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zoom RSS バロック木管の計測は、難しくはありません

<<   作成日時 : 2011/06/11 18:26   >>

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画像木管つくりには、計測図面が必要です。

バロック木管つくりは、主に、外形(外径)削りと内径削りの2つの工程によります。

外形は、見た目にも美しく、また道具として楽器を演奏する上で重量バランスが取れ、演奏しやすい形をしています。

一方、内径は、独特の形状により音響特性を決定付けます。 (複雑な内径の形状は、→こちら

これら外径と内径は、いずれも楽器の機能美にかかわる重要な役割りを担うのです。

バロック当時、木管を設計するのにコンピュータ・シミュレーションを用いることなどないでしょうから、もっぱら試行錯誤によったことでしょう。

楽器の製作家(家系)により、設計のスタートラインが違うでしょうから、それぞれの楽器(いわゆるモデル)には個性があります。

●計測図面の入手法

バロック木管ではピッチもさまざまで、標準サイズなどありません。 したがって各モデルを復元するには、外径・内径の寸法を示す図面が必要となります。

オリジナル楽器の図面が現存しないことから、オリジナル楽器を計測するほかに図面を得る方法がありません。 その方法は、つぎの3とおり。

 @ オリジナル楽器の計測: 楽器博物館や個人が所有するオリジナル楽器を計測する
 A オリジナル楽器の図面購入: @で計測した計測図面を購入する
 B コピー(復元)楽器の計測: @またはAにより復元されたコピー楽器について計測する

●同一モデルで異なる計測値

ひとつのオリジナル楽器について、複数人の製作家や研究家によって測定されることがあります。

ところがそれぞれの計測値が異なります。 これは、計測方法の違いや計測誤差が含まれるから。

一方、バロック当時の製作家は、1本でなく多数製作し、同一モデルが多数現存します。 ところが、それらを計測すると、その値が異なります。

理由は、種々あり:

 ・試行錯誤ですから、寸法は徐々に変えられた
 ・時代の要請で、求められるピッチや音色が変わった
 ・徒弟の間で継承したリーマが異なる
 ・オリジナル楽器そのものが、後世の要請により削り直された
 ・経年変化により内径などが変わった(→こちら
 ・計測者が異なり、計測方法も異なる

●計測図面の採択

代表的なモデルである、トマ・ロット(Thomas Lot)のオリジナル楽器も複数本現存します。 その寸法は、それぞれ異なり、現代の製作家がコピー(復元)するとき、一体どれを基準にするべきか迷います。

現代の製作家が、たとえばA=403Hzのオリジナル楽器をコピーするとしましょう。 そのとき2つの路線があります:

 A.オリジナル楽器の正確な復元: A=403Hz そのままの寸法で復元する
 B.現代の標準ピッチへの設計変更: A=415Hz や A=392Hz へ変更する

とくにB.において、種々の計測図面の中から、どれを採択するかで、さらに路線が増えます:

 C.どれか1つだけに基づく: わたしの場合は、英国 Bate Collection 所蔵の #1139 のみ(→こちら
 D.いくつかを参考にする: 傾向を調べて、それらの平均値を採用するなど

●計測方法

オリジナル楽器であれ、コピー楽器であれ、自分で計測するにはどうすればよいでしょう。 (→こちらも参照)

フォトは、読者の方からお借りした現代の製作家によるコピー楽器をわたしが計測した様子。

 (フォトをクリックし、現れる別のウィンドウの中のフォトをクリックすると、最大寸法で見ることができ、1mmの方眼も読取れます)

以下、すこし詳しく紹介しましょう:

★原寸大

あとで製作するとき、楽器と図面を比較するのに便利ですから原寸大の図面とします。 (→こちらも参照)

フォトは、B4サイズの方眼紙。 トラベルソでは、B4サイズ1枚に入ります。 替え管も記入する場合は、入手可能ならA3サイズの方がよいでしょう。

外形(外径)については、長さ方向と径寸法とも原寸とします。

一方、内径については、長さ方向のみ原寸。 径寸法は、原寸では読取りにくいため、10倍に拡大して記入します。 すなわち、内径の1mmに対して、方眼紙の上では10mmに対応させます。

★計測器具

計測に要求される精度により、測定器具が異なります。 内径を見るためにX線撮影もあるようです。

しかし、きわめて単純な器具でも大丈夫。

@外形(外径)測定: ノギス。 フォト下の左は、長さ100mmまで、精度1/10mmの測定が可能。

わたしは、もっぱらこれを使用。 釣りの和竿つくりのために購入し15年以上使い込んだもの。 長すぎず、右手だけで操作できる。

フォト下の右は、プラスティック製。 楽器にキズが付きにくい。 とくに楽器博物館でのオリジナル楽器の測定では、キズをつけない配慮が必要。 角が鋭利な金属製のノギスよりも適しています。 もう10年以上使っています。

このノギスでは、外径のほか、ソケット開口部の内径とか、ソケット深さも計測できます。 深さは、ノギスのテイルから飛び出す細い棒をソケット底部に届かせるようにします。 このことを利用し、ソケットつくり場面でも必須。

A内径測定: フォト下左は、内径を計測する大小2本の器具。 (小:8〜12.7mm、大:12.7〜18mm)

器具の左端には、バネにより飛び出しまた引っ込む2つのピストンが付いています。 このピストンで内径を写しとります。 フォトの大小2本の器具により、8〜19mmをカバーできますから、通常のトラベルソの内径が計れることになります。

★内径測定の実際

器具を楽器の内側に差し込み、その位置での2つのピストンの飛び出し幅、すなわち内径を写しとるためにテールについた回転ネジを操作し保持します。 保持したピストン幅をノギスで計測します。

管のどこの箇所を測定しているかは、器具を管の内側に入れる長さ(深さ)で決まります。 トラベルソの場合は、一般にテーパーが付いており、内径の大きい側の開口部から器具を入れます。

入れる量(深さ、長さ)は、基準となる開口部からの距離に対応させます。 器具を親指と人差し指でつまみ、その爪の位置を、物指しにあてればおしまい。 原寸大の図面用となる方眼紙の目盛り自体が物指しとなり、そこにあてがうだけ。

問題は、器具の長さが100mmほどしかないこと。 器具単体では、それ以上深く差し込むことができません。

そこで、フォト下の半透明のプラスティック管の棒を用意します。 この棒の内径に合わせて計測器具のテール部にテープを巻いて調節します。

プラスティック管で延長することができ、どのような深さであろうと測定が可能となります。

★内径測定の精度はいかに

わたしは、1/10mmの精度で測定します。 1/100mm精度の測定ができたところで、つくる際の精度が保てません。

親指と人差し指でつまみ、つまんだ位置を親指の爪の位置で読取るならば、長さ方向に1/10mmの精度など得られないのでは、と誰しも思うでしょう。

ところが、内径には一般にテーパーがつけられています。 フォトの例では、方眼図を見ていただくと分かりますが、上管で凵≠P/50、下管で凵≠P/43ほどのテーパー。

テーパー度合の凵≠P/50とは、深さ方向に50mm増すと、内径幅が、1mm減少(増大)するということ。

出し入れする器具の深さ方向の誤差は、内径方向に対して、わずかに1/50倍影響するだけ。

要は、長さ方向は内径より50倍も鈍感であり、いい加減な精度でよいのです。

そのようなわけで、バロック木管の計測は、それほど難しいものでないことが分かります・・・


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