(スリー・ピース)というのか知らん。

一方、後期バロック時代では、4本継ぎのトラベルソが定着しました。 頭部管(ヘッド・ジョイント)、上管(アッパー・ミドル・ジョイント)、下管(ロワー・ミドル・ジョイント)、そして足管(フット・ジョイント)。

4分割と3分割(3本継ぎ)の違いは、オトテール型の中部管が2つに分割され、上管(上中部管)と下管(下中部管)になったこと。

1本増えたものを4本継ぎと呼ぶなら、分割前のオトテール型を、1本少ない3本継ぎ表現とすることは理に適います。

ところが、装飾性に富むオトテール型トラベルソの姿を良く見ると、ヘッド・キャップが異常に大きいのです。

通常、トラベルソの頭部管(ヘッドジョイント)の歌口(マウスホール)より上の部分には、中にコルクが入っています。 (→こちらを参照)

歌口の大きさに依存しますが、コルクより上の仮想位置に、管の実効長を決めるところがあります(→こちらを参照)。 あくまで仮想で、コルクより上側部分の長さを変えても、音響特性の基本は変わりません。

バロック時代、トラベルソは製作家(モデル)により、長さも、先に付くヘッド・キャップ形状もいろいろでした。

オトテールのヘッドキャップは、とても大きい(長い)ものだと気付きます。

足管(フット・ジョイント)の長さに迫り、足管をひとつと数えるのですから、ヘッド・キャップもひとつと数えてはどうか?

ルネサンス・フルートの頭部管相当を2分割し、それ以下を中部管と足管に分割したと考えると、オトテール型は4分割との見方もできます。

やがて装飾性は、簡素化されてヘッド・キャップも短くなったようです。

フォトは、装飾性に富むオトテール・トラベルソのヘッド・キャップを旋盤加工したもの。

長くて、とても丸みのある優雅な形をしているでしょう。

モデルは、サンクトペテルブルク楽器博物館所蔵のオトテール。 もともとは、本象牙。 ここでは、プラスティック製の人工(イミテーション)象牙(→こちら)。

ところで、オトテール・トラベルソのコピー楽器を手にされた方は、誰もが「重い」と感じます。

これは重心が、本来左手の人指し指をかぎのようにして親指とで支える位置(支点)より上方にあり、したがって持ち重りを感じるからです。 (重心と持ち重りの関係は、→こちら、あるいは、→こちらの記事を参照)

重心が上方寄りになっている大きな要因には、大きな本象牙のヘッド・キャップが上げられます。

本象牙の比重は、1.7〜1.9ほど。 本体の木材は、欧州黄楊の約0.9から、黒檀(エボニー)では1.0あたり。 重いキャップが、支点から一番は離れたところにあり、シーソーなどてこの原理によりとても重く感じるのです。

演奏上の慣れはあるでしょうが、肩が凝る感じ。 おもわず頭部管を左肩に載せたくなるほど。

このバランスを改善するには、ヘッドキャップをできる限り軽くすること。 キャップ材質を木材に変えると軽くはなるものの、装飾性を損ないます。 したがって、ヘッドキャップの空洞部分をできるだけ大きく取り、軽量化するのがよさそう。

フォトでは、本象牙よりも軽い人工象牙(比重1.2)を用い、内部を大きくくり抜いています。

ただし、キャップだけでなく、フェール(バレル)も足管(→こちらを参照)も同じ人工象牙ですから、改善量はそれほど大きくはなりません。

キャップと同様に支点から遠くにある足管だけを重い本象牙でつくれば、バランスが改善しそう。 でも、ワシントン条約の精神に則れば、そうもゆきませんね・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

オトテール型のバロックフルートをご存知でしょうか
トラベルソの頭部管にはコルクが入っています
歌口の大きさで、実効長が変わります
象牙のほかにもイミテーション材があります
トラベルソはどこでバランスがとれるでしょう
オーボエは、どこでバランスが取れるでしょう
オトテール・トラベルソの総象牙フット・ジョイント


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
美しいRですね。
最近になってやっと谷型のRを削り出せるようになりました。
確かにヘッドキャップが大きいですね。
モダンフルートのチューニングツールでヘッドスクリューのネジ部分にはめ込む重りが市販されているそうです。
共通する理由があるかもしれませんね。
オーボエ好き
2007/07/28 21:37
オーボエ好きさん、こんばんは。
●ありがとうございます。とくに美しいRを見せるために、通常わたしが採用しているフォトの構図(斜めで対角線上に、見せたいものを配置するテクニック)を今回は、採らずに真正面から、Rの様子を紹介しました。
●通常のヘッドキャップは、フォトの左1/3部分であり、残りは頭部管の一部とみなすこともできます。ことにオトテールでは、実際の頭部管において、歌口が極めて上端寄りとなっています。オトテール以外の3分割は、明らかにキャップのイメージのものが多いですね。
●谷型のRとは、オーボエのたまねぎ部分のことですね。ノミ(ガウジ)はどの種類をお使いでしょうか?
●モダンフルートの重りのことは知りませんでした。知っていたのは、ゴルフ・クラブのヘッド調整用。なんせ34インチもの長さがあるので、わずか1gでも変えると、まったく振り加減が変わります・・。
woodwind 図書館長
2007/07/28 23:32
☆オーボエのタマネギ(バリュスターかな?)の部分です。ノミはSkew chiselです。両刃の刃物の様なものです。それをややRのついた刃に研ぎ直して使っています。
今はこれがスクレーパーの代わりです。
☆大きなヘッドキャップの役目がとても着になります。遠鳴りの楽器を作る時にはそうしようかと思うのですが。
オーボエ好き
2007/07/30 21:46
オーボエ好きさん、こんばんは。
●やはり玉ねぎの部分ですね。少しでも凹部分があると、平らなノミでは上手くゆきませんね。凸部分は、まし。スキュー・チゼルは斜めの刃ですから当たるのは1箇所。そのため曲線も削れますが、あくまで理屈。実際、この操作は難しい。しかも仕上げ用。わたしは仕上げの際に、それまでの苦労が水の泡になるくらい難しくて使いません。
●それを、まるく削るとは考えましたね。発想だにできませんでした。
●ヘッドキャップの役目は、研究の価値がありそう。わたしは耳元で聞いてもキャップの有無での差は感じられません。おっしゃるように、遠くまでの響きは違うかも。ある記事だったか、キャップ効果が載っていた記憶があります。空洞の意味があるのか、重量が関係するのかは理解していません。気柱の空気粒が振動するとき、それを支える管が弱くては(軽い軟材など)柔らかいぼやけた感じで、反対に比重大の緻密材では、遠くまで届きます。キャップが頭部管だと理解すると、材質比重が関係しても不思議ではないですね。成果がわかりましたら、是非教えてください。
woodwind 図書管長
2007/07/30 22:59

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