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zoom RSS バセット・ホルン:曲がったクラリネットをつくります

<<   作成日時 : 2015/12/19 22:33   >>

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画像楽器のつくり方 (182) 2015/12/19

バセット・ホルンという楽器をご存知でしょうか?

クラリネット族の木管楽器ですが、その恰好がとても変わっています。 曲がっているのです。

曲がったクラリネットの曲がり方には、丸くカーブするもの(→こちら)と角があるものがあります。

バセット・ホルンでは、角がつくものが一般でしょうか。

●長い木管の演奏を可能にする工夫

木管の基音を下げる、すなわち音域を低くするためには、管を長くします。

木管楽器は人が使う道具ですから、あまりに長いと演奏が困難となります。

そこで、口でくわえ/構え、両手で操作できるように、届かない音孔の開閉のため長いキーをつけたり、木管楽器の形を変えます。

音階の半音は周波数にして6%の違い。 木管長が6%比率で増減します。 したがって、順に低くするためには木管の長さを6%ずつ長くすればよい。

低音にすればするほど、木管の実長の増加が大きくなります。

床に届くほど長くては不都合ですから、あるところで管を曲げて上に向けます。 「折りたたむ」の意のフォゴットでは、低音域の長さの増し方が大きく、音の出口のベルは奏者の頭上にありますね。

それほどまでの低音楽器でなくても、ベルを上向きにする木管も多くあります。

テナーと言われる楽器が、その中間で、両手の構えが離れて届きにくく、加えるリードもくわえにくい。 そこで、管を曲げて、口と両手の構えを楽にします。

C管の通常の(ソプラノ)オーボエ(たとえば、→こちら)に対して、F管のテナー・オーボエ(たとえば、→こちら)では、クルーク(ボーカル)を曲げたり、またF管のオーボエ・ダカッチャでは、湾曲させます。

Bb管の(ソプラノ)クラリネット(たとえば、→こちら)に対し、(テナーの)F管のバセット・ホルンでは、バレルを湾曲させたり、上管と下管の繋ぎを角度をつけて曲げているのです。

●バセット・ホルン復元製作の要点

Bb管のクラリネットに対し4度低いF管のバセット・ホルンを復元するは、Bb管と比較しあらたな課題が見つかります。

 − 長い管の穴あけ加工
 − マウスピースの湾曲加工
 − 上下管の繋ぎ手(ひざ)の角度加工
 − 追加した長い低域キー群の収容加工
 − 折りたたみ管収容箱の加工
 − 真鍮製のベル加工

これらの課題をひとつひとつ解決するため工夫を凝らします。

●図面の入手と角度付けの工夫

フォトは、オックスフォード大学音楽学部ベート・コレクション Bate Collection (→こちら)から入手した、グレンザー Johann Heinrichi Grenser のバセット・ホルン図面。

フォトをクリックし、さらに次々とクリックして拡大すると、図面の細部まで見ることができます。

湾曲したバレル(フォト下)と、角度の付いたひざ(ニー)と呼ばれる上管と下管の繋ぎ手(フォト上)。

いずれも、両開口部にソケットがあり、その中を貫通する、14.1〜14.5mmほどの内径(ボア)を持ちます。

入手図面は原寸で描かれており、この図面上にコンパスを用いて補足線を図面に直接多数書き込みました。

すると、湾曲や角度付けに対する設計パラメータが得られます。

 − 湾曲バレルの角度 22度
 − 繋ぎ手(ニー)角度 47度

このような曲がったものを旋盤を用いて加工するには、2軸を確保し、各軸のそれぞれに同円加工をほどこすこととなります。 ただし、片方軸の加工を施すと、他方の軸の支えがなくなり、やりにくい。

ならば3次元(3D)のNC旋盤があれば加工できそうですが、導入するには高額すぎます。 通常の旋盤でできる範囲で加工したい。

そこで、加工に工夫を凝らします。

まず、通常のまっすぐのバレルや継手をつくります。 そのあと、角度の「半分の角度」にて左右に切り離します。

半分の角度ですから、

 − 湾曲バレルの角度 22度の半分 → 11度
 − 繋ぎ手(ニー)角度 47度の半分 → 23.5度


切り離した左右の片方を、180度回転させて互いに接合すると、目的の角度で曲がることとなります。

図面には、本来ならまっすぐのバレルや継手の設計図を書き込みました。

この設計図をコピーし、ハサミで切り離し、中央部で「半分の角度」をつけて切り離し、片方を裏表逆にしてつないでみると、目的の角度が得られることを確かめました。

●使用する材

このバセット・ホルンに復元製作の連載を通して用いる主要材として、今回、フォトに示す黄楊(→こちらのアジア産?実際はカステロ・ボックスウッドか)を選びました。

表面にきれいな縞模様の杢(もく)が見えます。 この杢を活かした復元作品としてオトテール型トラベルソがあり、→こちらをご覧ください。

この杢を活かし、見た目にも魅力あるバセット・ホルンつくりにチャレンジします。

はたして、種々の加工上の課題をクリアできるか、わくわくです・・・


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