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zoom RSS 指穴の位置決めと穴あけの緊張感

<<   作成日時 : 2009/12/20 21:48   >>

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画像楽器のつくり方 (111)  2009/12/20

楽器つくりは、それは楽しいものです。

材料選びから調律に至るすべての工程で楽しいというより、楽器に仕上がったときの達成感がそう感じさせるのでしょう。

工程の中には、ワクワク感あり、また悩み・迷いもあります。 さらに緊張を伴う工程があります。

それは、歌口や指穴の位置決めと穴あけ工程。 今回は、その工程を紹介しましょう。

●歌口・指穴の位置と大きさ

楽器博物館などに所蔵のオリジナル楽器の計測データや図面をもとに復元しています。 計測データや図面から、基準位置からの距離と穴の開口径が読取れます。 (図面の例は、→こちら

それらの数値を勝手に変更すると、各音のピッチが変わります。 決められた数値どおりに穴あけを行うのであれば、何も悩み・迷うことなどないのではないかと思われるでしょう。

●楽器の材質で状況が変わる

楽器の材質に欧州黄楊やエボニーを用いるときは、悩むことは少なく、決められた位置にただただ穴をあけます。

ところが、木目が明確な材を用いる場合、事情が異なります。 木目の美しさが楽器の価値を高め、穴あけ位置が持つ重みが増すからです。

木目が明確な材に、ローズウッド種があります。 これまで使用したものでは、モパーン(モパーネ)、レッドランスウッド、ボコテ(メキシコ産ローズ)、マダカスカル・ローズウッド、本紫檀、そしてバイオレットウッド(ブラジル産キングウッド)。

これらの材を用いるとき、美しい木目を生かした仕上がりが思い通りとなりますようにと願う、ワクワク感を伴って始めます。

木には年輪があり、木目をつくります。

年輪のためどのように角材を切出すかにより、上下方向に平行線が現れる「柾目」とか山形模様が現れる「板目」ができます。

角材を丸い木管に仕上げても、やはり「柾目」が裏表に、また「板目」もそれらに90度ずれた裏表の面に現れます。

指穴あけの要点が、「基準点からの距離に開口径の穴をあけること」から、「木目のどの面に穴をあけるかを選ぶこと」に変わるのです。

●「木目の流れ」の確保

当初のワクワク感に対し、この選択は自由であると同時に「迷い」ともなります。

木目の活かし方ですが、長い材が入手できたときは、1本の楽器を通して「木目の流れ」を保つように木取ります。 (木取りは、→こちら。 流れを保つ木取り例は、→こちら

「木目の流れ」が連続する木取りを行っても、完成すると流れが途切れることもしばしば。

それは、木管各部を接合する「ソケット」と「テノン」のダブリ部分の長さにわたり「木目の流れ」が途切れるでしょうし、また各部の外形がそれぞれ異なるために表面に現れる「木目の流れ」が不連続となるから。

「柾目」といえど真っ直ぐな平行線でなく、斜めに流れたり、弓形に反ったりもします。 それらの不連続を含めた上で、もっとも美しいい木目の流れとなる面を選ぶことにおいて、迷い、悩むのです。

●どの面に穴をあけるか

どの面に穴をあけるかは、製作者や楽器の種類で異なります。

楽器メーカによっては、「柾目」のある面を表に、すなわち指穴をあける面にします。 説明によると、木の狂いが各音のピッチの狂いとなりにくいとされるようです。

実際に、材は十分な乾燥をせずに用いると大きく変形します。 (→こちらを参照)

ただ最も大きく狂う黄楊では、柾目と板目も不明確。 どの面に穴をあけるかで悩むことは、あまりありません。

ところが木目の明確なローズウッド種では、黄楊ほど変形せず、どの面を表にするかは、むしろ「美しさの観点での選択」となります。 

ところで、「美しさ」には定義はありません。

バイオレットウッドでは、柾目の黒っぽい平行線が美しい模様を見せる一方で、オーボエ・ダモーレなどの丸いベルに適用すると、むしろ板目による等高線がとても面白く、魅力的になります。

●奏者の眼線が大切

保管箱に木管を保管するとき、一般には、指穴のある面を上にしますから、美しく見える面を選びます。 (保管箱に入れたとき美しい杢(もく)が見える例は、→こちら

ところが楽器は使うもの。 奏者の眼から美しく見えることが、価値ある楽器として重要となります。

トラベルソを構えようとするとき、頭部管の上面から手前の側面あたりが奏者の眼に飛び込んできます。

このため、トラベルソでは、穴をあける面選びには、「構えたとき快さが伝わる」視点で行うようにします。

柾目や板目の美しさを選ぶなら、90度ごとの4つの面から単にひとつを選ぶだけではないか思われるかも知れません。 ところが実際にわずか5度でも変えると、木目の表情が大きく変わります。 現れた美しさも、逃げてしまいます。

ワクワク感を伴う当初計画の「木目の流れ」は、削ったあとの実物と対話するようにして確かめるのです。

頭部管、上管、下管、足管をつなぎ合わせ、何度も何度も、少しずつ回転させて角度を変え、現れる「楽器の表情」の中から選ぶことななります。

木管には各部がありますから、美しさについて、あっちを立てればこっちが立たず・・悩むのです。

●木目の濃さはオイリングで変わります

リンシード・オイルに漬けると瞬時に木目が浮かび上がり、濃くなります。 (→こちらも参照)

このオイリングによる濃さにより木目の表情が大きく変わります。 そのため、オイリングした木目の濃さも含めた美しい表情を見せる面を選ぶようにします。

●面決めのあとは迷わず

面を決めたら、一気に穴あけを行います。

穴あけに際し、ドリル先端が滑らないよう、先の細いポンチで印をつけます。 わたしは、木工ドリルの4mmΦの先端で、ちょこんと印を付け、基準からの正確な位置を確かめます。

穴同士の関係ですが、歌口と上管・下管の指穴を同一面に保ちます。 ただ、トラベルソ足管にはキーが付きますから、約40度内側に穴をあけます。 すなわち、元の上面を下管などの上面に合わせるのです。

同一面と言っても、すべての穴を一直線上にあける訳ではありません。 上管の第3指穴は向こう側(外側)に、また下管の第6指穴は手前側(内側)に、それぞれ1mm以内でずらせます。

こうすることで、指が届きやすくなります。 (→こちらを参照)

●指穴あけの実際

使用するドリル径は、最終の開口径より小さいものを用います。

フォトは、バイオレットウッド(ブラジル産キングウッド)で製作中の、T.Lotモデルのトラベルソ。

使用したドリル径は、第6指穴のみ4mmΦ。 それ以外は、6mmΦ。

あけた以上、元には戻りません。 選択における悩みや緊張感は、この時点で消失。


この工程の後は、決められたピッチとなるように歌口や指穴について、アンダーカットを施し、また径拡げを行います・・・


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
【訂正】 「板目」でなく→「柾目」に訂正。
どの面に穴空けるか: 楽器メーカによっては、「柾目」の面を表に、に訂正。
woodwind 図書館長
2009/12/21 22:57
美しいツヤがでてますねぇ^^
オーボエ好き
2009/12/27 10:53
オーボエ好きさん、こんにちは。
●そうですね。キング・ウッドも表面処理は難しいです。最初のオイリング(リンシード・オイル)で、削りムラが出ました。他の材では経験したことがない。
●グロス仕上げ以外にも、半ツヤ処理もあるのですが、それぞれのよさがあります。最終的には、さらにグロスとするか、半ツヤに近くするか決めますが、なにか良いヒントがありましたお願いします。
woodwind 図書館長
2009/12/27 13:53

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