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zoom RSS バロック木管つくりのプロセスと材の乾燥

<<   作成日時 : 2007/10/28 11:56   >>

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画像楽器のつくり方 (85) 2007/10/28

バロック木管つくりに必要な木材には、乾燥が欠かせません。 (→こちら)

十分な乾燥がなされ、初めて材が安定します。 乾燥期間は、木材の種類や乾燥法により異なりますが、10年あたりが目安とされます。(→こちらも参照)

木管に適する材は、緻密で硬い広葉樹。 (木材例は、→こちらや、こちらを参照)

これら材の木は、たくさんの細胞から構成されています。 根から吸収した水を何メートルも吸い上げ、葉の隅々までゆき渡すため、導管と呼ばれる大きな長いものもあります。 木の断面を顕微鏡で見ると、導管は穴となって見え、大きさや分布の仕方が木の種類により異なります。

これら細胞には水分が含まれ、伐採されたあと、乾燥により徐々に抜け、含有率が下がります。 外気の湿度・温度により下がる速さや比率が異なり、日本の気候では、およそ15%の飽和点に達し、とまります。

乾燥により細胞から水が抜けると材は収縮します。 その度合いですが、年輪方向に大きく、年輪に直角の方向には小さく、したがって製材状況により、曲がりが生じます。 角材では、四方柾目で菱形(→こちら)に、それ以外では、台形になります。

その結果、十分に乾燥しないうちに木管に仕上げると、丸いはずの管が楕円となったり、縦方向の収縮度の違いから、管が曲がったりします。 (→曲がった例は、こちら

乾燥法としては、外気に当てる自然乾燥のほか、熱風を当てるなどの人工乾燥があります。 とくに木口から水分が抜けやすく、急激な変化を受けて割れを生じます。 このため、木口には、蝋などを塗布してゆっくりと乾燥させるのが一般的です。

いずれにせよ、水分を抜くだけでなく木に含まれる成分変化も期待するのか、時間をかけて「寝かす」ことが望ましいと言えるでしょう。

フォトは、木管つくりのプロセスを示します。 いずれのプロセスでも、乾燥し続けるわけですが、外気があたる面積の違いにより、乾燥の速度が幾分か変わります。

木管つくりは、右から左へとプロセスを進めますが、以下では後工程の左から順に紹介します: (フォトをクリック、現れる右下の拡大アイコンをクリックし、拡大してご覧ください。)

●外形削り待ちプロセス

左端の3組は、オトテールのトラベルソの頭部管と中部管。 材は、黄楊、キングウッド、エボニー(黒檀)。 オトテールのトラベルソは、中部管がとくに長く、このため、ガイド穴あけや穴拡げ工程では両端から作業を施します。 両端に、チャック結わえ用の削りが見えます。

リーミングにより、内径仕上げが完成。 外形と内径の差、すなわち管の厚さは19〜24o。 外も内も外気に触れますから、乾燥時間はわずかで済みます。 この状態で3ヶ月ほど自然乾燥させ「寝かせて」います。

●外形削り準備プロセス

その右となりの2組は、トマ・ロットのトラベルソの頭部管・上管・下管・足管。 材は、30年もの(乾燥)の本紫檀(こちら)と9年ものエボニー。

紫檀の頭部管・下管・足管、エボニーの下管・足管にはソケットつくりと人工象牙マウント付けが完了(→こちらを参照)。 紫檀は、内径仕上げの途中で、階段状に穴をあけた状態(→こちら)。 エボニーの頭部管・上管は、ガイド穴あけのみ完了(→こちらを参照)。

このプロセスでも、管の外側と内側から外気に触れ、乾燥は早まります。 ただし、ガイド穴あけだけでは、管厚が30oもあります。 いずれも、この状態で1年寝かせています。

●丸材の木組み完了プロセス

次の右となりの2組は、角材あるいは丸材加工済みの中から目的のモデル用に長さ、緻密さ、色合いなどをあわせ「木組み」を完了したもの。(丸材加工は→こちらを、木組みは→こちらを参照)

目的のモデルは、ステンズビーのフルート・ダモーレとロッテンブルクのトラベルソ。 材は、いずれも欧州黄楊。 木組みが分かるように、丸材の表面にモデル、比重、丸材加工時期、乾燥開始(購入)時期などを、シールあるいは木材に直接鉛筆で書き込んであります。

後ろに立つは、イエロー・ウッドで、コーザックのクラシカルオーボエのベル用。

トラベルソ用の丸材の径は38o前後、ベル用の丸材径は63o。 角材に比べて乾燥時間の短縮が図れます。 いずれも、丸材加工後5〜7年、購入からでは9年ほど寝かせています。

●丸材加工完了プロセス

さらに右となりは、各種の丸材。 目的の木管の種類やモデルの用途を決めないで、9年ほど寝かせています。 用途に応じて、必要なガイド穴あけのサイズが異なるため、この状態で保管するのです。

左下から上に、ボコテ2本、レッド・ランスウッド、欧州黄楊2本、モパーン3本。 いずれも1.5インチ(38o)の角材から丸材に加工したもの。

後ろは、2.5インチ(64o)ほどの欧州黄楊の丸太から取ったもの。 丸太は芯持ちですから、割れが起きやすく、ビニール袋に入れて暗所で寝かしてきたものを丸材に加工。

欧州黄楊以外の材では、木口に蝋が塗ってあることに注視ください。 急激な乾燥で割れるのを防止しています。

●購入角材での乾燥プロセス

右となりは、各種角材を購入し、そのまま乾燥させているもの。

購入時に、すべての材に対して、購入業者、年月、材の種類、そして管理番号を付したラベルを貼っています。 バロック木管の仕上げに至るまで、木管の各部を管理番号にて対応管理しています。 寝かせてきた期間を追いかけることができます。

左下から上に、ココボロ(両端に蝋が塗布されています)、ココボロ(この業者は蝋の塗布なし)、欧州黄楊、その上にハード・メープル(蝋の塗布あり)。

となりの3段積みは欧州黄楊。 欧州黄楊は、このように種々のサイズで販売されています。 いずれも長いもの、太いものが取れないことから、1.5〜1.75インチ角、長さも4〜9インチ、長いものでも12インチ程度とバラバラ。

右となり2段は、エボニー。 必ず両端には蝋が塗布されます。 表面からのヒビ割れも起きやすい材のため、全体に塗布されたものも見かけます。 乾燥はゆっくりと、ひび割れないよう、慎重に扱います。

その右は、2.5インチ角材3種。 エボニー、レッドランスウッドと後ろが欧州黄楊。 これらは、オーボエあるいはクラリネットのベル用に確保したもの。 (ベル材については→こちらも参照)

いずれの角材も、この状態で9〜10年寝かせています。 ベル用ともなると、材の表面からの「深さ」があり、十分な乾燥のためには長い時間がかかります。


以上、順に見てきましたが、伐採した木からいきなり木管に仕上げると乾燥は速いものの、曲がりも早く大きくなるでしょう。 逆に、十分「寝かせ」、乾燥させてから木管に仕上げる場合は、乾燥にゆっくり長い時間が必要ですが、曲がりは少なくなります。

つくるモデルを決め、材を各部の長さの丸材にしたり、ガイド穴あけを済ませることにより乾燥期間の短縮が図れます。

また、それより後の工程の途中でも適宜乾燥させ、暴れ具合を見て、ゆがみを取りながら進めることが理想と思われます。

いずれにせよ、気の長い話と言えるでしょうか・・


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
今日は角材を丸材にしました。
ガイド穴を開けてしばらく乾燥させようと思います。
数ヶ月の乾燥期間でも、こうした方がリーミングによって内径の面が荒れにくいみたいです。
オーボエ好き
2007/12/12 21:24
オーボエ好きさん。
●ガイド穴あけの後に乾燥させる方法ですね。かなり乾燥が速まると想像します。できれば、丸材の保管も、空気の通る暗所で、丸材同士を積み上げるようにして、どれもが乾燥できるようにされるといいと思います。
●ところで、使用目的が定まっているのですか?それとも汎用的に使用するものを先にガイド穴あけのものを作っておくのですか?その場合、バロックオーボエに使用する場合は、上管の内径が小さいので、ガイド穴径として小さなものを用いる必要があるため、その使用計画もされているのでしょうか?
woodwind 図書館長
2007/12/13 20:38
☆使用目的が決まっている物を丸材にして、下穴を開けています。
まだいろいろと実験したいものがあるので、持っている材を無駄無く使うために
使途の決まっていない材は角材のまま放置しています。
☆丸材同士を積み上げる様にですね!ありがとうございます。
オーボエ好き
2007/12/16 22:30
●確かに、オーボエ用とトラベルソとではガイド穴のあけ方が異なるので、わたしも「汎用」の材として寝かしています。
●用途を決めて、丸材やガイド穴あけを施し、製作を開始したものには、製造番号を付与しています。あえて、こうすることにより製作一覧管理表に載せて、制作意欲を維持しようとする狙いもあります。そのおかけで、製作中のものも多し・・・・
woodwind 図書館長
2007/12/19 21:43

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