バロック木管図書館 woodwind

アクセスカウンタ

zoom RSS 双方向の同心確保:ピンチャックの応用

<<   作成日時 : 2007/08/15 13:43   >>

トラックバック 0 / コメント 8

画像楽器のつくり方 (81) 2007/8/15

ピンチャックと言うのをご存知でしょうか。

木工旋盤では、切削対象の木材をしっかりと主軸台に固定する必要があります。

切削の基本は、あくまで「固定する」こと。 ややもすると、よく切れる刃物の方に気を奪われがち。 ガタガタとブレる回転物に、どんなに鋭利な刃物を当てても、表面はガタガタ・ボロボロとなりますね。

旋盤作業では、材を固定するため、一般に「チャック」を用います。 チャックは、結わえ部分の大きさに関し、大きく分けて2種あります:

●結わえ大きさに自由度あり

3爪、ないしは4爪のチャック。 爪で挟む径の大きさが、ある範囲で自由に動かせます。 主として金工旋盤作業でよく用いられます。

類似イメージとしては、手動、あるいは電動のドリル・チャック。 径が異なるドリル刃を取り替えて挟みます。

3爪は、結わえる対象の円柱サイズまで、自動的に絞り込みます。 外からの圧縮モードのほか、爪の向きを替え内側からの拡張モードも可能。

4爪は、個々の爪が自由に動き、四角いものでも固定できます。 圧縮・拡張、何れのモードも可。

●結わえ大きさが一定

一般に、木工旋盤の加工品には、皿、鉢、つぼ、コショウ入れ、椅子・机・階段の脚や柱、ボールペンの外装、などなど幅広くあります。

木材固定では、結わえ大きさを一定(固定)としても、各種応用で対処できます。

お皿作りでは、固定サイズの専用プレートに4箇所でビス止めし、固定サイズのプレートを挟むチャックがあればこと足ります。 また、1インチなど、決まったサイズの円柱加工を材に施し、専用チャックを用いることでこと足ります。

フォト後ろ左は、この種のチャック。 長い歴史を誇る英国社製。 本体のほか、7種のパーツ。 加工目的に応じ、組み合わせを選びます。 フォトは、3爪の装着例で、2つの機能を持ちます。 (→こちらも参照)

@中心部分: 1インチ 25.4mm の円筒状の材/パーツのパラレル圧縮
A外周部分: 3インチ 76.2mm のドビテール(あり継ぎ)圧縮

木管つくりの多くは@を多用。 丸材の端 10〜15mm を、1インチ 25.4+-0.5mm の円柱に仕上げ、結わえます。

オーボエやクラリネットのベル加工ではAを選択。 フォト外ですが、小型版チャックにより、2インチ 50.8+-0.5mm のあり継ぎをつくり、結わえます。 (あり継ぎとベルつくりでの双方向同心確保は、→こちらを参照)

いずれの結わえ方でも、回転軸を中心とする同心が確立します。 加工に当たり、一度も材をチャックから外さなければ、全ての箇所で同心が保てます。

ところが木管つくりでは、左右、双方向の同心確保が必要な場面が多々あります。

フォト手前は、その場面例。 オトテール・トラベルソのヘッドキャップとバレルつくり。

●ヘッド・キャップ (加工状況は、→こちら

丸材の人工象牙の端 10o ほどを1インチ径の円柱に削り、@の中心に結わえます。 比較的短い材加工で、芯押し台からの支えは不要。 芯押し台にドリルチャック付け、フォースナー・ビット(ビット詳細は、→こちら)により、ソケット部と空洞部をつくります。 そのあと、回転センターに付け替え外形削りを終えます。

問題は、次の工程。 切り離した材の左側面の飾り溝加工。 材をチャックから外しています。 左右入れ替えで、今度はソケット側でのチャック固定が必要。

●バレル (加工状況は、→こちら

同様に、右端からフォースナー・ビットで、ソケット部とボア部を順につくります。 その後、芯押し台の回転センターにより押さえ、左右対称の外形削りを施します。 左端まで加工し切り離します。

問題は、やはり次の工程。 切り離した左側のソケットつくり。 左右対称ですから、左右を入れ替え、先に作った右側ソケット側でのチャック固定が必要。


これらの場面での問題を解決するため、ピンチャック手法の応用を試みました。

フォト後ろ右は、1インチ径のピンチャック。 フォトを良くご覧ください。

1インチ径円柱の外周一部に凹み。 そこに所定のピンが入ります。 その箇所で、径が1インチよりごくわずか大きくなります。

使用にあたり、3爪に代わってチャック本体に装着します。 コショウ入れ製作の例では、コショウを入れる内径1インチの穴を掘り、ピンチャックで固定します。 ピン部分が内側から突っ張るように材を支え、外形を削って完成させます。 部分的な摩擦力を応用した留め方で、木材ならでは。

これにならい、ヘッドキャップやバレルのつくり終えたソケット部にピッタリ入るマンドレルをつくります。 ピンチャックと異なり、部分的強力な摩擦は得られないものの、回転軸のブレを極少にできます。

フォト手前は、そのマンドレル2種。 材は、木管つくりで生じる端材(→こちらを参照)。 適切な長さのものを選択。 材はレッド・ランスウッド。 もともと、チャック加工のため、端 10mm 程度を1インチ径円柱に削ったもので、それを生かしています。

●左のヘッドキャップ用マンドレル

ソケット部と空洞部径に合わせ、少しきつめに加工。 マンドレル自体をチャックに結わえ外形削りにより同心を確保。

このマンドレルにヘッドキャップを入れると、右側から飾り溝削りができます。

●バレル用マンドレル

ソケット部とボア部径に合わせ、少しきつめに加工。 マンドレルにバレルを入れ、芯押し台のドリル・チャックに取付けたフォースナー・ビットで、未加工であった左側のソケット部をつくります。


このようにして、左右から双方向の同心を確保した加工ができます。

同心精度の確保ですが、マンドレルの加工精度もさることながら、マンドレル加工後チャックから外したものを、キャップやバレルなどの実際の応用場面で、再び結わえなおすとき誤差が生じます。

誤差をいかに小さくできるか、・・・更なる工夫が必要でしょう。


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

木工旋盤のチャック類は、どのようなものですか
オーボエ・ベルつくりでは双方向の同心確保が要るのです
大きくてま〜るいオトテール・トラベルソのヘッド・キャップ
左右対称のオトテール・トラベルソのバレル
フォーストナー・ビット:きれいな穴あけができます
ニューアート?はたまた、宇宙人?
   



テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
ソケットを作る時にはとても注意しています。
バレルの装飾はこの方法でないと難しそうです。

こちらは暑くて作業する気力も萎えていた一週間でした。
今もってスクレーパーをどうやって作ろうか考えあぐねています。
オーボエ好き
2007/08/18 21:59
オーボエ好きさん、暑かったですねー。こちらも、昨日まで猛暑で、出かける勇気も、旋盤を回す元気も出ませんでした。
●ソケットは、確かに注意すべきですよね。ほんの少しでもずれると、見た目にすぐ分かりますね。人の眼も大したもの。
●スクレーパーですが、どこを削るスクレーパーですか。以前の記事へのコメントでは、オーボエ・ベルの内径削り用でしたが、そのことですか?そうであれば、ベルリン楽器博物館で当時のボア・リーマーを見ました。わたしの以前の記事に載せました木製リーマーの原理です。逆フレアーに木で削ったものに刃を1枚つけてあり、なすび型の握りが付いていました。手動用のリーマーだと思いました。
woodwind 図書館長
2007/08/18 23:25
☆当時のボアリーマーの件とても参考になります!!m(_ _)m
手動用とのこと、機械で分割リーマーを使うとよほど上手くやらないと段差ができてしまいました。
☆スクレーパーはリードの材料の内側用です。家具様に0.7mmのステンレスが使われているようなので、それでやってみようとも考えています。できれば工具鋼で作りたいところです。
オーボエ好き
2007/08/19 22:05
オーボエ好きさん、こんばんは、
●そのボアリーマーのほか、おそらくファゴットかバスリコーダー用と思われる木製リーマーも見かけました。記憶に残るのは、木製と言うことよりも、付けられた刃の材質。あきらかに鋼に見えますが錆びていません。ヨーロッパのお城や宮殿に行くと、西洋剣があります。不思議なことに錆びていません。日本刀で使用するハガネや玉鋼と成分と言うか、洋鋼は違うらしいですが、とても鈍く重厚なイメージなのです。見ただけで、よく削れそうと感じました。
●スクレーパーですが、英国で、木工旋盤woodturningの月刊誌に付録があり、なんとスクレーパー。四角の単なる板。厚さは1mm以上あるか。角は鋭い感触。すぐに錆びたので、ステンレスではありません。これで、テーブルなどの表面削り仕上げを行うようです。わたしは、スクレーパーを使ったことはありませんが・・
woodwind 図書館長
2007/08/21 22:17
woodwindさま、こんにちは。
☆木製リーマーは大きな内径のためのもののようですね。刃が銅というのは驚きです。青銅では武器等が作られたようなので硬度があると思います。
しかし、錆びないことを考慮すると黒銀の様に特殊な配合なのかもしれませんね。
☆家具用のスクレーパーで1mm以上の厚さ!市販のモダンオーボエ、ファゴット用のスクレーパーにはそのように厚いものも見られます。鋼材屋さんにといあわせたところ、手で切るのは不可能だそうです。なので薄い材を検討しています。SKゲージなら焼きを入れるのが簡単なのだそうです。
オーボエ好き
2007/08/22 18:10
オーボエ好きさん、こんばんは。
●英国雑誌付録のスクレーパーを探しましたが見つかりません。とにかく板の縁が、きわめて鋭利なことを記憶しています。
●探しているうちに、あるものを発見。英国STANLEY社の替え刃。カッターナイフの様な形状のナイフがあり、替え刃も36種。その中で左右対称で、えぐり取るタイプがあり、その刃の後ろ側がRがついています。これだ!これをグラインダーで削るとスクレーパーになるのでは?厚さを計ると0.6o。結構分厚いです。カッターナイフより頑丈。種々探して、目的に近そうなものを削った方が早そう。
●ところで、ステンレスではダメでしょうか。わたしのオーボエ用リーマーもステンレス。通常、台所の包丁はわたしが研ぎます。小出刃、柳刃包丁は、もちろん鋼。わたしの趣味の釣り魚の料理に必要。しかし、ステンレスの洋ナイフも研ぎます。指で触ってとぎ具合を確かめますがなかなかどうして・・。
woodwind 図書館長
2007/08/24 23:28
★情報を探してくださってありがとうございます。
★一昨日DIYshopで鉄板を見ましたが、焼入れできないということでやめました。やはりステンレスのほうがいいかもしれません。ただステンレスって彫金用の鋸刃できれるかどうか?
★カッターナイフを修正して使うのは良いアイデアと思います。
プラモモデラーはそうして自分の使いやすい道具を作るそうです。
★鉄ノコの刃の両端は丸いのでヤスリで調整してやればスクレーパーになるかもです。
★金属材料を小売してくれるnetshopで簡単な加工ならやってもらえるところを見つけました。まだ詳しくたずねていませんが、ここでガウジングベッドの溝を切ってもらえれば、真鍮でも作れそうです。
★オーボエの上管のした穴あけがよく失敗します。それは固定振れ止めを使ってないからです。僕の木工旋盤は芯高が低いので市販のものでは間に合わないのです。そこでwoodwindさまを見習って自作しようと考えています。材料はアルミです。暑さ20mm位の。真鍮だと値段ば倍以上になってしまいます。
オーボエ好き
2007/08/29 22:43
オーボエ好きさん、コメントありがとうございます。
●鉄ノコの刃とは、とてもすばらしいアイデア!! 実際に、文献集に載せました「アマチュア木管製作家」には、木製リーマーの製作法があり、その中で古い鉄ノコの刃を用いるとあります。
●その記事には、リーマー用に、金工ヤスリもあります。薄めのヤスリをグラインダーで削るのも良いかも・・焼きを入れる必要なし。
●オーボエ上管の穴あけ・・全くその通りです。とくにバロックの6oでなく、クラシカルの4oでは、それが顕著。
●わたしの固定振れ止めは、木材性。おがくずを樹脂で圧縮した材です。直角部分は、強固なL字金具で止めています。もちろん、アルミ製20mmには及びませんが、何とか使えています。ガイド穴あけの金具の代用として水道管のコンジェットパイプを用いる製作記事もあり。これを応用して、固定サイズ径用の振れ止めをパイプでもで作れそう。自由サイズ径を扱う発想を捨て、固定サイズにしてもオーボエ上管はつくれると思います。
woodwind 図書館長
2007/08/31 00:09

コメントする help

ニックネーム
本 文
双方向の同心確保:ピンチャックの応用 バロック木管図書館 woodwind/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる