楽器のつくり方 (87) 2007/11/17バロック・フルート、トラベルソの中でもオトテール型は独特のスタイルをしています。 (→こちら) 最も顕著なのは、頭部管、中部管、下管からなる3本継ぎであること。 これに大きなヘッドキャップと継ぎ手のバレルが付きます。 これまで、人工象牙のヘッドキャップ、バレル、足管をつくってきました。 青字クリックで記事を参照できます: ●象牙の足管(フット・ジョイント)つくり ●象牙のヘッド・キャップつくり ●象牙のバレルつくり ●象牙のヘッド・キャップとバレル用のマンドレルつくり ●象牙の磨き 今回は、木材でつくる部分を見てみましょう。 ●頭部管つくり 頭部管と中部管の継ぎ手のバレルですが、頭部管との分離型と一体型とがあります。 一体型の例として、シェバリエがあります。(→こちら) 頭部管の木材が象牙バレルを貫通するので材は長く、ガイド穴あけ、穴拡げ、リーミングの工程で難しさが増します。 分離型では、木材の長さが短くなるとは言え、4分割(4本継ぎ)のトラベルソに比べて難しく感じます。 その理由を考えてみました。 フォトの手前側は、バレル分離型のオトテール・サンクトペテルブルクモデルの頭部管と、その両端につくヘッドキャップ、およびバレル。 頭部管の材は、ヴァイオレット(キング)・ウッド。 長さは、最終仕上げ寸法 219o に対する余裕を持たせ 225o。 両端にテノンがあり、ヘッドキャップとバレルのソケット部に収容されます。 木工旋盤のチャック形式ですが、わたしのは、1インチ 25.4mm 径のパラレル圧縮型。 この 25.4o と言う寸法は、なかなか微妙。 通常の4本継ぎトラベルソの上管、下管のテノン径は、これよりも小さく、20〜24o。 従ってテノン部分の木材を 25.4o に削り、チャックに取り付けます。 穴あけなど加工後に目的の径まで削って仕上げることができます。 チャック結わえのための「のりしろ」部分が実質上不要なのです。 頭部管では、どうでしょう。 フォトの奥側は、トマ・ロットの頭部管。 材は、紫檀。 ヘッドキャップ側は、テノン形式でなく、頭部管のボアが直接ヘッドキャップを受けるタイプ。 この場合、チャック結わえのための 25.4o のパラレル部分が必要。 仕上げ長 221o に対し、のりしろ部分 10o を加え、材の長さは、231o ほど。 フォトで見るように、外形は、トマ・ロットの 231o に対しオトテールは 225o で 6o 短く、各種加工はやさしいはずですが、実際は少し難しく感じます。 その理由ですが、トマ・ロットには深さ 29mm のソケットがあります。 従って、実質の内径削りは、231‐29=202o。 内径で見ると、オトテール 225o は、トマ・ロット 202o より 23o 長いのです。 そのほか、各工程で加工の難易度をみてゆきましょう。 ●ガイド穴あけ この工程では、差異はありません。 ●穴拡げ ガイド穴からロングドリルによる 18o への穴拡げでは、刃物がボア(内径)に接する長さが少しでも短くなる方が楽。 長いと重く、最悪、スタックを起こしやすくなります。 ロングドリルは、全長 300o 。 わたしの旋盤は、芯間が公称で 24インチ 600o。 ヘッドストックにチャックを取り付けた状態で、実際は 640o。 テールストックにもドリルチャックが付くので、実質の加工範囲は 570o ほど。 ロングドリルによる加工の様子は、→こちら。 ロングドリル装着に 250o が差し引かれた残り 220o が加工物の長さに割当てられます。 トマ・ロットでは、のりしろ部がチャックに結わえられ、残りの材は 221o でぎりぎり。 ただし、先に 24mm のテノン加工をするとテノンの中にドリル先を入れることが可能ですから、余裕で加工できます。 これに対し、オトテールの場合は、チャック結わえ部を除く 215mm に対する加工のため、ぎりぎりで、両側にチャック結わえをつくり、両側からの加工としています。 ●自在リーマー加工 頭部管ボア加工には、フォトの自在リーマーを使います(→こちらを参照)。 自在リーマーは、6枚の長さ 65mm の刃の両端に、ネジ止め部があり、これらを緩めて左右にずらせると、刃が共に左右に移動します。 刃の芯側はテーパー状で、これを受ける芯側の軸もテーパーの溝が掘られ、左右の移動に伴い、刃の径が変わる構造となっています。 JIS規格の工業製品であり、フォトのものでは、その範囲は、18.25〜19.75mm。 トマ・ロットでは、ボアは 19.6o で、刃はかなり中央まで寄ります。 従って、ボア長 202mm に対し、両側からの加工となります。 オトテールのボアは、18.95o で、やはり両側からの加工ですが、長さが 225mm と 23mm 長く、加工に困難さが増します。 穴拡げでのロングドリルや、ボア加工の自在リーマですが、それぞれもう少し長いものがあれば便利そうに思いますが、実際は、これ以上長いと極端に加工が難しくなります。 工業製品では、適した加工範囲があります。 ドリル穴あけでは、通常、金属板に穴を空け、リーマー加工では、あけられた下穴を正確な径に拡げます。 無理なく加工するためには、径と長さの比がある程度制限されます。 これに対し木管の加工では、長い穴あけが必要。 穴あけと言うより、深い穴掘りです。 穴掘りのために、通常の穴あけ用の刃物を用いるため、やや困難となってしまう加工に対して、いろいろな工夫が必要となるのです。 ところで、あなには「穴」と、「孔」があります。 前者は井戸のようなもの。 後者は貫通するもの。 木管は貫通するので「孔」が正しく、木工の専用工具として「木工穿孔旋盤」があり、「穿孔」と表現されます。 しかし、専用の「木工穿孔旋盤」の導入には大きな設備投資が必要となります。 一般の旋盤や刃物類で、木管つくりをするために、「工夫」でカバーするのです。 工夫を施すものの、少なからず困難さが伴います。 穴は「深く」て「掘り進む」と言った感じが残り、わたしは、「孔」でなく「穴」の字を用いています・・・ 【関連記事】 青字クリックで記事へジャンプします。 ●オトテール型のバロックフルートをご存知でしょうか ●オトテール・トラベルソの総象牙のフット・ジョイント ●太くてま〜るいオトテール・トラベルソのヘッド・キャップ ●左右対称のオトテール・トラベルソのバレル ●双方向の同心確保:ピンチャックの応用 ●人工と言えど、輝きは本象牙に劣りません ●木管の命、内径を「掘る」にはロングドリルが必要です ●自由自在・ユックリズムでゆきましょう |
| << 前記事(2007/11/11) | トップへ | 後記事(2007/12/01)>> |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
確かに掘り進むと言った感じです。 |
オーボエ好き 2007/11/27 22:23 |
オーボエ好きさん、こんばんは。 |
woodwind 図書館長 2007/11/28 00:26 |
鉄鋼リーマーでのリーミングは動画の様に木工旋盤上でやってます。 |
オーボエ好き 2007/11/28 10:35 |
オーボエ好きさん、情報ありがとうございます。 |
woodwind 図書館長 2007/11/28 20:37 |
上記僕のコメントの”動画の様に”は適切ではありませんでした。下記を読んでくださいm(_ _)m |
オーボエ好き 2007/11/29 19:15 |
オーボエ好きさん、よくわかりました。 |
woodwind 図書館長 2007/11/29 20:41 |
| << 前記事(2007/11/11) | トップへ | 後記事(2007/12/01)>> |