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zoom RSS バイオレット・ウッドの甘酸っぱい香りが漂います

<<   作成日時 : 2008/03/16 22:49   >>

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画像楽器のつくり方 (91) 2008/3/16

バイオレットのオーボエをご存知でしょうか。

近年、モダン・オーボエとかコーラングレで、黒いグレナディラでなく、紫がかったバイオレットのものが流行っています。

たいていは、キーがシルバー(銀)や洋白銀でなく、ゴールド(金)メッキが施され、見た目に美しく、ハイエンド商品として扱われています。 吹奏感も、グレナディラよりやわらかい感じだそうです。

このバイオレット材ですが、バイオレット・ウッドと呼称されるローズ・ウッド種を指すようです。

フォトは、バイオレット・ウッド材で製作中のオトテールのトラベルソ頭部管。

削り出しのあと#2000のサンディング掛けをしたばかり。 オイリングはまだですが、とても美しい色と模様が魅力的。

バイオレットは、別名、キング・ウッド。

木材には、学術名(植物名)のほか、地域・国での呼び名があります。 注意が必要なことに、異なる材に同一名が使われ混乱しがちです。

誰も他の国・地域で同じ名があるかどうか意識せず、独自に名づけるために起こります。

たとえば、材の王様にふさわしいと「キング・ウッド」と名づけます。 ところが、別の地域で、王者に値するとして「キング・ウッド」と別の木に名づけます。 結果として同じ呼び名の「キング・ウッド」で異なる材が存在することとなります。

また、商業目的でのネーミングも出てきます。 その状況は林業だけでなく、漁業や農業(果樹・花を含む)などでも起きます。 (→こちらも参照)

バイオレット/キングウッドについて、すこし詳しく見てみましょう。

●フォトのブラジル・キングウッド

木工旋盤で削ると、甘酸っぱいとても良い香りが漂います。 バラ(ローズ)のように芳香性のあることから、ローズ・ウッドと呼ばれるのです。 おがくずは紫色で、バイオレットウッドとも呼ばれるのです。

 - 学術名 Dalbergia cearensis
 - 産地  ブラジル
 - 比重  1.2
 - 木理  かなり均一でまっすぐ
 - 直径  0.25 m 以下 (幹が細く、多くは取れず、高価)
 - 通称  キングウッド、バイオレットウッド

●メキシコ・キングウッド

 - 学術名 Dalbergia pacifica、Dalbergia Congestifolia 
 - 産地  メキシコ
 - 比重  1.4
 - 木理  きわめて均一で不規則
 - 直径  0.5-0.8 m
 - 通称  メキシカン、パラ Para

これら2つのキングウッドは、ローズ・ウッドの仲間です。 学術上 Dalbergia ダルベルジアで区分されます。 ダルベルジアと付くのはローズ・ウッドのこと。

逆に、ローズ・ウッドは、ローズ・ウッドと似た材の総称としても用いられます。 これが混乱のもと。 ローズ・ウッドと称しても、ダルベルジアでないものもあります。

では、ダルベルジアには、他にどのようなものがあるか見てみましょう。

●マダカスカル・ローズ・ウッド

T.Lotのトラベルソの連載記事に取り上げました。 角材の状態で概観が紫がかった褐色をしています。 (→こちらを参照)

木工旋盤で削ると、キングウッドよりはるかに強い香りがします。 わたしは、梅干のようと表現するほどで、香りが部屋中に充満します。 おがくずは紫色です。

 - 学術名 Dalbergia species 
 - 産地  マダカスカル
 - 比重  0.8-1.2
 - 木理  まっすぐや交差状で、中程度から超均一まで
 - 直径  0.5-0.8 m (高さも8-20mもあり、ギター裏板用も取れる)

●ブラック・ウッド

通称グレナディラ。 モダンのオーボエやクラリネットの材として有名。

色は黒に灰色がかった褐色の帯が混じる。 真っ黒のものが重宝がられるあまり、黒に着色されるほど。

柿の木種の黒檀(エボニー)と間違われやすいですが、ダルベルジアと付いていますから、色が黒くてもローズ・ウッドの仲間。 学術上の分類名と、装飾上の名称とでイメージが異なるものの典型。

別名、アフリカ黒檀。 アフリカ産の黒檀(エボニー)とよく混同しがち。

 - 学術名 Dalbergia melanoxylon 
 - 産地  タンザニア
 - 比重  1.2
 - 木理  まっすぐあるいは不規則、超均一
 - 直径  0.4m以下 (幹も細く、入り皮など欠陥も混じり良質部が多く取れず高価)
 - 通称  グレナディラ、アフリカ黒檀


以上は、ダルベルジア種ですが、異なる材で同一名称を持つものの例を紹介しましょう。

●パープル・ハート

ハートとは心材のこと。 木の年輪の芯を含む部分を心材と呼びます。 心材がパープル、すなわち紫色をしています。 伐採したときは褐色ですが、その後ピンクがかった紫色となります。

この材が紫色のため、通称バイオレット・ウッドと呼ばれ、キング・ウッドと混同されがちです。

 - 学術名 Peltogyne verosa 
 - 産地  ブラジル
 - 比重  0.86 (キング・ウッドよりずいぶん軽い)
 - 木理  まっすぐあるいは交差、やや均一
 - 直径  〜1.2m (高さも38-45m の大木で、フローリング床材に用いられます)
 - 通称  アマランス、Peltogyne paniculata の地方名:バイオレット・ウッド

●ブラック・ウッドと異なるブラック・ウッド

グレナディラとは異なり、こちらはオーストラリア産で、ローズ・ウッド(ダルベルジア)種ではありません。 名前が同じ。 黒色ではなく、金茶色から赤褐色に褐色の帯の模様あり。

 - 学術名 Acasia melanoxylon 
 - 産地  タスマニア
 - 比重  0.67 (グレナディラよりはるかに軽い)
 - 木理  まっすぐあるいは曲線、中程度に均一
 - 直径  1.0mほど (高さ25-30m)
 - 通称  オーストラリアン・ブラックウッド、タスマニアン・ブラックウッド

●グレナディラと異なるグレナディロ

グレナディラに似た名称で混乱しがち。 

 - 学術名 Platymiscium yucatanium 
 - 産地  メキシコ
 - 比重  0.85
 - 木理  すこし曲線か交差、中庸に均一
 - 直径  0.4-0.7m (高さ15-25m)


これまで、バロック木管に適する広葉樹を種々探してきました。 (→こちらこちらも参照) その中で、同じ名前がいくつも出てきて混乱することはなはだしい。 その経験から、今回少し整理してみました。

それにしても、バイオレット=キング・ウッドは美しい。 フォトをクリックし、拡大して木目とともに色合いをご覧ください。

削ったばかりは、小豆色。 オイリングを施すと1秒で、濃くなります。 (→こちらも参照) 時間とともに濃さは増してゆきます。 

美しいバイオレットの楽器をあなたも手にしたくなりませんか。 トラベルソのほか、バロックオーボエやクラリネットにも適用しようと思っています・・・


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
待ってましたっ!
きれいですね^^
僕のココボロ材と同じ様に見えます。
ココボロは数種類の木の総称のようで、入手する毎に少しづつ違ったりします。
オイルを塗ると、色が濃くなってきれいなのですが、半年程すると真っ黒になって木目も見えなくなってしまいます。
オーボエ好き
2008/03/17 16:17
こんにちは。

キングウッドは、重いという印象があったので、
グレナディラより、力強い音がするのかと思ってたら、
そうではなさそうですね。

総象牙のバロゥク・フルゥトを
木で復元するとしたら、
オリジナルのイメェジに近い材は何でしょうか?

装飾リングなしのグレナディラか黒檀で復元し、
元の白い楽器が、黒になるのは、面白いです。
わたにゃん
2008/03/18 18:25
わたにゃんさま、こんばんは。

キングウッドを使った事が無いので分からないのですが、”重いと強い”というように考えていました。

総象牙の笛を復元するとなると上記より、比重の近い材を選んでしまいそうです。黒檀よりはグラナディラかなぁ。。。割れにくいと言う点で。
オーボエ好き
2008/03/18 21:41
オーボエ好きさん、こんばんは。
●きれいでしょ!オーボエ好きさんのココボロも美しいですよね。確か、フルートメーカのサイトで、キングウッドを用いた頭部管があり、それがとても美しい。つや消しのオイリングか、とても深い味が出ているのです。
●ココボロは、メキシコ産でしょ。Dalbergia retusa。ただ、わたしも黄色いものと、赤っぽいものとの両方を持っています。個体差はどんなものにもあると思います。
●メンテで戻された、マダカスカル・ローズも1年経ち、大変濃くなりました。わたしのお奨めのエボニーよりも魅力的な音がするのに驚いています。
woodwind 図書館長
2008/03/18 23:16
わたにゃんさん、こんばんは。
●比較の問題ですが、グレナディラより柔らかい吹奏感だそう。自分で確かめたわけではありません。比重は、平均値では同じですが・・
●以前にも書きましたが、象牙の比重が1.7〜1.9もあります。比重だけでは決まらないとは思いますが、近いのは、@Leadwood 1.3 鉛の木の意味か、ALignum Vitae 1.23 リグナム・バイタ、極めつけは、Bグレナディラの代用品である Mgurure 1.8。
●このBは、やってみる価値あり。代用品だけあって安価。象牙に近づけるというのでなく、比重だけの効果を確かめたい。
●材質には、比重以外のファクターが多いです。どのように響くかに影響あると思います。木理(grain)ひとつとっても、木により大きく異なります。わたしのキングウッドは、詰まった感じではありません。
●詰まったと言えば、今手元にある、Desert Iron デザートアイアンは、まるで石です。大理石よりもっと石に近い。比重も相当ある。欠点は高価なこと。トラベルソ1本分の材料費が、おそらく5〜10万ぐらいか?
woodwind 図書館長
2008/03/18 23:51
オーボエ好きさん、こんばんは

やっぱり黒檀は割れやすいのでしょうか?

欲しいと思ってる440Hz(!)のバロゥク・フルゥトは、
オリジナルが総象牙で、黒檀かツゲでしか製作してくれないようです。

woodwind 図書館長さん、こんばんは。

グレナディラの代用品である Mgurure って、気になります。

安いなら試してみたいですが、
経年変化とかはどうなのでしょうか?
わたにゃん
2008/03/25 18:41
わたにゃん様>>
黒檀の割れについては伝え聞く範囲の知識です。
オーボエ好き
2008/03/28 19:22
オーボエ好きさん、わたにゃんさんこんばんは。
●Mgurureですが、わたしのカタログの比重が1.80となっていましたが、同じ会社の新しいものでは1.10となっておりどちらが正しいか。
●しかも、ネットで調べると、別名Lead woodとある。もう少し良く調べないと、この材の良さは分かりません。
●乾燥に注意が必要らしいですが、乾燥後は安定していそう。
●黒檀ですが、製作途中で、熱やひずみにより割れますが、出来上がると意外と安定。一方、オーボエやクラリネットのグレナディラですが、下手をするとピシーと言って割れると思います。
●製作家の使用する材ですが、乾燥状態の在庫がある材を用いると思います。自由に材を指定して製作を依頼したとしても、乾燥のため10年待ちの覚悟が必要かも・・
woodwind 図書館長
2008/03/28 23:00

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