T. Lot トラベルソのピッチは自分でつくり出します
楽器の貸出し用に、久しぶりに出して、外径を削り直し、内径の再リーミング、キーの仕上げなどを行い、またピッチを確認しました。
フォトは、ベート・コレクション Bate Collection 楽器博物館に所蔵されるT.Lotの復元コピー。(→こちらを参照)
いわゆるフレンチピッチA=392 あたりの替え管が現存します。
というより、パリの楽器ですからフレンチピッチを基本とし、より高い A=415 あたりの替え管も持つといった方がよいでしょうか。
実際のピッチ調整で、A=392 と A=415に合わせています。
●新・福岡古楽音楽祭の楽器展示会
去る10月23-25日に、博多で開催された古楽音楽祭の楽器展示コーナーにてわたしの復元楽器を展示しました。 (→こちらに展示の様子を示します)
展示楽器は、全7種、9本ですが、いずれもリード楽器のクラリネット2本と、オーボエ7本。
その前にも、5月に甲府で開催された古楽フェスティバル<山梨>においても、リード楽器に絞って展示しました(→こちら)が、その後、リード楽器を完成させるためには、リードの研究が欠かせません。
全7種のそれぞれのリードつくりに精力を集中させ、一部については満足のいくリードも得られました。
このように、リード楽器に集中するあまり、トラベルソの展示に至らなかったわけ。
●トラベルソはないのですか?
リード楽器のみの展示だと、トラベルソの演奏家や愛好家からは、「今回もトラベルソ展示はないの?」となります。
ところで、一般にバロック木管の愛好家の数の比率は、
・リコーダ 100
・トラベルソ 10
・オーボエ 1
・クラリネット 0.1
といったところ。
リード楽器であるオーボエ/クラリネットに対し、トラベルソは10倍くらい。
やはり、「トラベルソはないのですか?」の声が聞こえてくるのは当然でしょうか。
●復元楽器の紹介やお貸出し
このブログ 「バロック木管図書館 woodwind」を開設し、はや10年。(10周年記念号は、→こちら)
この間、復元楽器を紹介し、興味ある方へ貸出してきました。 (お貸出しは、→こちら)
リード楽器のクラリネットやオーボエは、身近に見られないこともあり、貸し出しを希望される方がほとんど。
これに対しトラベルソは、東京では楽器店に置かれおり、演奏家やその門下生を含め多数の愛好家が集中しています。 このような事情から、関東周辺では、それらの方々の間でトラベルソを 「流通する」 ことも普通に多く見られます。
したがって、トラベルソ自体はめずらしいものではありません。 興味の対象は、「どのモデルか」、「製作家は誰か」、「材質は本象牙か、黄楊か?」といったところ。
●わたしの復元モデル
メインの復元楽器のモデルは、フォトに示す、T.Lot トマ・ロット。
このモデルは、大きな唄口(歌口、マウスホール)と、指穴の極端なアンダーカットが特徴。
多くの製作家がコピー楽器をつくりますが、その内径の寸法はさまざま。
現存する多数本のデータを基に製作家が独自の考えにより寸法を決めるようです。 わたしのは、復元製作の基本姿勢により、ベート・コレクション所蔵の寸法どおり。
これまで楽器貸出しのほか、多数の方にお譲りし、使っていただいて来ておりますが、独特の味と言えるでしょうか。
わたしが考えるに、下管の指穴間隔から推察すると、これはローピッチ(フレンチピッチ/ベルサイユピッチ)のA=392あたりの楽器。
実際に、A=392 に調整すると、最高音域 F、F#、G、G#、Aまでうまく出ます。
これに対し、同じく現存する A=415あたりの上管を復元してみると、これら最高音域の出方は少し厳しい。
●各音のピッチはつくりだすもの
ところで、トラベルソは吹き方で各音のピッチは大きく変わります。
アンブシャーや息の強さ、吹き込む角度と下あごを出す量、マウスホールを唇で覆う量などによるのです。
わたしも最初のうち、トラベルの知識がく、吹いてみてF音とF#音でピッチの差がないのに驚きましたが、それらは自分でつくるもの。
他の音も同様。 そこで、ピッチ測定において、どのようにするのを基準にして測定すべきか戸惑います。
このトマ・ロット T.Lot は、とくにマウホールが大きく、かつアンダーカットも大きい (ベート・コレクションにて実物の写真撮影やスケッチをしました) ために、いくらでもピッチに変化がつけられます。
そこで、調節可能な範囲の中間あたりのピッチを計測すればよいのではと思うようになりました。
フォトは、そのようにして計測した、A=392 と A=415 のピッチ測定。
フォトをクリックし、順にクリックを続けて拡大すると、グラフ用紙の目盛までご覧いただけます。
中央に、A=392 および A=415 に対して「基準 0」 を取り、上下に100セントすなわち半音のずれを目盛り、そこに測定値をプロットします。
一般にトラベルソの最低音Dが低めな傾向にあること、F音とF#音のうち、いづれをどれだけ犠牲にするかの度合いなどを含め、全体的にピッチがあっていることが見えます。
A=392 の替え管では最高音まで測定できるのに対して、A=415 では、測定できていないものが読み取れます。
一般に歌口のアンダーカット量を少なくすると、吹き込み角度が限られ、ピッチ変化量が少なくなる気がします。
また、歌口の大きさを大きくすると、モダンのように音量を増す傾向があります。
これらの意味で、大きな歌口を持つこのT.Loは、モダンフルートから持ち替えやすいでしょう。
しかし反面、歌口のアンダーカットが多くピッチ変化量が大きくなることから、ピッチつくりがある程度できる経験者向きのトラベルソといえるでしょうか・・・
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