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zoom RSS バロック・オーボエ:きわめて安定したP.Paulhahnモデルの調律

<<   作成日時 : 2015/10/18 16:24   >>

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画像楽器のつくり方 (178) 2015/10/18

いよいよ完成に近づいたP.Paulhahnオーボエつくりの連載です。

すべてのキー取付けが終る(→こちら)と、ピッチの調律を行います。

このモデルはなかなか魅力的。 少なくとも作る側からは、そう言えます。

●きわめて安定したモデル

フォトをご覧ください。

P.Paulhanhnオーボエのピッチ測定をした結果です。 (1本目の場合の測定途中のデータは、→こちら

 (フォトをクリックして現れるウィンドウをさらにクリックし、拡大してご覧いただくと方眼紙の詳細を読み取ることができます。)

A=415Hzを中心に+−100セントの差異を縦軸に取り、横軸に最低音Cから始め、2オクターブにわたる半音階の各音をとっています。

半音は100セントですから、中心から上方いっぱいずれて、半音高く、下方いっぱいにずれると、半音低くなります。

フォトに示すように、A=415Hzからのピッチずれは全音域でほとんどなく安定しています。 (2002年にオーボエ製作を開始して以来はじめてのすばらしい調律データが得られました)

調律した結果ではありますが、そもそも調律が難しいモデルが存在することから、このP.Paulhahnモデルが安定してすばらしいことが分かります。

これは、もともとの内径設計と指穴および各音孔設計に依存していると考えられます。

●オリジナル楽器の内径設計

バロック木管楽器の内径を測定すると、それぞれの楽器で内径設計がさまざまであることに気づきます。

この理由のひとつに、バロック木管ではキーの数が少なく、基本は、左右の手の指で開閉する6つの指穴位置の設計と関連した内径設計に大きく依存するから。

指穴間隔は、人の手の大きさから最大値が決まり、指穴を理想的な位置にあけることができず、指を広げたとき無理ない位置に決められます。

この位置の指穴径自体理想値にはできず、たとえば小さくして等価的に遠くにあるように見せます。

指穴位置と、指穴径の組み合わせは無数ですから、楽器製作者の設計思想により変わるのです。

●オーボエの特異性

オーボエの音色を作り出しているのは内径。 リード、上管、下管とベルに至るまで、徐々に広がるテーパー状をなしています。

ここでモダン・オーボエと異なり、理想の指穴位置が開けられないバロック・オーボエでは、テーパー度合いを途中で変えています。

上管と下管の接合付近では、内径はほぼ一定。 すなわち円筒状。 またこの円筒の形状は、下管とベルの接合個所でも現れます。

ベルに向かって内径が広がるオーボエですから、上管では内径が細く、そのため指穴もとても小さいもの。 一方、下管では内径が太くなり、指穴も大きくなります。

指穴な間隔を、人の手の拡げられる間隔に合わせるため、特定の指穴径を変えたい訳ですが限度があります。

そこで、内径を絞り込むとその先の抵抗が増しピッチが下がること、また指穴手前の内径を広げるとその指穴できまるピッチを上げることができることを利用して内径設計およびピッチ調整が可能となります。

●設計上の内径か?ピッチ調整結果としての内径か?

現存するオリジナル楽器ですが、その内径を測定したとしても、それが元の内径設計による値であるかはわかりません。

調律した結果としての内径となってしまうばかりでなく、その後の時代における音楽上の要求に応じて、内径や指穴径の寸法を変えることがしばしばあるからです。

一般に、調律した後の内径は随所でふくらんだりしていますから、現代の楽器製作家がそのふくらみを持つリーマーを製作して復元した場合、はたして調律が可能でバランスよく鳴る楽器が得られるとは限りません。

ここにバロック木管の復元の難しさがあります。

その点で、P.Paulhahnのこのモデルは、上管、下管とも内径テーパーの起伏がほとんどなく、指穴径の調整だけで調律できる内径・指穴間隔・指穴径の設計となっているみたい。

●オーボエはリードとチューブで決まる

内径設計にあったチューブ探しがとても重要です。 (これまでのものは、→こちらや、→こちらも参照)

使用するチューブのテーパー度合いがオーボエ本体と適切であることが必要です。 そうでないと、オクターブ間でのピッチ合わせができなかったり、不安定な音となったりします。

チューブはもちろん、リードはオーボエの命です。

リードの幅だけではありません。 リード自体がチューブや本体と連なるテーパーを形成しているわけですから、適切なリードでなければ、オクターブ間の間隔が合わない(→こちら)などが起きます。

●リードつくりか先か?、本体仕上げが先か?

現存するリードは極めて少なく、そのモデルにあったリード/チューブ探しがきわめて時間のかかる作業となります。

適切でないリード/チューブを用いて楽器の調律を行うと内径や指穴径とアンダーカットをむやみに行ってしまう危険があるのです。

今回のチューブとリードは以下:

 ・チューブ: 60mm
 ・リード: 幅9.0mm、長さ24.5mm
 ・完成状態での寸法: リード先端幅9.2mm、全長85mm
 ・スクレープ法: ロングスクレープ

このリードを用い、安定して2オクターブにわたるピッチ調整が行えました。 ふたたびこのモデルを製作する場合の基準にできそうです。

●新・福岡古楽音楽祭の展示会場

このP.Paulhahnの楽器、間近にせまった新・福岡古楽音楽祭の会場の展示コーナーに出品いたします。

ご興味ある方は、手に取って試奏なさってください。。



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