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zoom RSS バセット・ホルン:立体的なキーメカニズムつくりが要です

<<   作成日時 : 2016/04/10 20:01   >>

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画像楽器のつくり方 (203) 2016/4/10

バセット・ホルンの復元つくり、連載を続けましょう。

バセットとは、低音をあらわす「バス bassの」 の意味。 

クラリネット族のうち低音域にシフトしたバス・クラリネットではありません。

通常のAクラリネットの低音を伸ばしたバセット・クラリネットや、Fクラリネットの低音を伸ばしたバセット・ホルンは、これら低音域を延長したことが特徴。

●バセット用の延長キー

バセット・ホルンで、バセット低音として伸ばしたのは、D音とC音の2つ。

これら、管の長さを伸ばして得られる低音ですが、操作する上で、余っている指として右手親指しかなく、下管の裏側でD音とC音に対応するCキーとDキーを操作します。 (→こちらも参照)

●4本の長いキーの収容

これら2つのバセット低音のためのCキーとDキーと、通常のクラリネットで左手小指操作のE(Bキー)とF#(C#キー)(→こちらも参照)を合わせた4つのキーの長さは、音孔位置が遠いためとても長い。

これら4本は、管の軸方向に対し平行に走り、ところ狭しとばかりに収容する必要があります。 (→こちら

●足管ボックスのキー取付け構造

4つのキーのうち、F#(C#キー)は下管に付けます。キー押下で開き、キーのバーと押え(フラップ)が一体となった構造。

これに対して、残りの、E(Bキー)、Dキー、Cキーの3つは、足管ボックスに取り付けます。キー押下で押え(フラップ)が閉じる、分離構造。

とても奇妙な形の足管ボックスにあけた3つの音孔を長いキーバーで閉じるわけですが、その精度を高くしないとうまく開閉しません。

●複数のキー台を通したチャネルをバーが通ります

長いキーをキー台に取り付けたとき、わずかなぐらつきがキー先端の大きく揺れとなります。

揺れを少なくするには、キーバーを複数のキー台に掘られたチャネルを通してセットします。

ここで、チャネルを正確に平行に掘る必要があり、その加工用治具をつくりました(→こちら)。 これにより、2〜3個のキー台にわたり、4本のキーの平行度を高めています。

●立体的なキーメカニズムには合わせ工事が必要

バロック木管では、少数のキーを持つものがあります。 トラベルソ(トラヴェルソ)では1〜2個、バロック・オーボエでは2〜3個といった具合。(テナー・オーボエの例は、→こちら

これらのキーは、いずれも管の軸方向に沿ったキー配置となっており、そのメカニズムは単純。

しかし、バセット・ホルンの足管ボックスの場合は事情が異なります。 通常のバロック木管のように軸方向に取り付けるのは、F#(C#キー)のみ。

残りの3つのE(Bキー)、Dキー、Cキーは、キーのバーが途中で山を越えたり水平に戻ったりする構造となっています。

E(Bキー)の場合では、途中でF#(C#キー)の押え(フラップ)板が邪魔しますから、それを避けるべく、迂回します。 この場合、まず右に折れ、左に曲がって平行に戻り、さらに左に折れたあと右に曲がって平行に戻ります。

しかもこの経路において、高さ方向にも山を越えて水平に戻ります。

Dキーの場合は、まず山を越え、水平に戻ったあと、90度右を向き、今度は真下に曲がり、底に達すると水平に戻り、さらに左90度向きを変えます。

このように、各キーのバーは、立体的に正しい姿にしないと、キーの開閉ができません。 0.5〜1mmの精度で調整して追い込む必要があり、実物にあてがう「合わせ工事」となります。

ここで、板厚2.5mmや3.5mmの真鍮板から切り出してつくったキーを曲げるのも結構大変です。

●キー軸のピボットについて

キー台につくったピボット構造によりキーが回転します。 問題は、キー台には4本のキーバーを収容すること。

どうやって、ピボットの軸を収容するか。

通常、バロック・オーボエなどでキー台に2〜3のキーを取り付ける場合は、軸穴をあける間隔を広く保つことができ、問題はありません。

しかし、幅が5mmの4本のキーバーを収容するチャネルは幅も5mmしかありません。 もし収容本数が、2本なら左右から軸穴をあけ、軸を通せばよい。

しかし、それ以上となると、内側のキーバーは、外側のキーバーをまたいで軸穴をあけ、5mm幅の両方のチャネルを利用してキー軸を埋め込むこととなります。

このバセット・ホルンでは、左から3番目のDキーバーについては、4番目の外側のCキーバー側からあけた埋め込み軸穴により支えます。 そして、2番目のF#(C#キー)の軸に当たってしまうため、少しの切欠きが必要。

この場合でも、2番目のF#(C#キー)を外さないと、埋め込まれたDキーの軸が外せません。

このような構造となっているため、何度もキーを付けたり外したりするためには、4本のキーを順序にしたがって分解・組立を繰り返す必要があります。

●キーメカニズムの完成

バセット・ホルンつくりの要点は、この立体キーメカニズムにあります。

フォトは、縦に平行に走る4本のキーメカニズムを含む全容。 この構造、「百聞は一見にしかず」。

左から順に、左手小指で操作するE(Bキー)、F#(C#キー)、右手親指で裏から操作するDキー、Cキー。

(フォトをクリックし、現れる画像を次々とクリックすると拡大して見ることができます。)

これらのバセット・キーのメカニズムが得られ、全域の音出しが可能となりました。

現状では、バセット音域でのピッチはかなり低め。 音孔の大きさや位置のほか、2個所のU字管つくりに影響されます。

今後は、U字管の拡げや管長の変更などを施し、ピッチ調整を進めてまいります・・・



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