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zoom RSS 落着いた気品を醸しだす紫檀のトラベルソ

<<   作成日時 : 2009/08/08 00:16   >>

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画像楽器の書棚 (28) 2009/8/8

本紫檀でつくるトラベルソが完成しました。

30年もの本紫檀の材を購入したのが4年前。

材を安定させるために、購入後も乾燥を続け3年前に製作を開始した後も、各工程の間で乾燥させてきました。

完成してみると、それまでの苦労は何もなかったかのごとく、達成感で満たされます。

オリジナル楽器は、英国オックスフォード大学、音楽学部のベイト・コレクション(楽器博物館)に所蔵されるトマ・ロット Thomas Lot のトラベルソ。

同館長の許可を得て、実物のLotを手にとり研究をさせてもらい、またデータ図面を元に複製したわたしの作品(→こちら)を持参し、両者を比較させていただきました。

その比較方法ですが、歌口や指穴のアンダーカットの様子をスケッチしました。

実物とわたしの複製楽器の2本を平行に置き、同じ角度から見たアンダーカットのカーブを色々な角度からスケッチするのです。 こうすることで自宅に戻っても同じアンダーカットの基準(?)が出来あがります。

また、許可を得て写真撮影を行いました。(使用に関する誓約のため、そのフォトは公開できませんが。)

欧州の他の楽器博物館もいくつか見て回りましたが、このように実物を手にとって研究させてくれるところはなく、偉大な英国の心の豊かさ、懐の広さを感じました。

そのようなサービスが無償でなされ、そのことが、わたしが「バロック木管図書館」にて、情報の公開ならびに複製楽器の無償貸出サービス提供をしたいと思うきっかけとなりました。 (→こちらも参照)

その研究のうちの1本が、このトーマ・ロットのトラベルソ。

比較研究したロットモデルの第1作から数え、フォトは第8作目の作品。

第1〜3作の初期の作品では、つくり方や調整のしかたもよく分からず、ただただ夢中で挑戦。 第8作目ともなると、それらのノウハウが蓄積され、じっくりとつくることができます。

つくり、調整とも丁寧仕上げを心がけた結果、満足のゆくものを完成することができました。

フォトでは黒っぽい褐色ですが、実際は赤みがかった濃い褐色。 本紫檀の美しい独特の縞模様があります。

タイ産、ラオス産の本紫檀は今や貴重な材。 類似種を含め一般に紫檀と言われる他の材との差異は、縞模様の美しさと緻密さ。

グロス(光沢)とせず落着いたオイル仕上げ。 紫檀の持つ貴賓な雰囲気が醸しだされています。

さて、音色はどうでしょう。

リッチです。

これまでにつくった同じロットモデル同士で比較すると、マダカスカル・ローズウッド(→こちら)の方がわずかに固め。 エボニー(→こちら)と欧州黄楊(→こちら)の中間くらい。

エボニー(アフリカ産)の音色が、しっかりした中にあってなぜか「しっとり感」を持つのに対して、紫檀は、むしろ欧州黄楊に見られる「開放的な中庸の明るさ」を感じさせます。

硬材(ハード・ウッド hard wood)を材に用いるバロック木管では、「緻密なこと」が必要で、ある程度比重と関係します。 材質により音色と吹奏感に違いがあります。 その差異の尺度を決めることは難しく、便宜上、比重から比較すると、

 ・欧州黄楊         比重 0.93  いやゆる「木の音」がする中庸の明るさと響き
 ・紫檀(ラオス産)     比重 1.01  オープンでリッチな明るさ
 ・エボニー(アフリカ産) 比重 1.03  しっかり感と、しっとり感の両面を持つ
 ・マダカスカル・ローズ  比重 1.07  しっかりした硬さと落着き
 ・モパーン         比重 1.20  ダイナミックな響き:振動していることがしっかり感じ取れる

奏者により、音色や吹奏感の感じ方がずいぶん異なることでしょう。 好みにも左右され、あくまでご参考・・・


【コピー】

材質: 紫檀 ラオス産(乾燥30年以上)
     イミテーション象牙リング  洋白銀製のキー
     No.0931  A=392Hz/415Hz  重量283g (A=392Hz)

【オリジナル】  

所蔵: オックスフォード大学 音楽学部 ベイトコレクション #1139 
製作: トーマ・ロット Thomas Lot パリ 1750頃
楽器: フルート・トラベルソ 黄楊 boxwood  象牙リング 銀製のキー
     替え管現存 A=396/407/419/425Hz 全長668mm (A=396Hz)


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黄楊のT.Lotトラベルソのオリジナルの音色はいかに
活動の原点はオックスフォードにあり

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
完成おめでとうございます^ ^
Bateの図面がそのまま立体化したような出来映え、且つ新品のはずなのに、やや古さを感じるのもテクニック故なのでしょうか?
BateのLotをそのまま復元すると言う姿勢はwebで見かける製作家のサイトでは見かけたことがありません。実際にオリジナルを観察し、研究した成果がバロック木管図書館の作品に活かされ、我々はそれを体験できるのがまた素晴らしい。

どこで読んだか、紫檀と黄楊のトラベルソのセットが当時製作され、紫檀の笛は教師ようだったと言う文章を読んだことがあります。そういう用途に適している性能が出るのでしょうか?
オーボエ好き
2009/09/16 21:23
オーボエ好きさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
●ようやく完成しました。随分丁寧仕上げにこだわりました。そのように、丁寧につくることで、つくり方の見直しや姿勢の持ち方まで再度考えるよい機会となりました。
●楽器博物館のオリジナルのままを復元するのは、確かに製作家のなかでも多くはないですよね。各、図面のデータをみると、一体どれがいいのやらと誰しも迷ってしまいますからね。
●そうですか、紫檀と黄楊のセットが製作されたのですか。知りませんでした。教師用だったかどうか分かりませんが、当時は王侯のためもあったでしょうから、王様が紫檀で、教師が黄楊なのかも知れません・・
woowind 図書館長
2009/09/16 22:50

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