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zoom RSS 黄楊のトラベルソのように味付けしたモダン・フルート頭部管

<<   作成日時 : 2013/02/23 17:13   >>

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画像楽器の書棚 (33) 2013/2/23

欧州黄楊でつくるモダン・フルートの頭部管が完成しました。

フォト上は、通常のモダン・フルート。

これに対しフォト下は、モダン・フルート本体管に、完成した欧州黄楊製の頭部管を差したもの。

●特異なスタイル

金属製の本体に木製頭部管を差したスタイルは、このように特異と言えるでしょうか。

この特異なスタイルを見たのは、フォト左のテオバルト・ベームの著書「フルートとフルート演奏」(→文献集)に載せられたものが最初でした:

 Theobald Boehm,"THE FLUTE AND FLUTE PLAYING in Acoustical, Technical, and Artistic Aspects"

その94ページの図31に、デートン・ミラー Dayton C. Miller コレクション所蔵の、 ベーム・メントラー Boehm & Mendler フルートが見えます。

(フォトをクリックし、現れたウィンドウの中のフォトをさらにクリックすると拡大してご覧いただけます)

この図31のフォト上から1番目、4番目、8番目に特異なスタイルが見えます。

- 1番上(No.16) バス・フルート in G : A=440Hz 銀製 木製頭部管
- 4番目(No.13) フルート in C : A=445Hz 銀製 木製頭部管
- 8番目(No.9)  フルート in C : A=445Hz 銀製 木製頭部管

1番上と4番目は、木製でありながら金属製頭部管のようにリップ・プレートの形状を持ちます。 8番目は、バロック・フルートのトラベルソ(トラヴェルソ)のようにリップ・プレートを持たない形状です。

これら木製頭部管を金属製フルート本体に差したスタイルが特異に見える理由は、やや「頭でっかち」なこと。

●頭部管の外形と外径

頭でっかちの頭部管は、フルート全体のバランスが「頭部管側に重く」見えます。 外径が太く見えるからです。

しかし、通常の金属製の頭部管はトラベルソのように外径を太くするためにライザーで持ち上げリップ・プレートを付けたもの。

したがってリップ・プレート対応の「仮想の外径」は、実は木製頭部管と大きな差はありません。

そうは言っても、見た目に「頭でっかち」とならぬよう、今回の木製頭部管の外径を細めに設計しました(外形設計については、→こちら)。

ご覧のように、特異な感じは薄れています。

特異に見えない理由は、ほかにもあります。 明るい欧州黄楊を、木地のままに仕上げて見た目に軽くしたこと。

●実際の重量バランス

でも、見た目ではなく、本体管に頭部管を差したとき、楽器としての重量バランスは、演奏上たいへん重要です。 (バランスについては、→こちら

そこで、それぞれの頭部管のみについて、重量を比較しました:

- 欧州黄楊製      71g
- YAMAHA YFL-261 78g (フォト下の元の頭部管:銀メッキ仕上げ)
- Muramatsu      77g (フォト上:洋白)

金属製管の厚みは0.3mmほど。 これに対し欧州黄楊は4.5mmと厚みがありますが、金属製に比べて少し軽くなりました。

ねらいどおり、頭部管を差し替えても、重量バランスは大変良いいもので、違和感はありません。

とくに、フォト下のYAMAHA YFL-261 の本体管は、指穴が空いた「リング・キー」のタイプ。

この「リング・キー」のタイプは音つくりに指でコントロールするトラベルソとの親和性があるでしょうか。

トラベルソのような感覚が得られることから、トラベルソからモダン・フルートに持ち替える方にとって違和感なく使える気がします。

もちろん、モダン・フルートからトラベルソへ移行される方にも役立ちそうですね。

●種々の木材による頭部管

ところで欧州黄楊(比重0.93)の代わりに、他の木材で頭部管をつくるとどうなるか。

木のぬくもりを感じさせる魅力的な木材は、欧州黄楊のほかにたくさんあります(→こちら、や→こちら)。

木管の材に軽い(比重が小さな)ものを用いると、薄っぺらな音色や吹奏感しか得られません。

そこで、ある程度の比重を備えた以下のような材を選ぶと、違った味付けで魅力ある頭部管ができるでしょう:

- エボニー(黒檀:アフリカ産、インド産) 比重1.10 (製作例→こちら
- 本紫檀(タイ産、ラオス産) 比重1.03 (製作例→こちら
- モパーネ(Mopane) 比重1.20 (製作例→こちら
- レッドランス (製作例→こちらや、→こちら
- ボコテ 比重0.96 (製作例→こちら
- ローズウッド(マダカスカル) 比重1.07 (製作例→こちら
- キングウッド(バイオレット・ウッド) 比重1.20 (製作例→こちらや、→こちら
- 青黒檀 比重1.35
- 和黄楊 比重0.75
- シャム柿 比重1.01
- 栴檀(せんだん) 比重0.99
- グラナディラ(ブラック・ウッド) 比重1.20


種々の味付けされた頭部管、いろいろ差し替えてみても面白いと思いませんか・・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

文献集
創作も楽しいものです:モダン・フルートの頭部管
トラベルソはどこでバランスがとれるでしょう(その2)
黄楊材の魅力いろいろ
木の内に宿る美しさいろいろ
ベルサイユピッチの落ち着いたトラベルソの音色
世界にただ1本:あやしい模様の赤いトラベルソ
キーがひとつのクラシカルフルート
落ち着いた気品を醸しだす紫檀のトラベルソ
モパーネのT.Lot:とても安定感があります
ボコテのG.A.Rottenburghも珍しいといえるでしょうか
連載トラベルソ:完成したバロックの風格
バイオレット・ウッドのオトテール・トラベルソの響き
王室御用達のT.Lotにどこまでも近づけたい


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
本体部との連続性に気遣われたようですが、この逆のパターン(頭部管金属+本体木製)はピッコロによく見られます。
「特異性」というよりは”見慣れ”の問題かも知れませんね。
でも、金属よりも軽く仕上がっているというのは驚きです。
ならば、もっと比重の大きな材でもバランスは取れるということでしょうか?
音量、倍音など、どうなんでしょうか?更に興味が増してきました。
しらぱぱ
2013/02/28 12:48
しらぱぱさま、こんにちは。
●うーーーーーーん、そのとおりですね。ピッコロは、逆パターンですね。たしかに”見慣れ”の問題かも知れません。
●比重1.2でも、バランス上、問題ないと思います。よくご存知のように、バランスは、全体重量でなくフルート重心からのモーメントで決まります。だから、軽すぎる場合は、キャップ側におもりのようなものを少し加えるだけでOKと思います。
●音量はともかく、倍音については、わたしは聞き分けられるほどの能力を持たず、愛好家のみなさまに評価していただくことが一番。
●今は準備中ですが、もう少し調整し、貸し出しを可能とする計画です。比較用に2〜3種の材でつくり、好きな音色や吹奏感を比較評価していただくことを考えています。その節は、よろしく。
woodwind 図書館長
2013/03/02 13:25
是非、いちど吹かせてください。
自分も早く製作に取り掛かりたいところですが、あとわずかとは言え現役な
ために、構想ばかりで実が伴いません。
それでもバイトを5種類と研磨の治具は買い揃えました。
次は、メインの旋盤ということで物色中です。
あれよあれよと言うまに円安で焦っていますが、放置することに
なりそうなので、いましばらく情報収集に徹します(笑)
また、いろいろとご指導宜しくお願いいたします。
しらぱぱ
2013/03/05 12:32

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