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zoom RSS バロックフルート・ダモーレは、2回りも大きいのです

<<   作成日時 : 2008/06/15 15:50   >>

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画像楽器のつくり方 (94) 2008/6/15

ダモーレって言葉、ご存知でしょうか。

バロック時代のビオラ・ダモーレ、オーボエ・ダモーレ。

そしてフルート・ダモーレがあります。 仏語でFlûte de l'amour、伊語で Flauto d'amore。 ダモーレは、「愛の」の意。 したがって、「愛のフルート」ってな意味です。 (ちなみに、バロックオーボエ・ダモーレについて、→こちらを参照)

モダンのいわゆるコンサート・フルートはC管。 近年、モダンのフルート・ダモーレが流行ってきたみたい。 長二度、あるいは短3度低く、Bb管、あるいはA管と呼ばれています。 5度低いG管との中間あたり。

ところが、フルートは本来D管。 バロックのD管の足管を伸ばしてC音を足したのが始まりでしょう。 したがって、モダンフルートを、「C足管を持つD管」と呼ぶ方が本来分かりやすい。 でも歴史を遡って考えることもなく、最低音がCだから、C管と呼び習わされてるのでしょうか。

バロックのフルートダモーレですが、トラベルソD管に対し長三度低いBb管が現存します。 オクスフォード大学のベート・コレクション所蔵のステンズビーJr.のもの。

幸いにも、オリジナル楽器を展示棚のガラス越しでなく、手にして見せていただきました。 同じく手にしたトラベルソSchuchartと比べて1回り、いや2回りほどの大きさ。

「これは面白い」と思い、以来10年間、材料の欧州黄楊を寝かせてきました。 (欧州黄楊は、→こちら

フォトは、これから製作に取り掛かる材料を並べたもの。 手前は、比較のため同じロンドン製作家の Schuchart のトラベルソ(わたしのコピー→こちら)を撮影。

欧州黄楊では、長く太い材の入手が困難。 そこで、1本の材から「木取り」する代わりに、短い材の「木組み」を行いました。 「木取り」、あるいは「木組み」については、→こちらや、→こちらを参照。

木組みで重要なことは、色合わせと木目合わせ。 長く太い材の少ない手持ちからの組み合わせですから、ある程度妥協しています。

Schuchartのトラベルソと、ステンズビーJrのダモーレの比較を詳しく見てみましょう。

●内径: ずいぶん違います。

モダンフルートの円筒内径は、19mm。 対するモダンフルート・ダモーレは、21mm。 低い音域を受け持たせるため、一般に管を太くします。 メンズールによるパイプ・オルガン設計がそうです。 (関連記事は、→こちら

一方、バロックでは先細りテーパー。 頭部管、上管、下管、足管と順に細くなります。

トラベルソ頭部管は、19.6-19.8mm。 対するダモーレは、23.9mm。 この23.9mmの内径は、加工が難しくなりそう。 ダモーレ下管は最大で 18.3mmもあり、トラベルソの上管に相当するほど径が大きいのです。

●指穴間隔: それほど変わりません。

トラベルソ: 上管(左手管)指穴1−3間が74.0mm。 下管(右手管)指穴4−6間が、71.8mm。
ダモーレ:  上管(左手管)指穴1−3間が75.5mm。 下管(右手管)指穴4−6間が、76.3mm。

左手管では差が1.5mm、右手管の差は4.5o。 右手管では広く感じますが、他のトラベルソであるT.Lot(→こちら)と同程度で、思いのほか特別に広くはありません。

下の音ほど指穴間隔が広がるわけですが、人の指間隔に合わせ、拡げるにも限度があるためでしょう。 縮めるには、指穴6を5に近づけますが、そうすると指穴6が小さくなりすぎてE音が出ません。

●長さ: 材の入手、加工に違いが出てきます。

材の必要な長さを決める、各部の外側の最大寸法です。

トラベルソ: 頭部管 215.8mm、上管 200.3mm、下管 153.5mm、足管 99.7mm。
ダモーレ:  頭部管 259.5mm、上管 267.9mm、下管 190.5mm、足管 129.4mm。

トラベルソ、とくにScuchartモデルは短い材料でできます。 頭部管9インチ、上管8インチ、下管6.5インチ、足管4インチ。

ところが、ダモーレでは、木工旋盤のチャック結わえののりしろ部を含める必要があり、頭部管11.5インチ、上管11インチ、下管8インチ、足管5.5インチ。 結局、欧州黄楊の12インチクラスの入手が必要となります。

●木部太さ: やや太目の材が必要。

材の必要な太さを決める各部の外側の最大径です。 (人工)象牙マウントがあるとき、木材部は幾分か細くて済みます。

トラベルソ: 頭部管 34.1mm、上管 30.0mm、下管 30.7mm、足管 33.3mm。
ダモーレ:  頭部管 35.5mm、上管 37.3mm、下管 33.2mm、足管 38.1mm。

トラベルソでは、すべて1.5インチ(38mm)□の材で済みます。 ところがダモーレでは、1.5インチでは上管でぎりぎり。 足管で、1.75インチ(45mm)□の材が必要。

●象牙マウント径: 1クラス太い人工象牙棒が必要。

わたしは、本象牙でなくイミテーションの人工象牙材を使います(→こちらを参照)。 人工象牙マウントを施すメリットは、太い木材の入手が困難でも、マウントの分細い材で済むこと。

欧州黄楊の場合、これが結構決め手となることが多いです。 トラベルソほか、リコーダーの足管、オーボエやクラリネットのベル部でも当てはまります。

トラベルソ: 頭部管 34.1mm、上管 なし、下管 30.3mm、足管 28.3mm。
ダモーレ:  頭部管(ヘッドキャップ) 35.7mm、上管 43.0mm、下管 37.6mm、足管 33.7mm。

トラベルソでは、人工象牙の 31mmΦ、34oΦ、39oΦ のものを一般に使用します。 しかし、ダモーレでは、上管のために 、フォト最後列に見える45mmΦ が必要。

●アコースティック長: 理論どおり長くなります。

トラベルソの音響特性に影響する長さ比較のため、便宜上トラベルソにおけるAL(アコースティック長)を定義しました。 (定義の提案は、→こちら

トラベルソ: AL=421.2mm
ダモーレ:  AL=536.6mm

差は、115.4o。 ベートコレクションによると、測定ピッチは、SchuchartトラベルソがA=420Hz、ダモーレがA=415HzのBb。 ダモーレは、A=415Hz の長3度低いのですから、Bb管をD管のA音に換算すると、A=329Hz。

音速は、340.7m/秒@15℃(→こちら)ですから、定在波の半波長(1/2)λを求めると、

トラベルソ: (1/2)λ=405.6mm
ダモーレ:  (1/2)λ=517.8mm

差は、112.2mm。 ALの差、115.4oと合っています。

以上見てきました差異は、楽器つくりの上でも差異が顕著となる箇所がありそう。 したがって、トラベルソに比べてのつくり方の要点を調べながら、進めてゆきます・・・

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。

わりと手が大きいので、
ダモォレには向いてると思うのですが、

ウェイネも指穴6が少し遠く、
慣れるまで、苦労しました。

やっぱり、約400〜415Hzで、
全音低いダモォレが欲しいです。

デンナーのダモォレ替え管もありますが、
クオリティが、激しく不安です。
わたにゃん
2008/06/20 13:13
わたにゃんさん、こんばんは。
●このダモーレですが、頭部管の、刻印が、上管、下管の中心線から43度もずれています。このくらいずらさないと、吹けないのかもしれません。とんでもなく、太いトラベルソですから・・
●415Hzの全音低いものなら、トラベルソの太さで、長いものをつくれば済みそう。現に、ダモーレでも、細くて長いものもある。
woodwind 図書館長
2008/06/20 23:03

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