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zoom RSS 人工と言えど、輝きは本象牙に劣りません

<<   作成日時 : 2007/08/24 21:30   >>

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画像楽器のつくり方 (82) 2007/8/24

象牙のイミテーション材、すなわち人工象牙でも、磨けば磨くほど本象牙のように美しくなります。

プラスティックでできた人工象牙ですが、色は、いわゆる象牙色:アイボリー・ホワイトにつくられています。 (→こちら

色だけでなく、本象牙に見られる、年輪と言うのでしょうか、不規則な縞模様と言えばよいのでしょうか、が入っています。 恐らく、アイボリー色のプラスティック材を溶かしたものに、それと少し色が異なる材を溶かし、「適当にかき回し」て混ぜ合わせ成型しているのでしょう。

幾何学模様でなく、「適当にかき回す」ことにより偶然にできる模様が、それらしく見えるのです。

フォトは、人工象牙の作品の例。 いずれも、美しい曲線に特徴があるオトテール・トラベルソの各部です。 (→こちらも参照)

左から順に、ヘッドキャップ、バレル、およびフット・ジョイント(足管)。 (それぞれ、→こちらこちら、そしてこちらを参照ください)

フォトでは、実際の色より、少し濃い目に見えます。 なるべく象牙に近い模様が浮き出るように、画像処理を施しています。

これを旋盤にて、削り出すときに生じるバイトの跡や各種凹凸をならすために、サンドペーパー(紙やすり・耐水ペーパー)の類を用います。 その工程は、サンドペーパーで「削る」作業であり、やや洗い目のものを使用します。

一方、「磨く」工程では、同じサンドペーパーの類を用いるものの、目の細かなものを使用します。

いずれも、旋盤上で行うこともできます(→こちらを参照)が、仕上げ磨きでは手で持って行います。

サンドペーパーの目の荒さ・細かさは番手で表しますが、各工程で用いる番手の目安を紹介しましょう。

●削りの工程

ヤスリがけをしている実感があります。 あえて表現すると、表面に「キズをつけている」感触が手に伝わります。  DIY店など、市販のサンドペーパー類で揃えることができます。

使用番手: 240/400/600/800/1000/1200/1500/2000

最も目の荒い240番は、大きな凹凸をなくすときに使用します。 木材と異なり、プラスティックの人工象牙ですから、柔らかく、すぐにキズだらけとなります。 後の工程で、このキズを取除くわけですから、できれば使用を避けたいもの。

黄楊やエボニーなど、木材のサンディングとは異なり、プラスティックですから、強く押し当てないようにします。 摩擦熱での発熱を避けるためで、一度に長くは作業しないようにします。

プラスティックに摩擦熱が伝わると、表面が少し柔らかくなります。 この結果、耐水ペーパーなどの黒っぽい粉が、キズを付けた溝にはまり込みます。

そのため、400番から始めます。 次に、目の細かな、600番、そして800番と順に細かくして進めます。

旋盤上で用いるときは、回転する材に、同心に並んだキズがハッキリ見えます。 そのキズが細かなものになってゆくのを確かめます。

●磨きの工程

ヤスリがけ、すなわちキズをつけている感覚がだんだん薄れ、最後は「磨いている」感覚しか残りません。 磨く感覚と言うのは、つるつるになった表面がすべるようになると言うこと。

使用するものも、市販のサンドペーパーの領域を超えます。 スポンジの表面に粉を塗布したもの、特殊な目を持つ布、そして布の生地に粉を塗布したものを用います。

使用番手: 2000/2400/3000/3200/4800/6000/8000/12000

削り工程と同様、相手がプラスティックですから強く押し当てずに用います。 最後の仕上げ段階では、手で持って絞るようにして磨きます。

およそ、4800番を超えるあたりでうっすらと輝きが見えてきます。 8000番で輝き出し、12000番で輝きます。

それ以上は、いかに磨くかの程度問題。 フォトでは、プラスティック専用の研磨剤で磨きました。

フォト後ろ左が、その研磨剤。 成分は、研磨剤・脂肪酸石鹸・石油系炭化水素・水。

フォト後ろ右は、布の生地に粉を塗布したセットで、ペーパーと異なり自由に曲げることができ、立体曲線の磨きにとても便利。

番手は、1500/1800/2400/3200/4800/6000/8000/12000。 磨きにしか用いませんので、磨耗はそれほどなく、10年近く使用しています。


削りの工程、磨きの工程を通して、注意すべきは、目の荒いもののキズは次工程で徹底的に取除くようにすること。

気がはやって、目の細かな工程へと先へ進めても、輝きの中に、同時にキズが残る結果となります・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

象牙のほかにもイミテーション材があります
イミテーションでも美しい象牙です
オトテール型のバロック・フルートをご存知でしょうか
太くてま〜るいオトテール・トラベルソのヘッド・キャップ
左右対称のオトテール・トラベルソのバレル
オトテール・トラベルソの総象牙フット・ジョイント
木管磨きも、旋盤上でできます


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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
人工象牙は使用を避けている材料ですが、
こうやって拝見すると美しくて使おうかなぁと思いました。
とてもきれいに仕上がるものなのですね。

そういえば象牙果と言うものがあるそうです。まだ使った事はありません。
オーボエ好き
2007/08/24 22:37
オーボエ好きさん、おはようございます。
●結構、美しいでしょう。あらためて輝くまで磨くことの意義を見つけました。この動機となったのは、本象牙を用いた、オトテール・トラベルソのコピー楽器を手に取って見たことです。大変印象的でした。なぜか。象牙の輝きがすばらしく、表面からではなく、奥のほうから透明感が漂い光を放つもの。象牙は、磨くとここまでも美しいのか。それを目指して。今回やってみました。いつも使っている素材なのですが。これまでは、ここまで磨いてこなかったということでしょうか。
●ベジタブル・ナッツのことですね。Tagua Nut。比重1.2。これを使ったことはありませんん。と言うのは、直径が1インチほど。トラベルソのリング(マウント)には、かろうじて取れても、オトテールに適用するには、直径4インチ以上が必要。それほど大きなものはなさそう。
woodwind 図書館長
2007/08/25 09:20
最近生命樹というのを聞きました。
昔は船のスクリューなどに使われたもので、摩擦熱によって樹脂が流れ潤滑油となるので回転部分に使われたそうです。
その材で作られたトラベルソが現存しているそうです。
しかし現在その材料はほとんど出回ってなく、それで装飾品の玉(数珠の玉?)が作られているそうです。
オトテールタイプのトラベルソに、比重の特に大きな材で作ったパーツを取り付けるのも面白そうです。
オーボエ好き
2007/08/29 22:36
オーボエ好きさん、こんばんは。
●リグナムバイタのことですね。米国在住のトラベルソ製作家のカタログを持っています。この中のT.Lotは、リグナムバイタで製作する/されたの記述があります。できるだけオリジナルに忠実に複製する製作者のため、カタログにある記述が、オリジナル楽器で存在するとも読めますし、この材で復元するとも取れます。10年ほど前の英国の木材店のカタログには、この材が載っていましたが最近はありませんね。入手が困難となってきたようです。
●わたしの好きな、モパーン Mopane もカタログ本から姿を消し、Webで見ても在庫がありません。どの材も、どんどん入手難となってきた感があります。
●従って、その外にも比重の大きなもがあり、それを用いるのも良いかも知れません。
woodwind 図書館長
2007/08/30 23:56
こんにちは。

個人的には、人工象牙を使うより、
全体を木で作る方が好きなのですが、
やはり、音色は変わるのでしょうか?

人工象牙は、
本象牙と同じくらいの比重を持つのでしょうか?

時々、人工象牙の代わりに別の木材をマウントした楽器を見かけます。
ちょっと異質な感じを受けますが、面白いです。
わたにゃん
2007/12/21 10:59
わたにゃんさん、こんにちは。
●本象牙は、ネットによると比重1.7〜1.9。わたしの使用する人工象牙は1.2。人工象牙の比重が、グレナディラなど重い硬材に匹敵するので、エボニー、黄楊より重いです。カエデや梨に比べるとはるかに重いです。
●音色は変わるようです。でもその差は、どのような条件で、いかほどと言うデータは持ち合わせていません。演奏者からは吹奏感、聴衆からはホールや部屋で異なるも、響きや音色(?)となって差があるのでしょう。木管自体の材質の違いが主要因でしょう。全本象牙のトラベルソでは、吹奏感と音色が違うみたいです。
●別の木の組み合わせは、面白く、わたしも2005/06/04の記事に取り上げています。元々、木工旋盤の雑誌でリコーダーでの組み合わせのフォトを見たのが始まり。
●人工象牙の装飾性のあるマウント付きか、木だけかは好みの問題。木だけもわたしは好きですが、象牙付を見てからは気が変わりました。バロック・オーボエでは木だけが多いですが、外国の著名な演奏家が象牙付きを持つフォトから、その装飾性により重厚感を増すことに魅了されました。
woodwind 図書館長
2007/12/23 12:50
こんばんは。
大学の研究室にいます。

医療用の材料の研究(のマネ)をしていますので、
本象牙の代替材料にも関心があります。

人工象牙は、意外と軽いのですね。
キングウッドも1.2くらいですね。

見た目にこだわると、
黒い楽器よりも茶色い楽器の方が好きなので、

オリジナルが象牙や黒檀の楽器は、
キングウッドで欲しくなります。

でも、どんな音がするのか知りません…。

時々、キングウッドでオォダァ可能なモデルがありますが、
キングウッドに向いてる楽器なんでしょうね。

本象牙の比重は、マグネシウム合金に近いです。
マグネシウム合金のトラヴェルソを試作してみたいです。
衝撃を吸収しやすい金属なので、やさしく響きそうです。

ただ、切削片が非常に燃えやすく、危険な材料です。
わたにゃん
2007/12/23 21:00
研究室のわたにゃんさん、お早うございます。
●人工象牙が軽めとは言え、やはり木に比べると重量感があります。もちろん、モパーネやグレナディラとでは同じぐらいですが。
●キングウッドを使って、現在オトテール・トラベルソを製作中です。機は、1本1本異なり、比重ばかりか木理の荒さ・緻密さもいろいろ。比重1.14と1.18のものを使用。どんな音色がするのか、楽しみです。と言うのは、アジア黄楊(比重0.83)とエボニーとキング・ウッドの3本を同時製作中で、それらの差異を確かめたいと思っているのです。
●人工象牙ですが、金属とは熱伝導率が異なると思います。今、室内温度20度ほどの部屋にいます。目の前の人工象牙のヘッドキャップを口にあてがいました。同様に黄楊の頭部管。いずれも、すこしの「ひんやり感」。一方、鋼鉄の自在リーマをあてがうとさすがに「冷たい」。マグネシウム合金では、銀や洋白のモダン・フルートのような感触と冷たさ感があると想像します。
woodwind 図書館長
2007/12/24 12:26
こんばんは。

マグネシウム合金は、ちょっと面白いですよ。
見た目は金属ですが、電解処理によって着色もできます。
例えば、金色にもできるようです。

それから、銀や洋白に比べるとはるかに軽く、
また、振動を吸収する性質があり、
全く違う響きが生まれるハズです。
http://www.ofic.co.jp/mg/magne.htm

いつか実験してみたいです…。
わたにゃん
2007/12/24 22:46
わたにゃんさん、こんばんは。
●マグネシウム合金のHPを見ました。ふ〜ん、てな感じです。確かに、最近のノートPCとかデジカメなどに使われているようですね。
●不思議なのは、振動を吸収する性質。楽器に適用する場合はどうなのでしょう。是非、実験してください。吸収材だと管の中で定材波が生まれにくくなるのでは?と思ったりします。フルートの音色が、ホルンのような音色になるのでは、と想像しますが・・・
woodwind 図書館長
2007/12/28 21:02

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