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zoom RSS 左右対称のオトテール・トラベルソのバレル

<<   作成日時 : 2007/08/12 13:28   >>

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画像楽器のつくり方 (80) 2007/8/12

オトテールのトラベルソのバレルをご存知でしょうか。

クラリネットには、バレルがあります。 (→こちらを参照) 機能は同じようなものですが、成り立ちは、少々異なると言えるでしょうか。

バロック初期に、それまでのルネサンス・フルートから、バロック・フルートに進化しました。

進化の特徴は2つ: @円筒内径が逆円錐に A1本から2〜3本継ぎへと分割。

とくに後者の分割では、継ぎの機構として、ソケット(凹)とテノン(凸)による勘合が考えられました。

その後、トラベルソは4分割が一般となり、クラシカル時代へ。 初期クラシカルでは、4分割を継承しますが、次第に多鍵のメカニカル・フルートへ発展するにつれ、再び3分割へ。 19世紀中ごろ、ベームによる改良がなされ、3分割のままモダン・フルートへと続いています。

ところで、ソケットとテノンによる勘合方式の原点を探ってみましょう。

1本のトラベルソを2つに切り、これをつなぐには太めのパイプを用意し、両方から2分割したトラベルソを差仕込むとよさそう。 このパイプをバレル(樽)と呼ぶこととしましょう。

パイプは太いし、また両側から差し込む量も一定ではありません。 これを解消するには、2分割トラベルソのいずれにも、外形を細くした、いわゆるテノンをつくり、バレルの方では、受け入れるテノンの長さ分のソケットをつくると良いことが分かります。

フォトは、オトテールによる初期バロックのトラベルソのバレルをつくっているところ。

左右対称の美しいフォルムをしています。

紛失したとされるオトテールのトラベルソですが、複製がなされたものがサンクトペテルブルク博物館に所蔵されており、それを復元したもの。

分割された頭部管と中部管は、それぞれ長さ 31o ほどのテノンがあります。 それを受けるバレルには、ソケットがあり左右とも、深さ 31mm ほど。

バレル長は 72mm で、両方のテノン長の合計 62mm を受け入れると、中央部に 10mm の隙間があきます。 トラベルソ内径に合わせ、隙間を埋める構造で、内径の連続性を得ています。

オトテール型のトラベルソは、当時の他の製作家もつくりました。 (→こちらを参照)

中には、分解できるジョイントであるバレルでなく、頭部管の方に、外形デザインを維持しつつくくりつけたものもあります。 中部管のテノンを受け入れるソケット機能だけが残され、役割としては十分。 分離バレルでなく一体型では、本体の木でつくられたものもあります。 また、装飾性から、半分は木で、半分だけ象牙で飾られたものもあります。

ところで、フォトをもう一度ご覧ください。

左右対称ですから、真ん中で2分割するとどうなるでしょう。

同じものが2つできますね。 これを「半バレル」と呼ぶことにしましょう。

「半バレル」の形状、バロック・フルート(トラベルソ)のソケット部の形状とそっくりですね。

バレルをくくり付けたとたん、両端からでなく、中部管のテノンだけを受け入れるソケットで十分。 デザインを活かした「半バレル」を採用したのでしょう。

「半バレル」のくくり付け方には、もうひとつあります。 頭部管はオトテール式のテノンとして残し、中部管(その後の上管)にソケットをつくる方法です。 事実、ステンズビーの象牙トラベルソでは、上管にソケットがあります。 ただ、上管の替え管方式が発達するにつれ、替え上管の一つひとつにソケットをつくる手間を省くため、頭部管ソケット方式が残ったのでしょう。

このように、多くのバロック・フルートは、「半バレル」装飾が採り入れられました。 全体が象牙製のものもあれば、半分ほどの象牙マウント(リング)のものも、さらに全て木でつくられたものもありました。

ところが、ロココ、あるいはクラシカルへの変遷で、バロックの「絢爛な装飾」から離れ、もっとシンプルなデザインが求められました。

わたしが多く複製する、T.Lot(ベイト・コレクション所蔵)ですが、頭部管には、飾りのベッド(装飾のための丸く突き出たリング)がありません。 下管ソケットには、ベッドが付いているにもかかわらずです。(→こちらこちら、あるいは、こちらを参照ください)

その後ロココに至ると、現代の多くの製作家がコピーする G.A.Rottenburgh (クイケンモデル)が出てきます。(→こちらを参照)

その姿は、流れるような曲線美。 「半バレル」の趣はありません。 ソケット補強部もきわめて薄い象牙リング。

クラシカルから、現代(モダン)の木製フルートに至るまで、流れるシンプルなデザインが継承されてきています。

いずれにしましても、バロック・フルートの原点ともいうべき、オトテール・トラベルソ。

独特の対称型バレルに加え、丸いヘッド・キャップ(→こちら)、つぼ型の足管(→こちら)とあわせ、象牙で飾った絢爛さは、その後のトラベルソの外形デザインに大きな影響を与えたのではないでしょうか・・・


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
今日は初めて人工象牙を削りました。
ラッフィングガウジではぼこぼことえぐれた表面になって、スクレーパーに切り替えました。よく研いでおかないと熱を持ちますね。

国内で人工象牙を見つけられないので、海外から買っています。工業用の高密度プラスチックなんか使えると良いなぁと思いましたが、削り出されて現れるうっすらした模様は工業製品にはないかもしれないと思いました。
オーボエ好き
2007/10/06 20:32
オーボエ好きさん、おはようございます。
●人工象牙海外から購入されているとの事。海外でも、製造している会社は少ないと思います。わたしは、英国からですが、この製品の販売となると関係する会社がわが国含め世界にいろいろあります。結局、元の製造会社にたどり着く。ならば、直接買ったほうが安くつきます。
●39o丸材の手持ちが少なくなったと言うことで、注文輸入しましたが、オトテールトラベルソのキャップ、バレル、足管を作り出すと、あっという間に材が減ると気付きました。また注文しようと思っています。
●いきなりラフィングを使われたとの事。プラスティックですから、わたしは、最初から幅3oのパーティングを90度回転させて、平らな面で使用しています。これ1本で済ませています。良く研いで、ですが。
woodwind 図書館長
2007/10/07 09:07

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