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zoom RSS バロック・オーボエ:Stanseby Sr モデルはA=396のローピッチで鳴ります

<<   作成日時 : 2016/09/28 18:52   >>

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画像楽器のつくり方 (222) 2016/9/28

博物館に所蔵される2種のバロック・オーボエを同時進行で復元する連載です。

2種のモデル(外観は、→こちら)ですが:

- ステンベルゲン Jan Steenbergen
  デン・ハーグ市立博物館 Den Haags Gemeentemuseum Ea 3-x-1952

- ステンズビー Thomas Stanesby senior
  エディンバラ大学 No.62

すでにステンベルゲンについては調整を終え、ピッチ測定も完了(→こちら)。

しかし、ステンズビーについてはなかなか追い込むことができず調整を残していました。

●内径設計が特異なステンズビー

ステンズビーの計測図面を入手し早や18年。 計測データを基に、内径を方眼紙上で見える形にすると、通常のオーボエとは異なる特異性が感じられました。

バロックオーボエ上管の一般的な内径形状ですが、リードのチューブを挿すウェル(井戸)が逆テーパー状に施され楽器の最小径(5.8〜6.5mmほど)に達し、そこから先はテーパー状に拡がります。

ところが、ステンズビーでは、最小径に達したあとしばらくその径にとどまります。 テーパーがほとんど施されず円筒状に長く伸び、そのあと拡がるテーパー状に変わります。

この特異性を見つけたことから、オリジナル楽器の計測値は正しくその通りになっているのか、それとも計測者になんらかのミスがあり、実際には通常のオーボエと同じなのか、長い間、疑問に思ってきました。

計測時の誤りとか、測定データを図面に起こす際に誤りが混じることが良くありますから。

この測定図面もなんらかの誤りか、復元製作をずっとためらってきました。

●外形寸法やAL(アコースティック・レングス)

このステンズビーのピッチですが、計測者による参考情報では、A=409ー415Hzとあります。

実際に、平行して復元しましたステンベルゲン(A=415Hz)に比べ10mmほど外径(全長)が長く、いわゆるAL(アコースティック・レングス)もそれにつれ長くなっています。

すると、A=415より低いピッチを持つものと予想されます。

比較として、ロッテンブルク I.H.Rottenburgh の計測図面とを見比べてみるとほぼ一致。 先に復元したロッテンブルクでは、いわゆるフレンチピッチ(ローピッチ)のA=392Hzでよく鳴ります(→こちら)。

そこで、ステンズビーもローピッチの楽器であると予想し復元してきました。

●リードセットアップの難しさ

バロック・オーボエの難しさは、適合するリードを見つけることにあります。

リード全長など、単に長さだけではなく、リード幅のほか、使用するチューブのテーパーも重要です。 無数の組み合わせから適合リードを探す作業は大変。

一旦、適合リードが見つかると、その近辺のピッチにあったリードも得られるし、楽器の指穴径をはじめ調整が可能となります。

最初、バロック演奏で実用的なA=415で鳴らないか種々試みました。 きわめて短いリードセットアップになってしまいどうやら無理そう。 ステンズビーモデルの各種フォトをネットで見ても、そのような短くアンバランスなリードを付けているものは見当たりません。

短めですが標準的なリードで試すと、A=408−410Hz あたりで基準音Aを合わせることはできます。

しかし、その他の音のピッチが続かず、随所できわめて大きなずれが生じます。 A音だけ特化してピッチを合わせて全体の調整をした場合、他の音のピッチが犠牲になります。

ここがバロック木管の簡単でないところ。

●ローピッチ用のリード

そこで思いきって、ロッテンブルクと同様、「ローピッチの楽器である」と仮定してリードを選びました。

なかでも、最小径の値がしばらく続く特異な内径に対応させるため、通常のきついテーパーではなく、テーパー度合いがすこし緩やかなデンナー Denner チューブが適合すると考えてリードをつくりました。

その結果、通常長さのリード長において、A=396Hzのローピッチで、全体域にわたりフラットで、適合することが分かりました。

フォトは、A=396Hzを基準とするデータをプロットしたもの。 (フォトを次々とクリックすると拡大され、方眼紙の目盛りまで見ることができます)

内径に特異性を持つことから、少しでも外れたリードでは、全音域にわたり大きくずれてしまうようです。

適合リードのデータ:

 ・全長 82..5mm
 ・リード幅 9.35mm
 ・リード(スクレープ)長 24mm
 ・突出し長 69.5mm / 挿入深さ 13mm
 ・チューブ Denner 58mm (底外径6.3Φ、内径5.8Φ)
 ・ケーン H082 8.6mm幅

やっと鳴り始めました。 吹奏感は、明るく朗々と響くPaulhahnモデルと比べ、やはりローピッチの雰囲気を感じさせます。

復元すべきか考えあぐねて18年。 この特異な内径設計は、適合リードを用いることでフラットで安定して鳴る楽器のようです。

う〜む、バロック・オーボエって面白いですね・・・・


※ この Stanseby Sr バロック・オーボエを、来る2016年10月8日〜10日に博多で開催される新福岡・古楽音楽祭の展示会にて展示する予定です。Paulhahnモデル、Steenbergenモデルと一緒に並べて展示します。 3本セットでご覧ください。


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バロック・オーボエ:穴あけと取付けを終えたキーの輝き
バロック・オーボエ:Steenbergenモデルの適合リードを見つけました
ローピッチオーボエ:適合リードを見つけました(その2)</a>



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