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zoom RSS 日欧の本黄楊:横綱格の軍配はどちら 

<<   作成日時 : 2009/05/24 13:44   >>

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画像楽器のつくり方 (101) 2009/5/24

わが国の黄楊(つげ)、和黄楊をご存知でしょうか。

櫛とはんこと将棋の駒に使用されています。 色は文字通り黄色。 使うほどに飴色がかった独特の色となります。

硬く緻密な材で、はんこの印章はじめ、駒の王将、金将、飛車、角、桂馬などの文字を掘るものに適します。

和黄楊は、今や希少。 代替の中国やアジア産の黄楊、もしくは類似種の材が輸入されます。 それらと区別して名づけられる「本黄楊」の櫛は、今や高級品。 

「黄楊材」と打って検索すると、「御蔵島黄楊」と「薩摩黄楊」が現れます。 安定して良材を産出する地域が限られてきているのです。

いずれも将棋の駒として最高品質を誇ります。 駒も質により廉価なものから最高級品まで何桁もの価格差がありそう。 (→こちらも参照)

東南アジア原産のシャム黄楊も代用とされますが、こちらは名前が黄楊でも、ツゲ科でなくアカネ科の別品種。

本黄楊の「御蔵島」産を入手しました。 (木材の入手は、→こちら

御蔵島は東京都。 東京都御蔵島村。 東京から南へ200km。 三宅島と八丈島の間、伊豆七島の新島、神津島よりさらに南と言えば、だいたい想像できるでしょうか。

この御蔵島産の和黄楊と、わたしが使用している欧州黄楊を簡単に比較してみました。

フォトの左半分が和黄楊。 右半分が欧州黄楊。

●心材と辺材

黄楊 boxwood は、心材(材の中央部分)と辺材(表皮に近い部分)との区別が不明確。

紫檀、黒檀など他の材では、辺材は白っぽい黄色で、濃い色の心材とのツートンカラーの明確な対比が見られるます。 バロック木管楽器の貴重な材である黄楊ですから、表皮ぎりぎりまで使用できることは救いです。

和黄楊も欧州黄楊も、ぎりぎりまで使用する点で同じ。

●表皮

欧州黄楊の表面はガサガサ。 対する和黄楊はツルツルしたイメージ。

生息状態でガサガサしたものが、その後ガサガサ部分が剥がれたかどうかは知りません。

●色合い

御蔵島黄楊を入手したときの第一印象は、「黄色みが強い!」

これに対し欧州黄楊は、灰色がかったものや赤みが混じる薄い黄色。 個体差があり、木管をつくるとき、手持ちの短い材の中から、色合いや雰囲気が合ったものを選んで組み合わせる、木組み(→こちら)が必要。

和黄楊の場合も個体差が大きければ木組みが必要か。

●模様・杢(もく)

木目のほか、帯のような縞模様とか杢(もく)が入ります。 また節や黒い点も混じるものがあります。

欧州黄楊で種々経験したこれらのものについて、入手した和黄楊にも同様に少し含まれています。

フォトでは、和黄楊、欧州黄楊とも真ん中のものに縞模様が入っています。 赤みがかった縞ですが、欧州黄楊では灰色がかった縞も多く見られます。


●曲がり

およそ黄楊 boxwood と名のつくもの(欧州黄楊は→こちら)は、乾燥につれ収縮し、結果として曲がりや変形が起きます。(どれくらい曲がるかは、→こちら、→こちらも)

角材では、正方形の断面が菱形とか台形となります(→こちら)。 また、角材ではねじれ(ツイスト)が、丸太とか半丸太では芯のヒビが入ります。

右側の欧州黄楊の角材は、乾燥13年。 太陽光に当てなかったために曲がりは少ないものの、同時期から寝かせた他のもので大きく変形したものもあります。 (材の乾燥は、→こちら

左側の和黄楊の角材は、わずか半年の乾燥。 直角の断面が、ハッキリとわかる台形に。 そのまま木管にしていたら、いまごろ木管はグニャグニャに曲がっていたことでしょう。

「曲がらない黄楊などこの世にない」と言う点、両者は同じ。

●磨き

良質の黄楊は、とても緻密で、磨けば磨くほど美しくなります。 それは、サンディングを施してみると、手にとって分かります。

フォトの角材は、いずれも1500番のサンディングを施したもの。 表面のツルツルした感触が見て取れます。

フォトをクリックして拡大してください。 フォトでは十分伝えることが出来ないかもしれませんが。

磨きに関しては、両者はほぼ互角。

●オイリング

サンディングのあと、線引きしたところから端まで5cmにわたり、うすくオイリングを施してみました。

オイリングで材の色合いが強調されます。 フォトでは、和黄楊は黄色みが、欧州黄楊では赤みが増しました。

●比重

一般に部分乾燥材を購入した時点では含まれる水分のため比重が大きく、乾燥するにつれ比重が小さくなります。

木材の比重は乾燥したときの値。 気候風土によりいくらかの水分を残し飽和します。 わが国では、15%ほどで飽和。

木材の細胞自体の比重は1より大きく、水に沈みますが、乾燥後、細胞の空洞部分のため材全体の比重が1より小さくなるものは水に浮きます。

角材の比重を実測し、比較しました。

 欧州黄楊: 比重 0.99
 和黄楊:   比重 0.84

この欧州黄楊の角材は、ずっしりと重い。 これまで欧州黄楊では、比重0.9前後を経験しています。 個体差なのか、13年乾燥でますます緻密となったのか重い。

●木管としての音色

これは、実際につくってみて比較することが必要。

和黄楊も欧州黄楊もバロック木管の良材として、いずれも横綱格と言えるでしょう。

すばらしい音色が出ることを期待して購入した和黄楊。

ただ、乾燥させずに加工を始めると曲がりは必至。

はやる気持ちを抑え5〜10年間寝かせ、自然乾燥期間をとることとするか・・・


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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
和黄楊の笛を楽しみにしております。
オーボエ好き
2009/05/24 14:45

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