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zoom RSS フルート・ダモーレ:上管の両サイドから穴をあけます

<<   作成日時 : 2010/03/21 13:29   >>

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画像楽器のつくり方 (114) 2010/3/21

フルート・ダモーレも、上管つくりまできました。

これまでの連載記事は以下のとおり:

 ●使用する材料 →こちら
 ●足管の加工  →こちら
 ●足管の実物  →こちら
 ●下管の加工  →こちら
 ●下管マウント  →こちら

普通のトラベルソとダモーレつくりの違いは、その大きさにあります。

2回りほど大きいダモーレでは、トラベルソの加工ではなかった場面に出くわします。

その場面では、これまでの道具で済ませるためには工夫が必要であったり、新しい工具・冶具を揃えなければならないこともあるでしょう。

フォトは、穴あけとソケットつくりを終えた上管と、マウント用に加工した人工象牙。 それに使用したビット、ドリルの工具類。

●長い材が必要です

上管の材は、下管と同じく12年以上も乾燥させた欧州黄楊。

頭部管もそうですが、上管には12インチ(30cm)の長い材が必要。

オリジナル楽器と同じ欧州黄楊は、一般に長い材の入手が困難。 7〜9インチであれば入手できても、同じ業者から12インチ以上を求めると見つからないことも。

角材がなければ半丸太材から取ることもできますが、歩留まりを考えるますます高価な材となってしまいます。 

加工のためのわたしの木工旋盤のチャックの結わえ径は、1インチ (25〜26mm) で固定です。 材の端 10〜15mm を、1インチまで絞った「のりしろ部分」とします。

普通のトラベルソであれば、25mm径のこの結わえ部分は、あとで径が19mmほどのテノンに加工しなおすことができ、無駄にはなりません。

でもダモーレでは、テノン径が25mmと大きく「のろしろ部分」が無駄となってしまいます。 フォト右上の端材が、切り落としたその「のりしろ部分」。

また、反対側にもこのあと述べるように結わえるためののりしろが必要で、やはり無駄部分を切り落としています。

結局、上管の仕上げ長さ 267.9mm に対し、両サイドののりしろを加えると、300mm(12インチ) の材が必要となります。

●ロングドリルの長さ不足

材に穴をあけるためには、ロングドリルが必要です。 (ロングドリルは、→こちら、加工の様子は、→こちら

普通のトラベルソでは、最長で 26cm ほどの穴あけですから、シャンク部を除いて 26cm あれば足ります。

しかしダモーレ上管の材は 30cm ですから、シャンク部を除いて 30cm ものロングドリルが必要。

フォトの手前のロングドリル類では、どれも長さが足りません。

1ランク長いクラスのロングドリルとなると長さが 45cm くらい。 ところが、それを購入するとその長さを扱える旋盤が必要となります。

一般に木工旋盤では、長さ方向の規格として「芯間距離」があり、加工できる材の長さをあらわします。 芯間距離を長くするには、ベッドと呼ぶ台を長くする必要があり、その分大きな旋盤となります。

旋盤にチャック類を装着しなければ、材の加工ができません。 (チャック類は、→こちら

主軸台(ヘッド・ストック)にチャックを装着して材を固定し回転させます。 一方、芯押し台(テール・ストック)にドリル・チャックを装着してロングドリルを結わえます。 それらチャック類が大きいと、有効な芯間距離が実質的に短くなります。
 
わたしの木工旋盤は、芯間距離が公称 24インチ(60cm)。 この旋盤では、30cm の材と 30cm のドリル装着が限度ですから、45cm のドリルを購入しても使えません。

●両サイドからの穴あけ

シャンク長さを差し引いた実質のドリル長が 26cm 以下のものを用いて、30cm 材に穴をあけるためは工夫が必要tとなります。

そこで、材の両サイドから半分ずつ加工する方法を検討します。 この方法は、西欧の伝統的なスタンド(照明器具)つくりに適用されています。

西欧の居間(リビング・ルーム)は、わがくにとは違って天井に照明がありません。 夕食後は、静かに過ごします。 読書したり語り合うため必ずソファがあり、その側には、決まって高さ 1.2〜1.4m のスタンドがあります。

スタンド支柱の中は、電灯への電源コードを通す穴が貫通しています。 この長い穴をどのようにしてあけるか?

答えは、1m もの長い材の両サイドから半分ずつあけるのです。 すると片側 50cm の加工で済みます。

この方法を木管つくりに適用できるか。

木管つくりでは、とくに「同心(同芯)」の確保が重要。 内径と外径の中心がズレることは好ましくありません。 この同心確保のために、種々の工夫をします。(同心の確保例は、→こちら

そこで、今回は以下の工夫をしました。

 @まず両サイドに、チャック結わえ部分をつくります。
 Aいずれか片方の中心を保つように材をチャックに結わえます。
  芯押し台に装着したセンターを材の中心に押し当てながら主軸台のチャックを閉めます。
 Bガイド穴あけ(→こちら)加工をせず、フォースナー・ビット(→こちら)で大きな径から穴あけを開始します。
 C適宜、径の小さなビットととっかえひっかえガイドの穴径を確保します。
 D目的の径のガイド部分に、ロングドリルを適用して必要な穴の深さまで掘ります。
 E片方の加工が済むと、材を反転させて、もう片方に対して、目的径を得るようにA〜Dを繰返します。

フォト奥の無駄部分は、このようにしてあけた後のもの。 普通の工程では、反対側からの長いドリルを到達させて得た穴は、結構ズレるのですが、今回の方法では、25mm 径のチャック結わえの真ん中に、18o 穴あけに成功しています。

両サイドからの加工では、それらが出会う中間位置で同心を確保することはできないものの、ある程度の精度が得られれば良いとしましょう。

ロングドリルは鋼鉄製ですが、曲がります。 (→こちら) それはドリル径と長さの比が大きいためです。

しかし、ダモーレ上管の内径は、18〜21oですから、この程度の太さのドリルでは曲がる量は無視できるほど小さく、実際の誤差要因はドルチャックのあそび(ぐらつく度合い)です。 

●象牙マウントとソケット部の薄さ

ソケット部の木部の厚さは 1mm ほど。 象牙マウントの厚さも、1o ほど。 とても薄いです。

両者の厚さの配分問題は、下管の場合と同じ(→こちらを参照)。

オリジナル楽器の計測データと図面を見ると、とても薄くて、テノンとソケットを不用意に合わせようとするとポキリと折れそうな気がします。

この上管では、オリジナルデータ通りでなく、わずかに太くしてみます。

●自在ビットをご存知でしょうか

フォトは、使用したフォースナー・ビットとドリル。 それに加えスペード・ビット(Dビット)の仲間での変り種の自在ビーっト。 欧州黄楊材の手前側3番目のものがそれ。

使用した自在ビットの規格は、径が 15〜25mm まで可変できるもの。

フォトをクリックし、現れたウィンドウの中のフォトをクリックして拡大してご覧ください。 拡大フォトでは、その目盛りが見えます。

目盛りは1o刻みですが、半径に対しての刻みですから、直径に直すと2倍の2mm 刻み。 したがって、目盛りは、15/17/19/21/23/25mmと読みます。

実際には、ドライバを緩めて刃を調節する際にどの位置でも設定できますから、直径 15〜25mm まで連続的に変えることができます。

ダモーレの内径は、18.5〜22mm ほど。 これに対して手持ちのビットやドリルは、18/19mm しかなく、20/21mm に対して自在ビットを使用しました。

●ビット、ドリルの紹介

@人工象牙マウントの内径削り用ビット: 1-1/4インチ(31.8mm)
Aソケットつくり用ビット: 1-1/8インチ(28.5mm), 1-1/16インチ(27mm)
B内径つくり用ビット: 1/2インチ(12.7mm), 16mm, 18mm, 19mm, 自在21mm
C内径つくり用ドリル: 16mm, 18mm, 19mm


こうして、工夫により手持ち工具類を用いて加工できました。

実際の加工に要した時間より、どうすれば加工できるかを考える時間がずっと長かったのです・・・


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
上管で30cmは長いですね。
完成した時どれくらいの重さになるのか、興味深いです。
オーボエ好き
2010/03/21 16:26
オーボエ好きさん、こんにちは。
●長いです。重量ですが、長さ、面積比率で求まる気がします。長さ1.3倍、径1.2倍だから、1.2x1.2x1.3=1.9倍くらいか。
●どんな音色になるか、今から楽しみです。
woodwind 図書館長
2010/03/22 14:07

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