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zoom RSS オーボエ・チューブのテーパー度合いで高・低音域の相対間隔が変わります

<<   作成日時 : 2013/06/10 18:21   >>

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画像楽器のつくり方 (138) 2013/6/10

連載のローピッチのバロック・オーボエつくりも、いよいよ調整ステップです。

そのベル長、あるいは全長からローピッチのオーボエと想定していました。 (ベル長の比較は、→こちら、また各部の比率は、→こちら

●バロック・オーボエのピッチ

国・地域により、また時期とともに木管のピッチ変わりますが、バロック・オーボエのピッチもしかり。 (→こちら

楽器博物館に所蔵される、あるいは個人が所有されるオリジナルのバロック・オーボエが少なからず現存します。

問題は、そのオリジナルのオーボエと併せたリード(チューブ含む)の現存が極めて少ないこと。  リードは、消耗品だからでしょう。

また、バロック・オーボエでは、外形のほか内径設計がさまざま。

個々のオリジナル楽器に合うリードやチューブの形状や寸法については、当時のオーボエ所持者が知っていたにせよ、250〜300年も経った今では想定(想像)するしかありません。

想定は、試行錯誤によります。 実際にリードとチューブをつくり、最もバランス良く鳴るものを探し当てる作業となります。(リード/チューブ/ボーカルについては、→こちらや、→こちらも参照)

最もよく鳴るリードやチューブを探し当てたとしても、それによって得られるピッチが、現代において合奏の便宜を図るために提唱された「バロックピッチA=415Hz」とか、「フレンチピッチA=392Hz」であるとは限りません。

むしろ、それ以外のピッチの方が多いでしょうか。

●リードとチューブの寸法パラメータ

試行錯誤でつくるといっても、寸法パラメータの組合せは無数にあります。

チューブのほかケーンの厚さや仕上がり幅、チューブとあわせた全長もあり、さらに奏者のアンブシャーやスクレーピングのタイプも人によりさまざま。 

●チューブのパラメータ

オーボエ本体とならび、各音のピッチについて重要なのはチューブ。

チューブ(ステイプル)に関し参考にすべき記事があります。 ブルース・ヘインズ Bruce Haynes の「バロック・オーボエのリードつくり」 "Baroque Oboe Reed-making" からチューブ(ステイプル)の設計を参照します。

ヘインズによれば、重要パラメータは次の5つ:

 @トップの直径(内径)
 A相対円錐度(テーパー度合い)
 B上管より上に飛び出る長さ
 Cボトムの直径(内径)
 Dチューブ全長

このうち@〜Bが能動パラメータ。 これに対して、CDは、@〜Bが決まると自ずと決まる受動パラメータ。

●リードの他のパラメータとの関係

チューブ外形寸法は、チューブ材の厚さで変わります。 同じボトム内径6.0mmに対し、厚さが0.4mmなら外形は6.8mm径。 厚さが0.3mmなら6.6mm径となるように。

バロック・オーボエでは、ウェル(井戸)の形状が、オーボエ本体の最小内径(I.H.Rottenburghの場合6.4mm)に向って絞り込まれ、チューブのボトム内径と合わせるようになっています。

ところで、チューブはウェルに挿せるだけ挿せば良いものでしょうか。

ブルース・ヘインズが述べているように、Bの上管から飛び出た長さが、ピッチを決める能動パラメータとして重要です。

@のトップ直径(内径)とAのテーパー度で決まるチューブをつくり、Bの長さとなるようにウェルに差し込んだとき、ぶつかってしまうチューブの底の部分をカットしたとします。

チューブの厚みによりぶつかり度合いも変わりますから、Dのチューブの全長は受動パラメータであり、「結果として」決まります。

一方、モダン・オーボエでは、「ウェルの径と深さが規格化され、コルクを巻いたチューブを」用いて、ケーンを付けた全長を一定にします。

飛び出たチューブ長が一定で、仕上ったリードのピッチも標準ピッチのA=440Hz(実際にはA=442Hzあたり)が得られます。

バロック・オーボエでは、オリジナル楽器の内径設計がそれぞれ異なることから、モダン・オーボエとずいぶん事情が異なります。

また、バロック・オーボエでは、チューブとウェルとの間で息漏れがないように、ウェルに合わせて糸を巻きますが、チューブの厚みの分、ウェルの壁とチューブの間には、隙間が存在します。

●テーパー度合いと高・低音域の相対間隔

Aの相対円錐度すなわチューブ内径のテーパー度合い(厚み一定なら外形のテーパー度合いも同じ)は、高音と低音の音域間隔を決める能動パラメータとして重要です。

テーパー度合いを変えると、音域間隔が変わるのです。

テーパー度合いとは、チューブの長さ方向に対する内径の変化をいいます。 たとえば、チューブ長50mmに対して、トップとボトムでの内径の差が2mmのものは、1mmのものよりテーパー度がきつい。

ここで、低音域(ローレジスタ)に対し、高音域(ハイレジスタ)の方が相対的に低かったとします。 このとき、テーパー度合いをきつくすることで、高音域を相対的に高くできます。

逆もしかり。 高音域が高いときは、テーパー度合いをゆるくすることで想定的に低くできます。

このことは、テーパーの先端絞りの効果が、より高域の音に対し敏感だからでしょうか。

●ローピッチのオーボエの実測

フォトは、連載の I.H.Rottenburgh オーボエのピッチ測定値。 方眼紙の縦軸中心を、A=392Hzとしています。
(フォトをクリックし拡大してご覧下さい。)

第1、第2オクターブにわたりほぼフラット。 A=392Hz のローピッチ(フレンチピッチ)。 

ここで用いたリードは、市販(メック社製)のA=415Hzのバロック・オーボエのために20数年も前につくったもの。 種々の寸法の自作チューブにケーンを付けたリードから選びました。

ケーンを外してみなければ自作チューブ自体のパラメータ@Aは分かりません。 外形から分かる範囲の寸法パラメータは:

 ・B飛び出たチューブの長さ 39.5mm
 ・Cチューブ・ボトム内径 5.3mm
 ・Dチューブ長 58.5mm
 ・ チューブ・ボトム外径 6.1mm
 ・ ウェルに挿した長さ 19mm
 ・ 飛び出たリード長 65mm
 ・ リード全長 84mm
 ・ ケーン幅 9.0mm

●更なる試行錯誤

実際に、このチューブとリードを用いて J.S.BachのBWV156 からシンフォニアを吹いてみました。

すると第2オクターブでの響きが少し細く、これを改善するために、@のチューブ・トップ直径(内径)をわずかに狭める価値がありそう。

そのとき、オクターブの間隔についてバランスが良い現状を保つためにAテーパー度合いをそのままに、またA=392Hzのピッチを維持するためにBの飛び出るチューブ長さも同じ値とします。

ウェルの深さ25mmに対し、現リードの実際に挿された長さは19mm。 6mmの余裕があります。

ウェルに挿す部分を延長するとチューブ・ボトム内径も増えますが、上管の最小内径の6.4mmまで拡げることができます。

これらチューブの改善と、ウェル壁との隙間に注視した巻き糸調整により、さらに良いチューブとリードの寸法を見つけてまいります・・・


【お詫び】

先の甲府での古楽フェスティバル楽器展示会で、製作途中のこのバロック・オーボエを展示しました。(→こちら

使用したリードは、他モデル用のためオクターブ間隔が相対的に拡がったもので、また巻き糸のリークも少しあり、
発音しにくい音がありました。

このような状況で、ご協力・ご試奏していただいた皆さまにご迷惑をおかけしました。


【関連記事】  青字クリックで記事にジャンプします。

ローピッチでしょうか、オーボエ・ベルの比較
バロックオーボエ:「黄金率の不思議」
木管のピッチはどうやれば変わるのでしょう
オーボエダモーレ:ピッチはリードで決まる
オーボエダモーレ:リードによるピッチ調整はいかに
楽器展示会プレゼン@古楽フェスティヴァル<山梨>

 

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