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zoom RSS バロック風に切りました:木製モダン・フルート頭部管の歌口

<<   作成日時 : 2013/02/09 19:07   >>

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画像楽器のつくり方 (132) 2013/2/9

欧州黄楊の頭部管の歌口を切ってみました。

モダン・フルートの頭部管。 これをトラベルソのように木製にしたら音色や吹奏感がどうなるか。

そんな興味が湧くままに、モダン・フルートの頭部管を木製としました。 以下は、連載の記事:

‐ 頭部管の内径計測(→こちら
‐ 頭部管の創作(設計)(→こちら
‐ 頭部管の外形・内径削り(→こちら

●モダン・フルートの内径テーパ

頭部管の内径測定を行うと、製造メーカやモデルにより大きく異なりました。

なかでも内径のテーパ形状が、@線形に近いもの、A真ん中で膨らむ放物線のもの、B徐々に広がる逆放物線のもの、の3種に大別できました。

そこで、手始めに@の線形に近いものを選び、内径と外形を設計しました。

手持ちのモデルとしては、YAMAHA (FL-23) や Muramatsu (old) などが、@に近いものでした。

●モダン・フルートの外形

演奏上、発音の原理に関する頭部管パラメータとして、リッププレート形状とライザ高さがあります。

バロック・フルートのトラベルソ(traverso トラヴェルソ)では、頭部管が太く、その外形寸法と内径(ボア)の寸法の差、すなわち管の厚さが、ひとつのパラメータとなります。

トラベルソに近いもので、かつモダン・フルートの本体管に比べてあまり太くならない厚さとし、今回の設計では、4.7mmとしました。

●モダン・フルートの歌口(唄口)の形状

次に重要なパラメータとして、歌口の大きさ、形状、アンダーカットの深さ(垂直線からの角度)やカーブがあります。

モダン・フルートの唄口は、明らかにバロック・フルートのトラベルソのそれとは大きく異なります。

わたしが木製のモダン・フルート頭部管に期待することは、バロック音楽の演奏に「よりふさわしくする」こと。

それを求め、唄口の形状として、トラベルソの要素を持たせました。

●木製頭部管の趣き

フォト手前が、欧州黄楊を用いた第1号。 表面をよくご覧下さい。 (フォトをクリックし拡大してご覧下さい)

杢(もく)が見えます。

杢は、木を板に製材したとき、材の板目(いため)側でなく、柾目(まさめ)側に現れます。
(杢、柾目、板目については、→こちら

杢がこのように美しく浮かび上がる欧州黄楊(→こちら)はとても魅力的。 この美しい杢が目に入るよう、柾目が上に来るようにしています。

こうすることで、演奏の際に、目から 【木のぬくもり】 を感じることができます。

また欧州黄楊は、唇を当てたとき、とても「暖かく」感じます。

金属製(銀製、洋白製)のモダン・フルートは、これとは対照的。 とくに寒い日に、リップ・プレートに唇を当てた瞬間に「冷たく」感じます。

もちろん、これらの違いは、熱伝導率差のいたずら。

欧州黄楊では、唇からも 【木のぬくもり】 が感じられるのです。

●歌口(唄口)の切りかたの比較

フォトを、再びご覧下さい。

手前が、欧州黄楊製。 真ん中は、Muramatsu (old)。 奥は、YAMAHA (YFL-261:銀メッキ仕上げ)。

それらの歌口を比較してみましょう。

 A 欧州黄楊   12.00 x 10.70 mm  (丸い長円(楕円)) 

 B Muramatsu  12.15 x 10.25 mm  (四角に近い俵形) 

 C YAMAHA   11.70 x 10.10 mm  (標準的な俵形) 

歌口の形状を、これら長円、四角、俵形を選ぶと、アンダーカットの切り方は、それらに合わせたものとなります。

もちろん、外形(表面)が四角であり、内径(ボア)で長円(楕円)のように形状が違う組合せも考えられますが、このように違う組合せでは、まったく音にはならないでしょう。

アンダーカットですが、その様子を文章で表わすことは無理。

欧州黄楊の長円(楕円)の形状は、トーマ・ロット T.Lot のトラベルソ(→こちら)に見られます。

バロック初期の歌口は丸形で小さいもの。 それが、後期バロックからクラシカルへ移行するにつれ大きな楕円や俵形が現れました。

小さい丸の歌口では、「小さく、独特の哀しみを伝えるような音色」。

それに比べて大きな俵形では、一般に、「大きく開放感とダイナミックスを感じさせる音色」が得られます。

そこで、木製の頭部管として、バロック音楽に近づけてみるために、少し小さくて丸みを持つ長円としました。

●音色と吹奏感

頭部管を差し替えてみました。

‐ ピッチ

 Aの欧州黄楊をBやCの本体に差し替えても、もともとのB、Cと同様に A=440-443Hz に調節が可能。

‐ 音色

 Aの欧州黄楊では、やはり木の音色が感じられます。 耳からも 【木のぬくもり】 を感じ取れるのです。
 (第2オクターブ以上では、いくぶん差が少ない) 

ところで、モダン・フルートでは、音色が頭部管でほぼ決まると思っていました。 Aの欧州黄楊を種々のモダンの本体管に差し替える中、ほんのわずか本体管のモデルと材質により変わることを発見。

‐ 音量

 当然ながら、BのMuramatsu の四角ではダイナミックさがあり、Aの欧州黄楊では、やや小さい。

‐ 吹奏感

 バロック音楽では、音を長く伸ばすときに、小さな音から始めだんだん音量を増す、いわゆる真ん中で「膨らませまる」表現を用います。 この表現において、Aの欧州黄楊がトラベルソに近い。


音が出始めたばかりの欧州黄楊の頭部管。 木ですから、よく「吹き込む」と、さらに期待が持てます・・


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
遂にできましたね!
文中でも書かれているように、暖かみが伝わってきます。
先週も演奏会だったのですが、寒いホールで冷え切った頭部管を口に当てると
それだけで、気持ちがネガティブになってしまいます。
ちょうど西洋のフォーク、ナイフと塗りの椀、箸の違いみたいなものでしょうか?(笑)
最近、プロオケでも木製を使われる奏者が増えてきましたが、最高級フルートは現在のゴールドから最終的には木に回帰するのかも知れません。
しらぱぱ
2013/02/18 12:33
しらぱぱさん、こんばんは。意外とうまく出来上がりました。
●木が生き物であるから、人はぬくもりを感じます。銀のフォークは量産できますが、木は1本1本異なり、これは世界でただ1本の頭部管です。
●最高クラスのGoldフルートは、材質の特性からプロ奏者に意味があっても、愛好家にとっては、性能より「所有することの楽しみ」が勝ることも多く、その意味で、世界に1本の木の楽器に魅せられる方が増えてくるでしょうか。
●スマホは通信するための道具です。外側を美しい木でつくっても中身の電子回路の性能に差はありませんが、木のぬくもりに惹かれる所有者の「こだわり」があってもいい気がします。
●今後は、こだわりの材として、手持ちの30年寝かせた本紫檀、1本しかない貴重なインド黒檀、オーストラリア産のレッドランス、等々、魅力的な材を用い頭部管をつくってみたいと思います。
●材にこだわられるしらぱぱさんと「木の魅力」を共有でき、たいへん嬉しく思います。引続き、本ブログをご覧いただきたくお願いします。
woodwind 図書館長
2013/02/20 22:32

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