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zoom RSS バロック・オーボエ:欧州黄楊材のひと揃え

<<   作成日時 : 2013/06/30 00:49   >>

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画像楽器のつくり方 (139) 2013/6/30

バロック・オーボエをつくってみましょう。

これまでに、

 − クラシカル・オーボエ (→こちら
 − バロック・テナーオーボエ (→こちら
 − バロック・オーボエダモーレ (→こちら
 − ローピッチのバロック・オーボエ (→こちら

をつくってきました。

しかし、A=415Hzの標準のバロック・ピッチのオーボエについては、楽器博物館などに所蔵される種々のモデルを検討したものの、つくりたいモデルが多く、復元できていません。

そこで、当時のごとく欧州黄楊を用いた標準的なオーボエの復元を試みます。

●標準的なバロック・オーボエの長さの比:黄金率

バロック・オーボエは、上管、下管、ベルの3つから構成されます。

それらの長さの比率は、申し合わせたように、5 : 5 : 3.1。 上管と下管の長さは(ほぼ)同じ。 それらとベルの長さの比が、 (1+ √5) /2 : 1 (近似値では、 1.618 : 1)の黄金率となっているようです。(→こちらを参照)

たとえば、Paulhahnのオーボエでは、各部の長さと、(比率)は以下となっています:

 − 上管  233.5mm  (4.94)
 − 下管  236.5mm  (5.00)
 − ベル  154.0mm  (3.25)

●確保すべき材の長さ

完成時の各部の長さに加工時のマージンを加えた長さの材を入手することが必要となります。

マージンとは、木工旋盤のチャック結わえ部分とか加工時の余裕分。

 − 上管 9.19 インチ (マージン含め、9.5 インチ)
 − 下管 9.31 インチ (マージン含め、10 インチ)
 − ベル 6.06 インチ (マージン含め、6.5 インチ)
       径 56.4mm 2.22 インチ (マージン含め、2.5 インチ)

上管と下管の材の長さは、トラベルソと比べて少し長く、またベルは、径が各段に大きいことが特徴。

必要材の寸法制限から、バロック・オーボエつくりでは、材の入手が要点。

●貴重な欧州黄楊材

黄楊は、緻密で硬く、とても魅力的な硬材。 色や木肌の表情に気品があり、また木管楽器として音色や吹奏感がすぐれています。 (各種、黄楊材の魅力は、→こちらや、→こちら

ところで本黄楊と呼ばれる材の入手が困難となってきています。

よく詰まった黄楊材の年輪を0.1oと仮定すると、幹が太さ20cmに育つのに100年掛かります。 この間、伐採が続くようでは枯渇してしまいます。

黄楊は広葉樹で、陽の光を求め、枝を四方に伸ばします。 まっすぐ上に伸びる針葉樹と異なり、ぐねぐねと曲がるため、長い材が取れません。

長い材が取れても、径の太さが確保できません。 したがって、

 □1.5〜2 インチ (38〜50mm)で、長さ12〜14 インチ(30〜36cm)
 □2.5〜3 インチ (64〜75mm)で、長さ6〜8 インチ (150〜200mm)

が実際的な上限となり、普通はこれ以下となります。

径が、たとえ20cmの丸太でも、芯を含むとひび割れますから、芯を外して製材し、半丸材から木取ります。 (→こちらも参照)

半径10cmあっても、最大の角材は、1/√2=0.701倍の7cm□となります。 実際には、丸太の表皮部分のカーブを含めるようにして1cmでも大きく木取りますので、8cm□くらいでしょう。

大きな材が取れる、たとえばブビンガ(→こちら)と異なり、貴重です。

このような状況において、黄楊の代替材も使われます。 ことに商業上の理由から、黄楊の種でなくても、「黄楊:Boxwood」を付した呼称をつけて出回ります。

●確保した欧州黄楊材

フォトは、バロック・オーボエ用の欧州黄楊。 すべてフランス産の良品。

英国滞在時、ロンドンから車を飛ばしてヨークシャー州の木材店に出向いて入手。 管理ラベルに記した日付は、1998年6月1日。 それ以後、15年間、自然乾燥し寝かせてきました。
(バロック木管の木材の入手先については、→こちらを参照)

バロック・オーボエつくりのために、□1.5 X 10 インチと、ベル用の□2.5 X 6.5 インチ材の希望数量を問い合わせるも返事がもらえず、こちらから押しかけました。

いや、驚きました! 欧州黄楊と、エボニー1級品の在庫が大型倉庫の中に甚大な量ありました。

問い合わせた1.5 X 12 インチ材とベル材のほかトラベルソ用の1.5 X 9インチ材について、わたしのために並べてありました。

見ると、その他にも、サイズが異なるものも多数並べられており、それらも追加購入。 車のトランクに、欧州黄楊とエボニー1級品を可能な限り詰め込み、嬉々として持ち帰ったことを思い出します。

●ぎりぎりの寸法材の利用

@ベル材 (長さ154mm)

フォト奥は、ベル材。 奥の右側は、2.5 X 6.5 インチの角材。 

これに対して、奥の左側は、わずかに短い、2.5 X 6 インチものを丸材にしたもの。 公称6インチ(152.4mm)ですが、実測は156mm。 ベルの仕上げ寸法154mmに対し、2mmの余裕あり。 加工時に工夫することにし、これを用います。

A下管用の材 (長さ236.5mm)

フォト奥から2段目の角材は、長さ12インチ。 オーボエ材として十分な長さがあり、もったいないので、今回、これは用いません。

フォト奥から3段目の角材は、長さ9インチ。 公称9インチ(228.6mm)ですが、実測は、237mm程度。 余裕0.5mm。

そこで、公称9インチに、加工時に必要なチャック結わえ部を別途、端材のものを「継ぎ足す」こととし、加工の工程ののち切り落とすことを考えます。

フォト奥から4段目の材が、9インチの角材を丸材にしたものに「継ぎ足し」部分を接着したもの。

B上管用の材 (長さ233.5mm)

フォトの手前の2段は、以前に、オーボエ・ダモーレ用に半丸太から木取りした2本。 実際には、半丸太は真っ直ぐでなくグネグネしており、使える部分を削り出したもの。

これでは、ダモーレ用には使用できず、そのまま余まっていました。(→こちらを参照)

そこで、ダモーレ用には使用できないものの、この形状から、バロック・オーボエに使えないかと検討すると、上管に適用できることが分かりました。

長さは十分にあり、チャック結わえ部分も確保して、内径あけの加工を終えたもの。 長さ233.5mm。


仕上げ寸法に対してぎりぎりの、これら貴重な欧州黄楊材を、加工時にて工夫(加工法と段取り)をすることで生かして参ります。

この工夫により加工できれば、トラベルソ用に確保した9インチ材でも、オーボエ材に転用できます。

すると、オーボエ用に確保した12インチ材を、オーボエ・ダモーレ用に残しておくこともできそう・・



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