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zoom RSS バロック木管のリ・リーミング

<<   作成日時 : 2008/10/26 18:57   >>

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画像リ・リーミングってご存知でしょうか。

完成の木管楽器について、再度リーミング、すなわちリーマー加工を行うこと。

トラベルソとかリコーダーなど、木管楽器のメンテナンスのひとつ。 製作家によっては、購入された楽器について、たとえば1年後など期間を定めてリ・リーミングを推奨されている方もいらっしゃいます。

それはどうしてでしょう。

リーミングは、木管の内径(ボア)を正確に作り出す工程。 これに対し、リ・リーミングが必要となる場合は、以下の3つが考えられます。

●とくに新しい楽器の使用

正確につくられたとしても、演奏するたびに多量に水分が楽器に与えられます。 そして、そのたびに乾燥を繰り返しても、楽器が水分を含み膨張し、あるいは逆に乾燥してボアに狂いが生じる。 (安定するまで、徐々に慣らさないと、急激な変化で割れが生ずることもある。)

●つくられた国・地域と、使用される国・地域との気候の差異

欧米と日本の気候の差は随分あります。 日本の気候では、木材の含水率は10数%で飽和。 それ以上に人工乾燥させても、年間の平均湿度により水分を含んでしまいます。 欧米諸国の中には、平均湿度が日本に比べて少ないところもあります。

どれくらい少ないか。 例えば米国カリフォルニア州ロサンゼルス。

「わたしが滞在した1年間、1度も雨が降らなかった」と言っても信じてもらえないでしょうが、事実です。 ホテルなど絨毯を歩き、ドアノブに手を触れると、間違いなくバチッと静電気のイタズラが起きます。

乾燥の南カリフォルニアで、十分乾燥させた木材でつくられた木管。 これを日本に輸入すると、それだけで気候の差による水分の含有率の安定点が変わってしまうのです。

モダン楽器でも同様。 フランス製のオーボエを輸入しても、それだけで、日本の気候に合わせた調整が必要となるかも。

●そもそも材の十分な乾燥がされていなかったことによる曲がり

含有率の飽和点まで十分に乾燥しないままつくられた楽器は、そのあと乾燥するにつれ全体が縮んだり、ワープ(湾曲)が起きたりします。

これらの場合、ボアが縮小、湾曲、楕円化などさまざまな狂いが生じることとなります。

使用される木材も均一ではありません。 どの部分から木取りされたかによりさまざま。 板目、柾目の違い、また指穴の面を板目とするか柾目とするかでも、狂いが生じたときの影響度が変わることでしょう。

リ・リーミングの意義は、狂いのうち、ボア縮小の箇所を元あるべき内径に削り直すこと。 指穴に影響する狂いでは、あわせて指穴調整も必要となるかも。

リ・リーミングの効果は、そのほかにもありました。

●最初から、適切にボアあけられていなかった

フォトは、オトテール型の3本継ぎ(3分割:スルーピース)のシェバリエの復元。 わたしの作品です。 (→こちらを参照)

製作してしばらく時間が経ちます。 読者のひとりの愛好家によると、「とくに最低音Dが響かない」。 わたしも確かめましたが、実際に音の出が悪く、こもった感じ。 はじめから、そうだったかどうか。

シェバリエのオリジナル楽器のピッチは、A=400Hz あたりと聴き、そのように調整しながら試行錯誤し、第一オクターブに比して、第二・第三オクターブが鳴らしにくい状況で止めていました。

この愛好家のコメントを得て、リ・リーミングを行いました。 結果は、みごとなもので、最低音Dの響きは十分。

その原因は、あとで分かりました:

@不十分な乾燥による狂い

長い材、とくに良質の欧州黄楊の確保は難しい。 そこで、数年しか乾燥させていない半丸太材(→こちらこちら)から切出しました。 おそらく、その後の乾燥で狂いが生じたのでしょう。

A長いボア加工が不十分

オトテール型トラベルソは、つくるにはあまりも長い。 (→こちら、やこちら

中部管のボア加工には、長いリーマが必要です。 市販リーマを用いてある程度の内径をつくりますが、ボアの長さに見合ったシャンク長さを持つリーマがほしくなります。

シャンクが長い市販リーマを持ち合わせず、中部管の足管近くまでは届かなかったので、リーミングが不十分だったのでしょう。 また、この狭いボアに加え、その後の乾燥で縮小もあったのでしょうか。 かなりこもった感じだったのです。

●どのように解決できたか

リ・リーミングで音が出るようになった決め手は、長いシャンクを持つへリカル・リーマ。

フォトの中部管の手前は、その長いシャンクを持つヘリカル・リーマ。 全長は、中部管の長さほど。

さらに手前には、通常のテーパー・ピン・リーマ。 シャンク長さの違いは明白。 この通常リーマの長さでは、3本継ぎ中部管のリーミング適用は不十分。

シェバリエをつくった当初、先端部分の削りが不十分だったためか、リ・リーミングを施し、合わせてこわごわ削っていた足管径も広げて、豊かな響きの最低音Dが得られました。

アコースティック長(AL)の測定(→こちらを参照)により、このシェバリエ・モデルのピッチは、A=415Hz とわかります。 実際、A=415Hz で調整できています。 A=400Hz と仮定した当初の製作では、ピッチを低く合わせがちで、狭い径のままだったのです。

●ヘリカル・リーマは、救いの神様

この頼りになるヘリカル・リーマですが、実は、読者のある方からいただいたもの。 その読者の方と知り合わなければ、存在すら知りませんでした。 その後、JIS規格工具の手持ちカタログとか、ネットでも探しても見つかっていません。

まさに運命の出会いというのでしょうか。 わたしの3本継ぎトラベルソつくりが極端に楽になり、また、つくることがますます楽しくなった気がしています・・・


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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
リーマーというと真っ直ぐな刃を想像していましたが、ドリルの様にうねっているリーマーも存在するのですね。
使用範囲の限定されたものなのかもしれません。
僕も初めて見ます。

フランス製のモダンオーボエは日本の梅雨時に上管のテノンが膨張してけずった経験があります。

Rereamingは大切ですね。作り上げるまでに3,4回はリーミングし直しています。作ってからもよく吹くのならば3ヶ月くらいのスパンでリーミングするとココボロの場合良い調子を保ってくれていました。リーミングをこまめにして1年半くらい経つと安定するようです。リーミングの必要がなくなり、調子の良い状態が長続きしています。
オーボエ好き
2008/10/27 18:50
オーボエ好きさん、こんばんは。
●モダン・オーボエの上管のテノンは、たしか金属環(部)がありませんでしたっけ?モダン・オーボエの内径は細いため、すぐに狂いそうですね。狂うと言っても、極わずかですが、パッドの高さとか、あちらこちらのネジを調整して全体をあわせるのでしょうね。さすがに、リリーミングするとしたら、総代理店での専門家によるのでしょうね。
●たしかにトラベルソなど、作ってから数年間もあちらこちら調節していますが、考えたらリリーミングもしていることにもなっていますね。
●オーボエ好きさんのように、自分でつくり、自分で演奏でき、自分でメンテし、自分でリ・リーミングでき、そして楽しめる人はすばらしいと思います。
woodwind 図書館長
2008/10/27 22:26
☆自分で一連のサイクルができるようになったので、それぞれの状態での観察をフィードバック出来るのがよいところです(^ ^)v
☆今日も最近の作品で作ってから一ヶ月たったものをリ・リーミングしました。
リ・リーミング前の症状としては、音量が小さい、必要な息の量が少ない、楽器に慣れるまでに時間がかかるというのがありました。
頭部管はさほど削れなかったのですが、チューニングスライド以下はたくさん削り屑がでました。そして吹いてみると笛全体で共鳴し、鳴り響いていこうとしているのを感じました。息の流れが良くなっているので、吹き方を変えて良いバランスを得る事ができました。
☆製作後のリ・リーミングに注意を払っている笛吹きの方ってどれくらいいるのでしょうね?
オーボエ好き
2008/10/28 20:53
オーボエ好きさん、こんにちは。
●わたしは、トラベルソのリ・リーミングしかしていません。バロック・オーボエについてはどうなのか、経験もなく、効果のほども分かりません。
●オーボエ好きさんは、作られたオーボエにつき、リ・リーミングその他のメンテナンスはどうなさっているのか、もしよろしければ教えてください。
●話は変わりますが、本記事のシェバリエのリ・リーミングにより最低音Dが出ています。ただし、以前オーボエ好きさんが指摘された、「Ebキーのスプリングの強さ」が満足でないときの息漏れによる音質劣化がまだありました。仮に輪ゴムで押さえてみると、もっとしっかりした最低音が得られていることから、スプリングの取替えが必要と感じています。
woodwind 図書館長
2008/11/03 14:24
☆バロックオーボエの場合ベルの肉厚が薄過ぎてリーマーを入れると割れてしまったことがあります。なので上下管とベルのソケットのみリーミングします。
☆クラシカルオーボエの場合はベルもリーミングできそうですが、僕の場合、ベルの内径が音に与える影響を重視しない奏法とおもわれるので上下管のリーミングとベルのソケットのリーミングをしています。ベルのソケットは思いのほか収縮するので削っておいてやらないと割れそうです。
☆ココボロ材の場合は吹く前にオリーブオイルを内径に薄く塗る程度です。掃除用の羽根を1本オイル塗布用に使っています。亜麻仁油は使っていません。
☆Ebキーのスプリングの強さも影響しますね。僕はQuantzの様にネジ止めにしているので、バネの厚みを変えるのは簡単です。息漏れが生じていなくてもバネの強さの影響があるようです。操作に困難を感じ無い程度には強い方が良い響きがすると感じています。
オーボエ好き
2008/11/04 17:24
オーボエ好きさん、こんばんは。
●オーボエ・ベルですが、専用のリーマを作られたのですか? フレア部分までと言うと、結構な直径かと思いますが、金工旋盤作業で済ませられたのでしょうか?それとも、木製に刃物を取り付ける方法でしょうか?興味あるところです。
●掃除用の専用の羽根は、水分をとるものですよね。モダン・オーボエ用の。確かに、バロック/クラシカルのオーボエ上管は細い(狭い)ので、羽根ぐらいでないと無理でしょうね。ところで、羽根だと、オイルをはじくため調子がいいのですか。わたしもやってみる価値がありそう。
●トラベルソEbキーのバネ用の材ですが、リン青銅板の厚めのものを探す必要があります。わたしは鋼板を使用していないからです。ネジ止めですか、それともリベット??でしょうか。
woodwind 図書館長
2008/11/08 23:32
☆オーボエのベルですが直径34mmまでは鉄鋼リーマーです。
☆羽はモダンオーボエ用のものです。細い棒をつかってオイルを塗るよりも簡単なので使っています。内径へのダメージも生じにくいでしょうし。
☆バネはネジ止めです。
オーボエ好き
2008/11/09 10:32
オーボエ好きさん、こんばんは。
●34oまで鋼のリーマとは驚きです。勝手な憶測かもしれませんが、鋼材を金工旋盤加工し、2ツ割りにし、シャンクをつけて、手持ちでなく旋盤に結わえ、ベル材の方を回転させているのでしょうか。
●木製リーマに金属刃取り付け方式のクラシカル時代と思われるベル用リーマをベルリン博物館でみましたが、木製リーマの方が作りやすいだろうなあと思いいます。
woodwind 図書館長
2008/11/11 23:23
☆ベル用リーマーの構造と使い方はおっしゃる通りです^^
☆作りやすいのは木製リーマーの方だと思います。作るときの効率の良さと正確な寸法の実現を考慮すると金属リーマーを選択するということになったわけです。
オーボエ好き
2008/11/16 09:13
オーボエ好きさん、お早うございます。
●そうですか、金工旋盤によるリーマつくりとのこと。市販のリーマ含め、それらリーマを木工旋盤のテール・ストックに結わえる方法で策を探しています。チャックは、最大径13mmのシャンクしか結わえられず、市販のリーマーも太い径のものはシャンクも太くてダメ。
●一方、木工旋盤のテールストックMTに結わえたチャックですが、MTとのガタがあり、加工精度が出ません。金工旋盤は、その点、精度が保てそうですが、芯間距離がとれず・・
●リーマの作業は、もっと工夫がいろいろ必要と感じています。
woodwind 図書館長
2008/11/16 11:43

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