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zoom RSS 本紫檀でつくるバロック・オーボエの木取り

<<   作成日時 : 2017/02/12 11:10   >>

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画像楽器のつくり方 (226) 2017/2/12

奈良の正倉院には、シルクロードを通って、遠くはペルシャから唐を経てわが国に伝わった多くの宝物があります。

正倉院展にて、楽器の展示をまじかに見る機会があり、尺八のきわめて精緻なつくりや美意識がわたしの楽器つくりの刺激にもなっています。

宝物の中で用いられている材には、いわゆる唐木(からき)といわれる木目や色合いが美しい硬材があります。

中でも紫がかった赤褐色と縞模様のある紫檀 Dalbergia cochinchinensis は、ずっと美しい材として愛され続けてきました。 その産地は、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、マレーシア、インドなどで、なかでもタイやラオス産は本紫檀と呼ばれ高価で取引されてきました。

現在は、ワシントン条約付属書で、輸出入に制限が課せられる植物があり、マメ科の紫檀もしかり。

絶滅のおそれのある種として取引制限のある付属書 I には、ブラジル産ローズウッドがあります。 これに対し、絶滅のおそれのある種ではないが取引制限がある付属書 II に、本紫檀が含まれます。

●材の入手

紫檀などの硬材が、バロック木管楽器つくりに欠かせません。 材の入手は、一般に唐木なども扱う木材販売業者などからとなります(→こちらを参照)。

幾種類かの硬材につきサンプル入手し、実際に木管に適するかの評価を行いました(→こちらを参照)。 この中に本紫檀も含まれ、その美しさ(イメージは、→こちら)と緻密さから材として入手したのが10年前。

●材の乾燥

販売店によると「30年物」。 すなわち伐採し、乾燥を開始して30年。 わたしが購入後に、自然乾燥させて10年ですから、合計40年経ったことになります。

乾燥を開始すると、木は大きく暴れます。 年輪の中心と外側での収縮度合いが異なるからです。 そこで、楽器に適するように乾燥させ、「暴れるだけ暴れさせます」(→こちらを参照)。

暴れさせた結果、もっとも変形するものとして黄楊(拓殖 boxwood)があります(→こちら)。 これに比べると変形度合が少ないと言えど、本紫檀もこの10年間の乾燥で変形も見られました。

●ベル材の確保

オーボエやクラリネットの復元製作における最も大きな課題は、ベルが取れる材の入手。

60〜80mmの角材あるいは丸材が必要。 一般に木材の製材は板状に行います。 するとテーブルの天板が取れます。 厚さにして30〜42mm程度を見かけます。 この板材から角材をとっても、ベルには使えません。

一方、床柱など80mmの角材を取るには、最初から原木からの木取りを検討する必要があります。 ただし柱材では、芯を含むと乾燥で割れますから、木取りは難しく、また割れないように芯近くまでノコを入れます。

柱では、見えない裏側にこのノコを入れた側に用いればよいからです。

ところが、そのような材はベルには使えませんから、結局ベル材の入手が困難であることが分かります。

フォトの奥は、木口が台形で高さ(厚さ)が80mmある本紫檀。 材木店に頼んで、探してもらい幸運にも入手できた材。

ワシントン条約により実質上輸入できず、現在、国内に存するものだけとなることから、おそらくこのような本紫檀はもう手に入らないと思われます。

●ベルの木取り

径が60〜80mmある丸材をどのように木取るか。

芯を含むと割れますから、丸太ではなく半丸太の状態で取引されることが多く、欧州黄楊 European boxwoodw の例(→こちら)に示すように、一般に、非常に歩留りが悪くなります。

フォトの台形の材の長さは800mm(重量6.4kg)。 ベル材長は160mmですから、5本取れます。

ここで、ベルの仕上がりの重量は100gほどですから、歩留りは、 100x5/6400=0.078。 たったの7.8%の材をとるために、残り92%が資源の浪費となります。

●オーボエとしての木取り

フォトの中央の角材は、上管や下管用に確保したもの。 長さ820mmのものを4本入手。

このうち1本と少しを用い、先に本紫檀製のトラベルソ(→こちら)をつくった残り。

この残り3本から木取りを行うと、オーボエ4本分が取れます。

しかし、貴重なベル材からは5本分取れますから、なんとか5本のオーボエをつくりたい。

そこで、歩留りから浪費してしまう92%の中で、上管や下管がとれないか考え抜きました。 分割型の方式(→こちらみを参照)でつくる場合の、上管上部、上管下部、下管上部、下管下部の中で、径が小さなものでも構成できるものとして上管下部があることに着目しました。

フォトの右下のベルの木取りにおいて、台形から取り出した8角形の残りとして、三角形材が2つあり、このうち大きなものから上管下部が取れそう。

このように計画的に木取りを行って本紫檀のオーボエを5本復元してみます。


きわめて貴重な材である本紫檀でつくるのですから、格調あるオーボエとすべく(人工)象牙のマウントを施したものから始めてみましょう・・・



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