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zoom RSS オーボエ・ダモーレ:内径変更で豊かな響きが得られました

<<   作成日時 : 2016/05/23 19:49   >>

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画像楽器のつくり方 (205) 2016/5/23

バロック木管の内径設計は実にさまざま。

当時の工房で用いるリーマーにより内径が決まり、工房の後継ぎがリーマーを引き継いだのでしょうか。

●オーボエ・ダモーレの製作家とオリジナル楽器のデータ

J.S.バッハはライプツィッヒ Leipzigにて作曲しオーボエ・ダモーレを多用しました。

当時ライプツィヒで製作されたオーボエ・ダモーレについての調査報告書が、レイモンド氏 Joel Raymond によりまとめられています:

 18世紀ドイツ・オーボエの調査 "A Survey of German 18th Century Oboes"

この中で、3人の製作家によるオーボエ・ダモーレがフォトとともに紹介されています:

 − アイヒェントップ Eichentopf
 − サットラー Sattler
 − バウエル Bauer

いずれも全長はほぼ同じ。 外観上は、ベッディングの位置、キーの形状、丸く膨らんだベルの曲線など細部デザインや指穴の大きさが少し違って見えます。

一般に、内径に関しては、同一製作家のモデルでも、各地の博物館に所蔵されるものが異なります。

上管の最小径ですが、アイヒェントップでは5.7mmと最も細い。 サットラーとバウエルでは6.1mm。

下管の最小径ですが、アイヒェントップの12mmに対してサットラーでは12〜12.3mm、また最大径では、アイヒェントップの17.9mmに対してサットラーでは17〜18.7mmと広がりが見られ、アイヒェントップより狭いものもあります。

●わたしの復元楽器と内径データ

フォトは、10年前の2006年に復元したオーボエ・ダモーレ(→こちら)。 化粧箱に収容した →こちら で詳細イメージもご覧ください。

モデルは、アイヒェントップ/サットラー。 複数の製作家による混合は、博物館でも見られることがあります。

これは、ある愛好家からお借りしたヴェスターマン氏 Westermann 作の復元楽器で、それをわたしが計測し、図面を起こしました。

とくに下管では、奥までドリルであけたように内径が一定の値を保つようなデータとなっていり、通常のオーボエで見られるテーパーではありません。

そこで、わたしがある程度の推定し、テーパー度を与えた内径としていました。

その内径にて各音のピッチ測定を行うと、下管で決まる低音域では低め(→こちら)。 その後、チューブ/ボーカルやリードのパラメータを変えましたが、低い傾向は同じ(→こちら)。

ある演奏家に評価していただく機会があり、低音部の発音がしにくいとコメントもいただきました。

そこで種々リードやチューブを変えてみて試してきましたが、いわゆる「ブルブル」感も残ったまま。

●オリジナルの楽器製作家と現代における復元製作家による内径設計

同一のオリジナル製作家によっても、各地の博物館に残る楽器のデータが異なります。 この理由はいくつかあり、ひとつに原型をとどめていないことがあげられます。

後世での音楽の要求が変わるにつれ、オリジナルの内径や指穴径も変えられていることも。

そのような状況ですから、現代の製作家は、復元するに当たり、どのデータを採用すべきか、また自身でどのように修正すべきか迷います。

さきの演奏家からは、ポンセール氏 Ponseele によるアイヒェントップの大切な楽器をお借りできました。 その内径はじめ各部を計測して図面に起こすことができました。

レイモンド氏の報告書にあるフォトを参考にすると、わたしの復元したアイヒェントップ/サットラーモデの外形はサットラーに近いものであるとわかりました。

内径ですが、ポンセール氏のアイヒェントップより狭く、とくに下管では1〜1.5mmほど差が見られます。

そこで思い切って内径を1〜1.5mmほど拡げ、結果次第では今後の復元において、いずれのデータを基準とすべきかの判断をすべく内径変更を試みました。

●内径拡げの結果

フォト手前は、ヴェスターマン氏の復元楽器のデータ図面。 それにポンセール氏の復元楽器のデータを重ねています。

これを基に、内径を拡げてポンセール氏のデータに近づけました。

内径設計の変更は、指穴の位置と大きさに影響します。 ここでは内径だけ変えるため結果はどうなるか。

●低音域の安定に繋がった

フォト上は、各音のピッチ測定データ。 適合リードを用いて、A=415Hzのピッチを得ました。

低めであった低音域はすべて改善され、発音も容易となり、リード/チューブ選定におけるブルブルもなくなりました。

とくに下管の内径は大きく拡張したため、低音側の第一オクターブにより効くことが確かめられます。

理論的にも、パイプオルガンで見られるように、高音ほど管径を小さく、低音ほど管径を太くするメンズールの法則(→こちらも参照)に従うものです。 高音側の第二オクターブでは、影響はほとんどありません。

よい結果が得られました。

今後の復元製作では、アイヒェントップ/サットラーモデルから、アイヒェントップモデルのほうのデータを基本としてみると良さそうです。

●木管楽器の設計パラメータは複雑

内径のプロファイル、指穴/音孔径の大きさと位置やドリル角度などのパラメータのほか、用いるチューブ/ボーカルとリード形状など、パラメータは多岐にわたります。

オーボエ・ダモーレを復元して10年の歳月が過ぎました。 この間、リードつくりをはじめ、いろいろと「見えてきました」。

ダブル・リード楽器のオーボエつくり、とても面白い。 今後も続けてまいります・・・



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