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zoom RSS バロック・オーボエ:3本の名器のピッチを比較しましょう

<<   作成日時 : 2017/01/22 15:04   >>

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画像バロック・オーボエのピッチがどのように決まるのか興味がありませんか。

木管ですから、一般論では、管長が長いと低い音がし、すなわちピッチが下がります。

しかし、実際の木管は、内径が複雑なテーパーをなしており、管長の単純比較はできません。

バロック・オーボエでは、先に拡がるテーパーをなします。 一方、バロック・トラベルソでは、頭部管は円筒で、その先は、先に狭まるテーパー。 また。クラリネットでは、ほぼ円筒です。

●木管の音響特性

外形ではなく、内径(ボア)の形状(プロファイル)で音響特性が決まります。 では外形はというと、単にデザインの違いといえます。

音響特性を決める内径ですが、単に木管楽器の本体の内径のことだけではありません。

オーボエ類では、チューブやボーカルと、その先につくリードの内径(およびリードの幅など)も含みます  クラリネットでは、マウスピースやそこに結わえられるリード(リード幅も)との隙間(オープニング)も含みます。 トラベルソでは、マウスホールを覆うアンブシャー(口蓋も)も含みます。

●バロック・オーボエのアコースティック・レングスAL

現存するバロック時代のオリジナル楽器ですが、世界の楽器博物館や音楽大学に所蔵され、あるいは個人のコレクションとして保存されます。

いずれの場合も、オーボエ本体は現存しますが、リードやチューブが本体とペアの形で存在していることはきわめて稀。 チューブとリードは消耗品ですから仕方がありません。

バロック木管がつくられた年代や国・地域によりピッチはさまざま。 そこで、現存する楽器のピッチが何なのかは、種々トライして求めるしかありません。

オーボエの場合は、適するであろうチューブのプロファイルと、適するであろうリードを決め、種々トライして、演奏可能なピッチ、実際にはピッチの範囲を求めます。 ただ、一々トライせずとも、目安としてピッチは高いか低いかを分類することは意味があります。 

そこで、アコースティック・レングス Acoustic Length (音響長)が定義されています。

ブルース・へインズ Bruce Haynes 著の「精説オーボエ - 1640〜1760のオーボエの歴史」 "THE ELOQUENT OBOE - A HISTORY OF THE HAUTBOY FROM 1640 TO 1760" (参考文献→こちらの文献集)のP.94を参照すると、

 【AL=オーボエ上端から第6指穴の中心までの長さ】

と定義され、おおまかにオリジナルのオーボエを分類することが記載されています。 オーボエの全長(Total Length:TL)ではなく、ALを用いるのは、ベルの長さがオーボエにより様々だからとあります。

●第1指穴と第6指穴の間隔

ALで大まかな分類を行えるとしても、上端(上管の先)から第1指穴までの長さは、どのようにでも設計できます。 この間の長さを長くしても、ウェル well 井戸を深くすれば、短くしたことと同じになるからです。

そこで、参考までに、第1指穴と第6指穴間隔の長さを求め、比較してみました。

 【A16=第1指穴と第6指穴間隔の長さ】

●3本の名器オーボエの比較

フォトは、復元製作した3種のバロック・オーボエ名器と各部の長さのデータ。 左から順に:

 - ステンベルゲン J. Steenbergen (→ こちら) 全長 571.7mm AL=328.8mm A16=192mm
 - ポールハン P. Paulhahn (→ こちら)     全長 574.4mm AL=322.4mm A16=191.2mm
 - ステンズビー T. Stanseby Sr (→ こちら)   全長 591.2mm AL=332.0mm A16=190.4mm

全長で20mm、アコースティックレングスALで10mmほど広がりが見られますが、第1−6指穴間隔A16では、ほとんど同じで1〜2mmの差しかありません。

これら3本を机の上に並べると、全長の差異が目立ち、長いものは背が高く見えます。 最も全長が短いステンベルゲンに対し、ポールハンは3mmほど、またステンズビーは19.5mmも長いのです。

とくにベル長がモデルにより差異があるほか上管の頭部の長さに違いがあることによります。

そこで、フォトでは高さについて工夫しました。 第1指穴に着目し、この第1指穴の高さがほぼ同じとなるように、0mm/5.5mm/11mmの3段をつくり載せてみました。 この状態で、先の博多での新・福岡古楽音楽祭のにて展示しました(→こちら)。

フォトでみられるように、第1指穴の高さを合わせてみると、実測データからもわかるように3本とも第1から第6の指穴までの長さL16はほぼ同じです。

するとピッチは同じかというと、ステンベルゲンとポールハンはA=415Hzで鳴りますが、ステンズビーは長くて、A=415Hzで鳴らすことには無理があり、およそA=403〜409Hzあたりでよく鳴ります(フォトのリードではA=396Hz)。

指穴間隔は、操作性に繋がりますから、ピッチの違いを超えて、ほぼ同じに設計されています。 指穴を小さくすれば、実質上のピッチを決める仮想の大きな指穴を遠くに配したことと等価にできます。

ステンズビーでは、各指穴を小さめにして設計していると考えられます。

●リードの配備(セッティング)

使用するリードのセッティングの仕方は種々考えられます。 使うチューブの太さやテーパー度合い、ケーンの幅などのほか、ウェル 井戸に差し込む長さ(深さ)によりピッチが変わるのです。

3種のオーボエのウェルの寸法はバラバラ。 そこで、実用的なA=415Hzで鳴らせるセッティングを求めたとき、フォトのようにリード先端の高さが、ステンベルゲンとポールハンで一致しています。

このことから、第1指穴を基準として、リード先端までの長さを意識してリードのセッティングを行うことが実用上意味があると思われます。

フォトでわかるよう、ステンズビーのリード先端の位置は高いです。

その楽器の寸法が、ロッテンブルク I.H. Rottenburgh (→こちら)とほぼ同じであることから、ローピッチの楽器と考えられます。

フォトのセッティングでは、実際にA=396Hzで鳴りました。 もっと幅の広いリードのセッティングによりA=392Hzでも鳴ると考えられます。

一方、ステンズビーをA=415Hzで鳴らすためには、ウェルを相当深くするか、短い上管の替え管をつくることが実際的です。

ステンズビーについては、今後、短い替え上管をつくって実験してみましょう・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

●参考文献 → 文献集
バロック・オーボエ:きわめて安定したP.Paulhahnモデルの調律
バロック・オーボエ:Steenbergenモデルの適合リードを見つけました
バロック・オーボエ:Stanseby Sr モデルはA=396のローピッチで鳴ります
新・福岡古楽音楽祭2016の展示会に出展しました
ローピッチオーボエ:適合リードを見つけました(その2)


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