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zoom RSS バロック木管つくりには、実寸大の図面を用意します

<<   作成日時 : 2009/11/01 14:11   >>

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画像楽器のつくり方 (108) 2009/11/1

オリジナル楽器の復元には、図面データが欠かせません。

楽器博物館あるいは個人が所有するオリジナル楽器ですが、その寸法を計測しデータが取られたものも多く存在し、有償にて入手できるものもあります。

楽器の研究家や復元製作家により計測され、データとして図面(図と表)に記されます。 図面イメージですが、例としてわたしが計測したものを示します。(→こちら

計測者と年月日が記され、中には著名な現代の製作家も見かけます。

フォトは、英国オクスフォード大学音楽学部のベート・コレクション(楽器博物館)に所蔵のT.Lot(トーマ・ロット)のトラベルソの図面をもとに、データを実寸にて方眼紙(セクション・ペーパ)に書き直したもの。

バロック木管楽器つくりには、このような実寸大の図面があるととても便利です。

その理由は、計測データの数値を眺めているだけでは、大きさの感覚が得られず、とくに材をどのように加工すればよいかのヒントが湧かないから。

図面データに記載される内容を紹介しましょう。

楽器の種類あるいは計測者により異なりますが、以下は木管の場合:

【図】
 @ 全体のスケッチ(左右・上下対象のため半分だけの記載もあり)
 A @上に部材の記載(象牙部分の表示など)
 B @上に外径の寸法(要所のみ:詳細は【表】に記載)
 C @上に歌口や指穴の形状、寸法および基準からの位置
 D @上に歌口や指穴のアンダーカットのイメージ(曲線など)と寸法
 E @上に頭部管内のコルク位置や寸法
 F @上にソケット形状の(部分)断面図と寸法
 G @上に象牙マウントの部分断面やネジ溝の寸法
 H @上にキーの外観および取り付けピンの位置
 I @上にメーカ名や商標の刻印の位置・大きさ
 J @上に破損(ヒビ割れなど)や修復状態の記載
 K 部分のスケッチ(ヘッドキャップ、キー、ボーカル、スクリュー、マウントなど)
 L K上に寸法および部分断面による外径形状や溝、ネジ溝の寸法など)
 M K上に材質(象牙・金属)や板厚、ネジ寸法など)
【表】
 N 管の内径(基準点からの位置と寸法:90度軸をずらした値)
 O 歌口や指穴寸法(直径:縦横寸法)
 P ソケットの内径(深さと内径:90度軸をずらした値)

これらのデータは、楽器つくりに必要なものを全て含みます。 しかし、実際の木管つくりでは不十分です。

(1)内径データ

【表】にある数値の羅列からは、実際にどのように加工すればいいのか直感できません。 内径つくりにおける「階段状の穴掘り」(内径つくりは、→こちら)に使用するロング・ドリル(→こちら)径の選定ができません。

(2)リーミング

内径データの記載法ですが、計測者により異なります。 ひとつの方法は、基準点からの位置と内径値を示す方法。 もうひとつは、逆にある内径に対する基準点からの距離を示す方法。 いずれも内径イメージは湧きません。

トラベルソの中部管の内径は複雑な形状です。 (→こちらに例を示します) この形状のリーマを作ったり(→こちら)、形状に加工したりする場面では、内径をグラフ化しておき、測定しながら内径つくりをします(→こちらの記事も)。

(3)実寸大

縮尺された図面では、木管の各部の加工段階で直接にあてがうことができません。 実寸大の図面でも複写したときの精度のためか不十分です。
 
(4)ソケットや象牙マウント

ソケットの径と深さのデータから、実際に使用すべきフォースナー・ビット(→こちら)の選定ができません。 象牙マウントつくりでも同じ。

1/10mmの精度で計測されたデータ、例えば、内径24.3mmや21.7mmに対して使用ビット径は、手持ちの中から、24mmとか20mmを選びます。 いつも同じビットを選ぶのであればそれを図面に書き込むと便利。

(5)歌口や指穴あけ

基準点ですが、一般に、木管の歌口側を北(上)、足管側を南(下)として各部の端を基準とします。 真ん中で狭まる内径などでは、南北両側から計測します。 またテノンを含め端を基準点としているために、ソケットとテノンを合わせたとき現れる実長については、全長からテノン長を差し引かないと求められません。

これら基準点からの距離表示は、木管つくりではきわめて不便です。

穴あけ作業では、全長からテノン長を除いた長さを求め、またテノンを除いた端をあらたに基準点として再計算した位置を求めます。 加工のたびに計算するのでなく、図面に記入しておくと便利。

実寸大図面に指穴径を記載しておくと、必要なドリル径がすぐ分かります。 また穴の位置決めでも印を付けたものを図面に当てがって間違いがないか確認します。


●実寸大図面の実際

フォトをクリックし、現れる別のウィンドウのフォトをクリックして拡大してご欄いただくと、内径イメージや各部に使用するビット径などの付加情報が読取れます。

実寸大の図面を用意するわけですが、内径だけは尺度10倍とします。 例えば、トラベルソ中部管で15.6〜18.1mmの内径を実寸するとほとんど意味がありません。 内径に対して縦軸目盛りとして、15、16、17、18、19mmを10mm(1cm)に取り、10倍に拡大すると目で見てよく分かります。

内径のテーパーに対しては、JISの標準テーパー度である1/50の傾斜線も併せて書き込みます。

このように、もとの【図】と【表】のデータを組合せ、加工時に必要なデータを加えて利便性を高めることができます。 さらに加工ミスをなくすことができます。

方眼紙ですが、フォトのものはA3サイズ。 木管の各部に対して、A3が適します。 ファゴットなど、大型木管では、いくつかの部分に分けて、A3に記載します。

フォトは、実寸大図面にバイオレット・ウッド材のT.Lotトラベルソの各部(ラフ削りを終えたもの)をあてがうように併せて撮影。

このように実寸大図面を「参照」としながら、正しい寸法かの確認を行いながら木管つくりを進めています・・



【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

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コメント(1件)

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ニックネーム:ふくしまさんへ
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●せっかくコメントをいただいておりながら勝手な扱いですが、どうかご理解いただきたくお願い申し上げます。
woodwind 図書館長
2009/11/07 12:43

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