楽器のつくり方 (85) 2007/10/28バロック木管つくりに必要な木材には、乾燥が欠かせません。 (→こちら) 十分な乾燥がなされ、初めて材が安定します。 乾燥期間は、木材の種類や乾燥法により異なりますが、10年あたりが目安とされます。(→こちらも参照) 木管に適する材は、緻密で硬い広葉樹。 (木材例は、→こちらや、こちらを参照) これら材の木は、たくさんの細胞から構成されています。 根から吸収した水を何メートルも吸い上げ、葉の隅々までゆき渡すため、導管と呼ばれる大きな長いものもあります。 木の断面を顕微鏡で見ると、導管は穴となって見え、大きさや分布の仕方が木の種類により異なります。 これら細胞には水分が含まれ、伐採されたあと、乾燥により徐々に抜け、含有率が下がります。 外気の湿度・温度により下がる速さや比率が異なり、日本の気候では、およそ15%の飽和点に達し、とまります。 乾燥により細胞から水が抜けると材は収縮します。 その度合いですが、年輪方向に大きく、年輪に直角の方向には小さく、したがって製材状況により、曲がりが生じます。 角材では、四方柾目で菱形(→こちら)に、それ以外では、台形になります。 その結果、十分に乾燥しないうちに木管に仕上げると、丸いはずの管が楕円となったり、縦方向の収縮度の違いから、管が曲がったりします。 (→曲がった例は、こちら) 乾燥法としては、外気に当てる自然乾燥のほか、熱風を当てるなどの人工乾燥があります。 とくに木口から水分が抜けやすく、急激な変化を受けて割れを生じます。 このため、木口には、蝋などを塗布してゆっくりと乾燥させるのが一般的です。 いずれにせよ、水分を抜くだけでなく木に含まれる成分変化も期待するのか、時間をかけて「寝かす」ことが望ましいと言えるでしょう。 フォトは、木管つくりのプロセスを示します。 いずれのプロセスでも、乾燥し続けるわけですが、外気があたる面積の違いにより、乾燥の速度が幾分か変わります。 木管つくりは、右から左へとプロセスを進めますが、以下では後工程の左から順に紹介します: (フォトをクリック、現れる右下の拡大アイコンをクリックし、拡大してご覧ください。) ●外形削り待ちプロセス 左端の3組は、オトテールのトラベルソの頭部管と中部管。 材は、黄楊、キングウッド、エボニー(黒檀)。 オトテールのトラベルソは、中部管がとくに長く、このため、ガイド穴あけや穴拡げ工程では両端から作業を施します。 両端に、チャック結わえ用の削りが見えます。 リーミングにより、内径仕上げが完成。 外形と内径の差、すなわち管の厚さは19〜24o。 外も内も外気に触れますから、乾燥時間はわずかで済みます。 この状態で3ヶ月ほど自然乾燥させ「寝かせて」います。 ●外形削り準備プロセス その右となりの2組は、トマ・ロットのトラベルソの頭部管・上管・下管・足管。 材は、30年もの(乾燥)の本紫檀(こちら)と9年ものエボニー。 紫檀の頭部管・下管・足管、エボニーの下管・足管にはソケットつくりと人工象牙マウント付けが完了(→こちらを参照)。 紫檀は、内径仕上げの途中で、階段状に穴をあけた状態(→こちら)。 エボニーの頭部管・上管は、ガイド穴あけのみ完了(→こちらを参照)。 このプロセスでも、管の外側と内側から外気に触れ、乾燥は早まります。 ただし、ガイド穴あけだけでは、管厚が30oもあります。 いずれも、この状態で1年寝かせています。 ●丸材の木組み完了プロセス 次の右となりの2組は、角材あるいは丸材加工済みの中から目的のモデル用に長さ、緻密さ、色合いなどをあわせ「木組み」を完了したもの。(丸材加工は→こちらを、木組みは→こちらを参照) 目的のモデルは、ステンズビーのフルート・ダモーレとロッテンブルクのトラベルソ。 材は、いずれも欧州黄楊。 木組みが分かるように、丸材の表面にモデル、比重、丸材加工時期、乾燥開始(購入)時期などを、シールあるいは木材に直接鉛筆で書き込んであります。 後ろに立つは、イエロー・ウッドで、コーザックのクラシカルオーボエのベル用。 トラベルソ用の丸材の径は38o前後、ベル用の丸材径は63o。 角材に比べて乾燥時間の短縮が図れます。 いずれも、丸材加工後5〜7年、購入からでは9年ほど寝かせています。 ●丸材加工完了プロセス さらに右となりは、各種の丸材。 目的の木管の種類やモデルの用途を決めないで、9年ほど寝かせています。 用途に応じて、必要なガイド穴あけのサイズが異なるため、この状態で保管するのです。 左下から上に、ボコテ2本、レッド・ランスウッド、欧州黄楊2本、モパーン3本。 いずれも1.5インチ(38o)の角材から丸材に加工したもの。 後ろは、2.5インチ(64o)ほどの欧州黄楊の丸太から取ったもの。 丸太は芯持ちですから、割れが起きやすく、ビニール袋に入れて暗所で寝かしてきたものを丸材に加工。 欧州黄楊以外の材では、木口に蝋が塗ってあることに注視ください。 急激な乾燥で割れるのを防止しています。 ●購入角材での乾燥プロセス 右となりは、各種角材を購入し、そのまま乾燥させているもの。 購入時に、すべての材に対して、購入業者、年月、材の種類、そして管理番号を付したラベルを貼っています。 バロック木管の仕上げに至るまで、木管の各部を管理番号にて対応管理しています。 寝かせてきた期間を追いかけることができます。 左下から上に、ココボロ(両端に蝋が塗布されています)、ココボロ(この業者は蝋の塗布なし)、欧州黄楊、その上にハード・メープル(蝋の塗布あり)。 となりの3段積みは欧州黄楊。 欧州黄楊は、このように種々のサイズで販売されています。 いずれも長いもの、太いものが取れないことから、1.5〜1.75インチ角、長さも4〜9インチ、長いものでも12インチ程度とバラバラ。 右となり2段は、エボニー。 必ず両端には蝋が塗布されます。 表面からのヒビ割れも起きやすい材のため、全体に塗布されたものも見かけます。 乾燥はゆっくりと、ひび割れないよう、慎重に扱います。 その右は、2.5インチ角材3種。 エボニー、レッドランスウッドと後ろが欧州黄楊。 これらは、オーボエあるいはクラリネットのベル用に確保したもの。 (ベル材については→こちらも参照) いずれの角材も、この状態で9〜10年寝かせています。 ベル用ともなると、材の表面からの「深さ」があり、十分な乾燥のためには長い時間がかかります。 以上、順に見てきましたが、伐採した木からいきなり木管に仕上げると乾燥は速いものの、曲がりも早く大きくなるでしょう。 逆に、十分「寝かせ」、乾燥させてから木管に仕上げる場合は、乾燥にゆっくり長い時間が必要ですが、曲がりは少なくなります。 つくるモデルを決め、材を各部の長さの丸材にしたり、ガイド穴あけを済ませることにより乾燥期間の短縮が図れます。 また、それより後の工程の途中でも適宜乾燥させ、暴れ具合を見て、ゆがみを取りながら進めることが理想と思われます。 いずれにせよ、気の長い話と言えるでしょうか・・ 【関連記事】 青字クリックで記事へジャンプします。 ●木には乾燥が欠かせません ●バロック木管の木材:暴れるだけ暴れさせます ●木の内に宿る美しさいろいろ ●バロック木管の木材は、どこで入手できますか ●曲がったクラリネットってありますか(その2) ●内径が済むと、外形削りの準備をします ●ガイド穴あけの次は、内径を拡げ、ソケットをつくります ●丸材の中心にガイド穴をあけましょう ●木取りした角材を、つぎは丸材にします ●木管つくりは、木取りから始めましょう ●黄楊のオーボエのベル材、確保はいかに |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
今日は角材を丸材にしました。 |
オーボエ好き 2007/12/12 21:24 |
オーボエ好きさん。 |
woodwind 図書館長 2007/12/13 20:38 |
☆使用目的が決まっている物を丸材にして、下穴を開けています。 |
オーボエ好き 2007/12/16 22:30 |
●確かに、オーボエ用とトラベルソとではガイド穴のあけ方が異なるので、わたしも「汎用」の材として寝かしています。 |
woodwind 図書館長 2007/12/19 21:43 |
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