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help リーダーに追加 RSS トラベルソのピッチは室温で変わります

<<   作成日時 : 2008/03/09 11:14   >>

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画像トラベルソのピッチは、ラ音(A)で表します。 A=392Hz とか、A=415Hz など。

合奏時の音合わせの際、よく基準音に用いられるのが、オーボエのラ音(A)。

いつも いつも、A=442〜443Hz が出せるものでしょうか。

楽器のピッチは、環境により変化します。 気温、気圧、湿度・・・・など。

弦楽器では、とくに弦が伸び縮みし結果としてピッチが変わります。 ピアノやチェンバロもしかり。 木管楽器では管の中の気柱の定在波で決まるピッチで鳴るわけですから、とくに気温が問題となります。

音速とは、媒体を伝わる音の速さのこと。 その種類や状態(固体/液体/気体)、温度、気圧などにより変わります。

よく言われている音速約 340 m/s は、海面上気温での速度。 高い山頂とか、海抜の高い都市では異なり、また、温度には敏感です。

1気圧中の音速Vは、気温T℃にて、 V = 331.5 + 0.61T m/s で求められます。

演奏会場や室内を考慮し、実際的な室温に対しては次のようになります:

 ・10℃ 337.6 m/s  寒い
 ・15℃ 340.7 m/s  涼しい 
 ・20℃ 343.7 m/s  快適
 ・25℃ 346.8 m/s  少し暖かい
 ・30℃ 349.8 m/s  とても暑い

1秒間に音の波が伝わる早さ、すなわち音速は、実際に空気が流れる速さではありません。 空気の流れる速さは、風速であり、秒速 340m どころか、50m でも暴風。 空気の粒子が押し合って、押された粒子が影響する速さのことです。

楽器のピッチに戻しましょう。 ピッチは周波数で表されます。 A=415Hz とは、1秒間に 415 回振動すること。

気温20℃において、音は1秒間に 343.7m 伝わります。 343.7m の長さに、振動する山や谷の数がいくつあるか計算すると波長λが求められます。 山から谷に向かい再び山へ戻る長さのことで、A=415Hz の例では、λ=0.828m すなわち 82.8cm。

トラベルソの各音に対する気柱の実行長は、歌口と指穴(群)で決まります。 (→こちらも参照)

開管のトラベルソでは、定在波の腹と腹の長さに当たります。 振動の山から谷を経て山に戻る1波長でなく、山から山の半分。 半波長 1/2・λ と呼びます。 A=415Hz では、1/2・λ =41.4cm。 (開管/閉管は、→こちらを参照)

歌口と指穴(群)ですからに固有な物理形状です。 材質が木ですから、指穴間隔自体はそれほど気温の変化は受けません。

トラベルソでは、ラ音(A)の半波長の実行長 41.4cm を、歌口と主に第3指穴で作ります。

実際の歌口と第3指穴間の離は、30.4cm くらい。 長さに差異が認められます。

歌口からヘッドキャップ方向の仮想の点と、第三指穴から足管方向の仮想の点の、距離にして 11cm も長い 41.4cm が作り出されて A=415Hz で鳴るのです。 (仮想点や実行長については、→こちらを参照)

ここで実行長による定在波の振動数、すなわちピッチが気温により変化します。 音速の気温に対する変化によるのです。

例えば、気温 20℃で音速が 343.7m/s でも、10℃ に下がると 337.6m/s と遅くなります。

343.7m では、波長 λ=0.828m が415個入っても、337.6m では、407.8 個しか入りません。 407.8個ですから 407.8Hz となります。 7.2Hz も下がるのです。 そのほかの気温の影響も見てみましょう:

 ・10℃ 337.6 m/s -7.2Hz  408Hz -29セント
 ・15℃ 340.7 m/s -3.6Hz  411Hz -14セント  
 ・20℃ 343.7 m/s   0Hz  415Hz   0セント
 ・25℃ 346.8 m/s +3.6Hz  419Hz +14セント
 ・30℃ 349.8 m/s +7.2Hz  422Hz +29セント

こんなに変わるのであれば、木管つくりのピッチ調整段階では、室温に注意が必要ですね。

フォトは、2本のトラベルソ。 モデルは、T.Lot。 1本は、お譲り品のメンテで手元に戻ったもの。 (→こちら)

あまり冷暖房をしないわが家では、夏と冬とで室温に差があります。 手作りのピッチ測定シートには、気温と湿度を書き込むようにしています。 左上の、温度・湿度計を使っています。

ピッチが3Hzほど低めということで、測定データを見ましたが記録した室温は常温。

そこで、アンブシャーの差異によるものと判断して、その条件でピッチ再調整を施しました。

それにしても、クール・ビズなど夏でも室温 28℃ に設定して地球温暖化対策をする今日このごろ。 その場合は、トラベルソのミドルジョイント(上管)を多めに抜かないとピッチが合わなくなるかも。

また、教会など、肌寒い中での演奏場面ではピッチを高めたくなることもあるでしょう。

替え管でピッチを変えることができます(→こちらも参照)。 替え管の有用性は、こんな場面にもあるようです。

室温がトラベルソやオーボエなど木管に与える影響に対し、チェンバロなどでは逆に働きます。 固有振動数を作り出す弦が、室温上昇で伸び、結果としてピッチが下がります。

室温上昇でピッチが上がるトラベルソと下がるチェンバロ。 どちらが合わせるべきか。

チェンバロの調律し直しは大変。 演奏会場で観客により室温が上昇したとき、その都度チェンバロ調律を行うのは無理。 せいぜい休憩時間に微調整ができれば良いほう。

そこで、トラベルソでは 5Hz 刻みの替え管をいくつも用意したり、ピッチ調整リング(→こちら)を用意することも必要かも知れません・・・・


【関連記事】  青字クリックで記事にジャンプします。

トラベルソの指穴位置は、どのように決まるのでしょう
かわいらしくても、とても低い音が出ます
歌口の大きさで、実行長が変わります
連載トラベルソ:完成したバロックの風格
木管のピッチはどうやれば変わるのでしょう
バロック木管のピッチ調節リングあれこれ





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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
僕の苦手な物理ですね。
理解しなくてはと意気込んで読んでいます。

チューニングスライドが一般的でなかったということは、当時は夏冬で生じるピッチの変化をそのまま受け入れていたのかもと思いました。
オーボエ好き
2008/03/10 18:05
オーボエ好きさん、こんばんは。
●物理というよりも、理科と思ってお付き合い願います。
●欧州の気候は、「暑い」場所は多くはありません。「温暖な」地中海ですから暑くはなく、北のドイツなど一般的には厳しい気候です。イギリスで「最も暑いのは何月?」とバカな質問をしてしまったら、「暑い日!?? 暖かいならある」・・。したがって、室温も20℃でなく、15℃ぐらいが標準であったと思われます。
●チューニングスライドは18世紀の終わりごろから金属パイプにより普及し、17世紀末〜18世紀中までは、あまりないのでは。トラベルソもアマチュアの楽器でなく、ベルサイユやサンスーシなど、王室の音楽のためのものと考えると演奏場面での室温の範囲はさほど広くなかったと想像します。
woodwind 図書館長
2008/03/10 21:03
こんにちは。

ピッチを調整するのが目的の替え管は、
5Hz刻みくらいが良いのでしょうか?

ルクレー(1750年頃、パリ)のコピィで、
クラシカルな曲を吹こうと思って、
425Hzの替え管を作ってもらったのですが、
笛の先生の430Hzの多鍵フルゥトと合わせる為、
430Hzの替え管を新たに作ってもらうか、
425Hzを427Hzくらいに改造してもらうか、
いろいろ悩んでいます。

替え管が多いのは便利そうですが、
管理が大変だったり、
1本1本、クセが違ったりして大変かも。

その425Hz管も一ヶ月くらい吹いたら、
3オクタァヴ目のEも鳴らしやすくなってきました。

指使いが変わりそうですが、430Hzでもいけそうです。
わたにゃん
2008/03/11 17:08
わたにゃんさんん、お早うございます。
●ルクレールがT.Lotと同様に392Hzなど、ローピッチを基準に下管を設計している可能性があります。
●その仮定が正しければ、上管の替え管にてハイピッチにすることは無理かも。425Hzで高音から低音まで全体のイントネーションが合ったからと言って、430ができるかどうか。できたとしたら、それでは435は、・・440はどうか・・ときりがありません。
●無理がある場合、やはり上管・下管とも替え管にすること、すなわちクラシカルに合わせた設計変更が必要な可能性があると思います。それなら、最初からクラシカルを求めればよいことになりますよね。内径設計も違うのです。
woodwind 図書館長
2008/03/15 11:00
こんにちは。

1750年頃に作られたとされる、
ルクレールのオリジナルは、
オトテール商会さんの調査では、415Hzらしいです。

435Hz、440Hzとなると、
19世紀以降のピッチと言う感じですので、
取りあえず、430Hzまでは、替え管が欲しいです。

初めから、430Hzをオォダァしなかったのは、
バランス的に不安があったからです。

それから、古典派の初期の音楽に興味があるので、
過渡的な楽器を実験的に作ってみたかったのです。

ただ、425Hzでも、

1オクタァヴ目Gisが、12−123−だと異様に低く、
12−12−−で吹いたり、

2オクタァヴ目Gisが、12−1−3Kだと異様に低く、
12−1−−Kで吹いたりと、

下管が長すぎる影響(?)が出ています。

でも、高音域が楽に出るので、
モーツァルトの室内楽でも使えるようです。
わたにゃん
2008/03/18 14:18
わたにゃんさん、こんばんは。
●Gisが異様に低いとのこと。確かに、変え指を使うと変化がありますが、ルクレールの場合はそれが激しいのですか?Gisは一般的に第二オクターブで高く、12-4-6Kにすると思います。第一オクターブは、12-45-で出るのであれば問題ないと思います。運指表は、一般的なもの以外にたくさんありますよね。モデルにより異なるのですから、その中から合うものを探すこととなるのでしょうか。
●クラシカルピッチA=430Hzで先生と合わせるのであれば、425では低すぎますね。バロック・トラベルソのピッチを上げることより、最初から、クラシカルのモデルを求められてはいかがでしょう。
●関連する記事を書きました。参考にしていただきたく。
「クラシカルピッチの演奏は、クラシカル・フルートがいちばん」
http://woodwind.at.webry.info/200803/article_3.html
第二・第三オクターブが楽に吹けるのです。
woodwind 図書館長
2008/03/21 23:39
こんばんは。

ルクレーは、415Hzだと、
わりと簡単に、第3オクタァヴのF〜Aが出ます。

アルト・リコォダァの曲でも、
簡単なものなら吹けてしまいます。

それで、クラシカルでも行けるかな?
と思ったのです。

425Hzだと、415Hzより少し高音域が難しいです。
でも、Fは、何とか使えそうです。

逆に、ルクレーは、最低音域が慣らしにくく、
バロックのオリジナル曲が、けっこうツライです。

同じく415Hzのウェイネもあるので、
ルクレーの使い道を初期クラシカルに求めてみたのです。

もう少し様子を見たいと思っています。
わたにゃん
2008/03/25 18:26
ちなみに425Hzのルクレーは、
最低音域もけっこう鳴ります。

不思議です。

420Hzくらいがベストなのかも知れません。
わたにゃん
2008/03/25 18:28
それから、ルクレーは、
ウェイネより音量があります。

楽器自体もいくぶん重いようです。

オォルマイティな楽器が欲しい訳ではありませんが、
経済的にあまり余裕がなく、
持ってる楽器の有効活用を考えてしまいます。

バロゥク・オォボエもやってみたかったのですが、
最近は、フルゥト用に編曲することを考えています。
わたにゃん
2008/03/25 18:59
わたにゃんさん、こんばんは。
●ルクレールで、415では高域が鳴るのに、425のほうがかえって鳴らないのは、分かる気がします。
●R.Potterでも415で第三オクターブがOKなのに430ではそうでもありません。もちろん430はとりあえず組み合わせたものですから、内径設計が不十分だからかも知れません。
●ルクレールのベストなのが420あたりと言うのは正しいのかも・・
woodwind 図書館長
2008/03/28 22:49
こんにちは。

先日、レスンで、
モーツァルトの「カルテット ハ長調」を吹いたら、

ルクレーの425Hz管は、
かなり音程にクセがあるようです。

補正しまくって吹けなくはないが、
結局、415Hz管で吹いた方が良いと云われました。

バランス的にかなり無理があるらしいです。
右手管も作ってもらえば良くなるのかも知れませんが…。

しかし、初めに楽器が届いた時は、
最低音のDとEsが、かなり低かったので、
足部管も長めなのかも知れません。

もしかするとルクレーのオリジナルは、
415Hzの替え管のみが残っていて、
ベストな408Hz管とかが紛失した状態なのかも。

練習時間を長く取るためにも、
バランスの良い替え管が欲しいのですが、
420Hzか、410Hzか、悩むところです。

ピッチを無視すれば、ルクレーは、
クラシカルな室内楽を吹くのにピッタリなのですが…。

とにかくヘンな楽器ですが、嫌いではありません。
わたにゃん
2008/04/01 11:48
わたにゃんさん、こんばんは。
●ルクレールですが、フォトを見る限り、下管(右手管)の指穴6以降が長いですね。丁度、T.Lotほどではないにせよ、長いです。
●と言うことは、標準ピッチが低めの楽器であったのでは。フランスバロックでしたでしょうか。長い下管に対して425Hzの替え管や430Hzは無理がでてくるばかりか、本来のトラベルソの音色から外れてくると思います。ピッチさえ合えばよいのではなく、全く違ったフルートになりそうです。
●420か410かの際、合奏するピッチはいくらなのでしょう。408Hzあたりで合奏できる方たちがいらっしゃるのでしょうか。
●わたしのT.Lotエボニーのお貸出しの計画を立てます。392ですが415エボニーともバランスが良く、いずれも面白いです。415が返却されたら2本とも確かめられますか?Schuchartの第三オクターブと違って発音は楽です。
woodwind 図書館長
2008/04/02 23:06
こんばんは。

ふと気がついたのですが、高いピッチの替え管を使うと、
内径に対する管長の比が小さくなり、
内径が大きい時と同じような効果があるのでは?

ルクレーは、せめて420Hzくらいで鳴らしてみたいです。
エマヌエル・バッハやモーツァルトの室内楽では、
あり得るピッチだと思います。

ルクレーの指穴6以降は、
ウェイネより、4mmくらい長いようです。

ルクレーの415Hzおよび425Hz左手管の上のジョイントを
5mmくらい抜いて吹く実験をしてみようと思います。

合奏するピッチですが、ウェイネと合わせます。
(まだ、吹く人は未定ですが…。)

いつもは、ウェイネの410Hz管を3mmくらい抜いて、
おそらく407〜408Hzくらいで練習しています。

ポラック氏は、415Hzで最適化してるかも知れませんが、
低いピッチでも、バランス的には問題ないようです。

トーマ・ロットは、392Hzに惹かれます。
わたにゃん
2008/04/03 00:14
右手管+足部管の重さを測ってみました。

ルクレー:106g
ウェイネ:82g

ルクレーは、全長が3mmくらい長く、
本象牙もマウントされてるのですが、

それだけではなく、肉厚な印象を受けます。
わたにゃん
2008/04/03 01:33
こんにちは。

もしかすると、大バッハのソナタの超高音域は、
低いピッチの替え管を使って、出していたのでは?

実証してみたくなります♪
わたにゃん
2008/04/03 13:18
わたにゃんさん、こんばんは。
●いろんなピッチで演奏したいご様子。
●T.Lotの下管+足管を、今計りました。エボニーが102g、黄楊が93g。ルクレールで、本象牙なら、もう少しあるかと思いました。Lotは、エボニーが重く、硬い音かと思いきや、そうではなく、面白いです。
●そのT.Lotですが、392Hzエボニーのものを送りましょう。本日、2本のトラベルソが戻りました。1本はT.Lotエボニーの415Hzですが、392Hzの方に惹かれるのであれば、415HzのLotは、さらに別の方へ貸し出します。
宅配便の受取りのご都合をメールの方へください。
woodwind 図書館長
2008/04/06 00:35

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