バロック木管図書館 woodwind

アクセスカウンタ

zoom RSS バロック・オーボエ:細密な装飾を欧州黄楊に施します

<<   作成日時 : 2013/07/19 23:43   >>

トラックバック 0 / コメント 0

画像楽器のつくり方 (142) 2013/7/19

欧州黄楊は、木理が緻密で硬い良材。

東洋の仏像や西洋の宗教像に、手のひらに入るほどの小さな作品の隅々に至り細密な彫刻が施されたものを見受けます。

立体の細い線が伸び、もし彫刻刀を持つ手が滑ったら作品が台無しになったと想像します。

滑らかな木目と魅力ある黄色とあいまって、作品から強い感銘を受けます。

●黄楊材の特性

このような作品で、硬い黄楊に細密な彫刻を施すことは大変。 一方、細密加工に耐えられる黄楊材自体が、緻密で硬く等方向性を有することを証明しています。

もし柔らかい材(軟材)に刃を当てたとしたらどうでしょう。 刃の圧力に対して、材自身で踏ん張ることができなければ、バリバリと割れ、彫刻にならず。

一般に、木理の荒い軟材のカンナを掛けでは、順目で行うべきところ、逆目では表面に刃が引っかかり段々ができてしまいます。

黄楊材は、順目も逆目も感じないほど縦・横・斜め等方向に均一な材です。

●バロック・オーボエの装飾

バロックとは、ごてごてと飾り立てる様式。

木管楽器もしかり。 それまでのルネッサンス様式がシンプルなのに対してバロック様式は装飾性が際立ち、そしてクラシカル(古典)以降で、なだらかな曲線のシンプルな様式に戻ります。

バロック・オーボエの外形について見ても、その様式が、国・地域とか年代により異なります。

ブルース・ヘインズ Bruce Haynes は、彼の著「精説オーボエ」 "THE ELEQUENT OBOE"(→こちらも参照) の中で、各種オーボエの外形タイプを分類しています(pp.65−89)。

標準と呼ばれるタイプA2に分類されるものには、この連載のPaulhahnや、先の連載のRottenburgh Sr.(イメージは、→こちら)があります。

タイプA2では、ビーズ beading (丸い膨らみ)が多く施され、下管の最上部やベル最上部にあるバラスタ(手すり子) baluster には、入り込んだ曲線が、また頂華(ちょうげ:リードをくわえて支える形をした3.5cmほどの部分)には、幾重ものリングも見られます。

外形の様式を言葉で表すことは難しく、pp.66−67の図2.1−2.3には、各部の名称と様式の図解が載っています。

同様に、バロック・オーボエ外形の各部の名称と装飾様式について図解したものに、

「17世紀・18世紀オランダのダブルリード楽器」 "DUTCH DOUBLE REED INSTRUMENTS OF THE 17TH AND 18TH CENTRURIES"(p.56)があります。

これら図解から各部の構成と装飾の様式が一目瞭然。 (これらの文献は、→文献集。)

●P.Paulhahnバロック・オーボエの外形削り

フォトは、連載のPaulhahnのバロック・オーボエの上管と下管。

この連載では、欧州黄楊材のひと揃え(→こちら)の中から、ぎりぎりの寸法材の加工を試みています。

フォト手前が上管。 以前に半丸太から木取りしたときに余っていたものを利用。 問題なく内径の加工を終了。

フォト奥は、下管。 9インチのマージンゼロの材に加工に必要なチャック結わえを付け足しました。

穴掘り加工(→こちら)後に、足した部分を切り落として後工程を継続させることにより、問題なく、北(上)側と南(下)側の双方向からの内径加工を終えました。

そのあと、上管、下管のいずれにも外形削り、および装飾削りを施しています。 さらにサンディング(#240−#12000)を施し、大理石や象牙のように光沢を放っています。

外形削りを終えた黄楊のオーボエ・ダモーレの例も参考までに、→こちらをご覧下さい。

●細密な装飾

バロック様式の装飾には、細密加工を要します。

フォトをクリックして、拡大して細密な様子をご覧下さい。

幾重にも重なるリング1段の厚さ(段差)は、片側(半径で)0.15〜0.25、両側(直径で)0.3〜0.5mmほど。

ビーズ bead は、大小さまざまですが、最小のものの幅はわずか0.4mm。

そのほか、細い溝や各段の面取りなど、装飾部分を細密に表現しています。

●黄楊の気品ある滑らかさ

オーボエの美しい姿は、とくにフォト手前の上管のバラスタ(手すり子)の滑らかな曲線に見えます。

上管のバラスタは、オニオン(玉ねぎ)の形。 オニオン形ですが、製作家で異なるほか、クラシカルへの移行では、「逆さオニオン」として特徴付けられています。
(移行期と見られるクラシカルオーボエの逆さオニオンは、→こちら。)

バラスタの流れるような曲線と、ビーズ beading 、重なりあうリングがあいまって美しい装飾となって現れます。


細密に装飾が施された美しい曲線を持つオーボエ。 気品が漂う黄楊の木地の滑らかさ。 手にするととてもリッチな気分に浸れます。

魅力的な音の根源といえるでしょうか・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

バロック木管つくりの本があるのですか
●参考文献→文献集
バロック・オーボエ:欧州黄楊材のひと揃え
オーボエの容姿が現れてきました
バロック・オーボエ:結わえ部を付加して黄楊材を加工
オーボエ・ダモーレ:飾りの多い外形削り
木目も美しいオニオンのついたオーボエ

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
バロック・オーボエ:細密な装飾を欧州黄楊に施します バロック木管図書館 woodwind/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる