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zoom RSS バセット・ホルン:足管ボックスの3軸内径つくりの工夫いろいろ

<<   作成日時 : 2016/02/14 14:22   >>

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画像楽器のつくり方 (195) 2016/2/14

バセット・ホルン復元つくりの連載を進めます。

足管ボックスは、バセット・ホルンの中でもその構造が変わっています。

新しい種類の楽器を復元するとき、音色や吹奏感がどのようなものか確かめる楽しみがあります。

オーボエやトラベルなどのそれぞれの木管において、異なるモデル(オリジナル製作者)間の差異を知る楽しみです。

一方、異なるモデル間ではなく、異なる新しい種類の楽器においては別の楽しみがあります。

それは、どのような構造になっており、どうすればそれを作れるかを味わう楽しみ。

バセット・ホルンは、その楽しみが大きい楽器です。

●3軸穴あけの方法その1(失敗例)

足管ボックス部には、3つのボア(内径)があります(→こちらや、→こちらを参照)。

通常、木管楽器は、1つの軸のボアを持つ管の構造であり、同心円加工をすればよく、旋盤の両センターに挟んで外形を削り、また、内径(モア)のドリル加工やリーマー加工を行います。

しかし、ボアが3軸もある足管ボックスでは、1つの軸のボアを基準にして外形は同心円加工でなく、また他の2つの軸は独立して存在します。

そこで、独立した3軸の各々に対する加工が必要となります。

その加工をいかに行うか?

フォト右端に見える2つの四角い基板上に取り付けた円形の治具。 これは穴あけを旋盤上で行うためのもの。

主軸台のチャックにより材を固定するために、1インチ(25.4mm)径のチャック取付け結わえを基板に接着しています。

この基板を加工対象の足管ボックスにどうやって取り付けるか? たまたまボックスの上面および下面には、真鍮板が付き、そのために板をねじ(ビス)で固定するための「鬼目ナット」を3、4個所に埋め込んでいます(→こちら)。

この鬼目ナットにより治具基板を取り付ければよいと思いつき基板に穴あけを実施。

1つの軸に対し複数の鬼目ナットの位置に穴をあけます。 別の軸に適用するとき鬼目ナットの位置が異なりますから別の穴をあけ、結局、3軸のそれぞれに対する穴をあけています。

テールストック側では、「芯振れ止め」(→こちら)を用いて固定するため、同様の治具をつくりました。

これらの治具を、ボックスの両面に取り付け旋盤上で穴をあけるという試み。

結果は、みごとに失敗。

旋盤に取り付け回転させますが、そもそも旋盤加工では、一般に回転軸に対し重心位置がセンターにあるか、または、それに近いものを対象としています。

ところが、足管ボックスでは、1つの軸加工において重心位置は回転軸から遠くにあります。 しかも、欧州黄楊材の大きな塊りを加工対象としています。

実際に回転させてみると、グルン、グルン、・・大きなうなりをあげ、遠心力で治具ごと吹っ飛びそうなとても不安定で、直感的に危険を感じます。

これでは、ものづくりにおける最も重要な 「安全の確保」 が維持できそうにありません。

そこでこの方法は、即座に断念。

●3軸穴あけの方法その2(成功例)

旋盤加工では、材を回転させ、固定した刃物で切削するため重心位置の問題が残ります。

そこでつぎに旋盤を用いない加工方法を考えました。

材を固定し、刃物を回転させると、重心位置の問題がなくなります。 ボール盤です。

一般に穴あけはボール盤の仕事。 ただし、ここでいう穴あけは、加工の深さを求めません。

ところがバロック木管つくりでは、穴に深さがあり、一般にロングドリル(→こちら)による加工(その様子は、→こちら)となります。

(木工加工において、長い穴をあける専用の「穿孔旋盤」も存在します。)

ボール盤では長いロングドリルが使えませんし、ボール盤としても使用可能なフライス盤は、そもそも取付ける刃物(エンドミルなど)の長さを極力短くして、ブレを最小限に抑えています。

そこで、フライス盤を用いて加工するために、ロングドリルではなく通常のドリルを用い、両面から半分ずつ加工することにしました。

穴の深さは、ボックスの外形が120mmですから、半分の60mmほどあればよく、わたしのフライス盤のZ軸の移動距離である60数mmで行えます。

●3軸穴あけの実際

フォトは、足管ボックス部に3つの穴をあけたものに、真鍮製のベル(→こちら)を挿した様子。

3軸に対して、3回に分けて穴をあけます。

 1穴: 14.6mmφ
 2穴: 14.8mmφ
 3穴: 15〜25.5mmφの部分テーパー

基本の14mmφのシャンク径6.35φの6角のドリル刃(フォト上部中央)を用います。 いきなり14mm径の刃を、石のように固い欧州黄楊材にあてることはできません。

そこで、通常のドリル(フォト上部右)を用いて、5Φの穴をあけ、さらに6Φ、7Φ、8Φと順に取り替えて穴を広げます。

9Φ、10Φドリル刃まで、フライス盤のチャックに結わえることができるものの、これらの刃は長すぎて高さ制限で使えません。

14mmφドリルに対し、8Φの下穴では14Φ加工は苦しい。

そこでさらにひと工夫。

そもそも、フライス盤は、X軸、Y軸方向に移動ができ、「8Φのドリル刃でもって」フライス加工ができるのではと思いつきました。

8Φドリル刃であけた8Φの穴を拡げ、14mmφまで持って行けばよい!

位置を0.1〜0.2mmずつずらせて、8Φドリル刃で穴を拡げ、これを何回も繰り返して14mmφに近づけます。

そのあと14mmφのドリル刃に取り替えて正確な14mmφ径の穴を得ます。 この作業をボックスの表裏を逆にし反対側から行い、基本穴あけを完了。

14mmφの基本穴があいたところで、自在リーマー(→こちらや、→こちらを参照)にて、目的の径まで拡げます。

両面からの穴あけのため、若干のずれが生じますが、フォト中央に見える長い棒状のヤスリでならします。

このヤスリは、丁度14Φで6.35φの6角ドリル用。 標準の6角ドリルの延長棒に取り付けています。

(このヤスリ、木管楽器の内径を広げてピッチ調整をする際にも使えそう。)

●ベル用のテーパー処理

フォト中央手前に見える、木製リーマー(木製リーマーについては、たとえば→こちらを参照)によりリーミングを行います。

そもそもリーマーとは、内径を正確に作り出すために表面に刃を当てるもの。 刃を当てる対象の穴はほとんど最終形状にあいていることを前提とします。

14mmφ基本穴から、最終内径を得るため、フライス盤を用いて階段状に内径を拡げ、フォトに示さない荒ヤスリ等で拡げます。

リーマーを用いて、最終形状かどうか確かめます。

要は、リーマーとは、リーマーの刃が内径(ボア)にぴったりと入るように、別の何らかの刃で加工するときの「目標値」を示すもの、と言えます。

怪我もなく、無事に3軸の穴あけを完了しました。


次は、ボックス部に取り付けるキーパッドが、下管からの長いキー群により開閉できるよう、立体的な調整しながら、各部の連携を図り進めてまいります・・・



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