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zoom RSS 本紫檀:木の内に宿る美しさ現れるとき

<<   作成日時 : 2008/07/05 19:32   >>

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画像楽器のつくり方 (96) 2008/7/5

新しい木材を試し、見た目も、そして音色も美しい楽器をつくりあげる楽しみは格別です。

バロック木管に使用する材は、硬く、緻密で、そして美しい広葉樹の硬材 hard wood。

各種、硬材 のサンプルを入手し、試しに削り、比較してみました。 (→こちらを参照)

フォト奥に見えるは、30年物の「本紫檀」。 今や貴重な材。 もともとタイ産のものを本紫檀と言うみたい。 フォトのものは、ラオス産。 比重1.03。 製材し、30年ものあいだ、自然乾燥。

1・3/4インチ (45mm) 厚の板状で、30年寝かし、それを、45mm幅にカットし、45o□角材にしてもらいました。

製材所での45o厚板の保管は、片面(フォトの角材の上面)は荒プレーンがけのまま。 他の面(フォトの角材の下面)は、全面に乾燥を遅くするための蝋状材が塗られています。

角材にカットされたばかりの側面が、初めて空気に触れ、あらたな乾燥が始まります。 カット直後は、まっすぐ。 時間が経つにつれ、30年物と言えど、ほんのわずかですが反ります。 (→こちらを参照)

この角材の状態では、見た目も荒々しく、どうして、ここから美しい楽器が生まれるのか想像しがたい。

そこで、今回は、「木の内に宿る美しさ」が生まれるさまを見てみましょう。

まず、木管つくりの各プロセスを概観しておきます:

@木管の各部の所定寸法に木取りします。 「木取り」については、→こちらを参照。
A木取りした角材を丸材にします。 (→こちら
Bガイド穴をあけます。(→こちら
C次に、穴を広げソケットをつくります。(→こちら
Dそして、所定の内径にリーミング(→こちら)を施します。
Eさらに、(人工)象牙マウントを施し、外形削りに備えます。(→こちら

これらの工程(プロセス)のあいだに、できれば自然乾燥させます。 (→こちら

外形削りに備えた状態では、依然として荒々しいイメージ。

フォト手前は、本紫檀を用いて製作中の、トーマ・ロット T. Lot のトラベルソの頭部管。 外形削りの準備をして約2年間、さらに自然乾燥させています。

ここから、美しさが現れる過程を順に示しました。 奥から手前に加工してゆきます:

A:丸材

外形削りに備えたもとの丸材。 向こうから、3cm。 (内径つくりは完了)

B:外形の荒削り

次の、手前に5cmの段差まで。 ラフ・ガウジ(荒削りノミ)を用いた削り。 丸材の中心にガイド穴をあけ、内径を拡げて出来る中心は、たいていズレます。 ズレた内径を「中心にして」荒削りを行うと、同心が保てずフォトのようにゆがんで削られます。 手に持つノミに、凸凹の表面からの跳ね返りを感じます。

C:およその外形削り

次の、手前2.5cmの2番目の段差まで。 仕上げノミに代えて、径の目標寸法より2mmほど太く、マージンを持たせて削ります。 このとき、同心削りで、静かな作業。

D:仕上げ削り

2番目の段から、さらに2cm手前まで。 正確な寸法まで、仕上げノミ作業。

E:ペーパーがけ

さらに手前、3cm。 #240 からはじめ、#400、#600、#800、#1000、#1500、#2000、#3000 まで、順に細かな目のものに変え、削りから磨きに至る感触を得ます。 この状態でも、とても美しい材が現れます。 フォトでも、十分光沢があります。

F:オイル仕上げ

ピカピカ輝く部分、4cm。 #3000 のポリッシュの後、最終の姿が見えるよう、仮にフィニッシュオイリングをして撮影。 この段階で、「本紫檀」の美しさが現れます。 紫檀独特の、濃淡のある赤茶色のストライプが美しく浮かび上がりました。

G:人工象牙マウント削りと磨き

人工象牙マウントを施すには、直角出しが決め手(→こちら)。 ピッタリと平行にします。 さもなくば、木部と象牙部分との接点で、部分的に隙間が出来たりします。 人工象牙磨きは、#1500、#1800、#2400、#3200、#4800、#6000、#8000、#12000 までを使用。  (磨きは、→こちらを参照)
 
注) 実際の工程では、オイル仕上げの前に、リンシード・オイルのどぶ付けを行い、材に含浸させます。

以上、「木の内に宿る美しさが現れる」過程を、標本のようにしてみました。

標本で思い出すのは、小学校の夏休みの宿題。 わたしは、決まって「昆虫採集」。 せみ、トンボ、蝶、そしてバッタ類。 中でも、アブラゼミは、早朝に殻から抜け出てきます。 色は全体に白っぽい。 そして羽を伸ばし、透き通るような美しいまだらの羽と、黒くてまるい背を持つ成虫となります。

この、殻から反り返るようにして、まさに出てくる瞬間を標本に。 ほかの誰も、したことがない試み。

さて、30年物の本紫檀でつくる T.Lot のトラベルソ。 どんな音がするのか楽しみです・・・


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木に内に宿る美しさいろいろ
バロック木管の木材:暴れるだけ暴れさせます
木管つくりは、木取りから始めましょう
木取りした角材を、つぎは丸材にします
丸材の中心に、ガイド穴をあけましょう
ガイド穴あけの次は、内径を拡げ、ソケットをつくります
階段状のトラベルソの内径を、テーパーにします
内径が済むと、外形削りの準備をします
バロック木管つくりのプロセスと材の乾燥
象牙マウント取付けは、直角面出しがポイント
人工と言えど、輝きは本象牙に劣りません


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
タイ産本紫檀は試してみた者の滑らかな表面が得られず、唄口を切る事もできませんでした。ラオス産は画像見る限りなかなか良さそうですね。
オーボエ好き
2008/07/05 22:43
オーボエ好きさん、おはようございます。
●タイ産のほうは、サンプルでほんの少し杢理が荒かった。でも十分使えます。それよりも、どの木にも共通して個体差が大きい。
●木口を見て確かめます。板目で表面の導管は問題ではなく、また杢みたいに見える荒さの違う縞は、加工し磨くと気にならないことも多い。現にフォトの紫檀は、側面に美しい縞あり、また細かい/荒いの縞にも見えますが、結果はOK。
●個体差でしょうが、入り皮とか巣が多くてダメなものを入手した経験があります。アマゾンローズウッドでした。
●紫檀と表示あっても、インドネシアで栽培しているソノケリンだと、当然荒さも異なりますよね、木管には向いていない。
woodwind 図書館長
2008/07/06 10:39

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