I.H.Rottenburgh バロック・オーボエ:世界にただ1本のバイオレット・ウッドの魅力

DSC_0623IHR完成2021 (2).JPG楽器の書棚 (55) 2021/4/11

バイオレット・ウッド(キング・ウッド)は、魅力ある材(→こちら)。 赤紫がかった褐色に縞模様が美しく、表面はなめらかで落ち着きが感じられます(→こちらも参照〉。

トラベルソへ適用した例は、→こちら。 またモダン・オーボエでも、金メッキ仕上げキーの最高級クラス管体に用いられていますね。

ワシントン条約により国際商取引に制限が加わり、今では輸入されることはないでしょうか。 そこで国内流通材に頼るも、すっかり見かけなくなりました。 見つけても極めて細い角材のみ。

●ベル材の確保

オーボエ・ベル材の確保はつねに頭を悩ませます。 モダンと比べバロック・オーボエのベル径は太い。 2.5インチ(63.5mm)角材がほしい。

比重が大きく緻密で楽器に適する硬材には、グレナディラ(比重1.2、径40cm)、アフリカ産黒檀(比重1.03、径60cm)(→こちら)、ブラジル産キング・ウッド(比重1.2、径25cm)、メキシコ産キング・ウッド(比重1.14、径30~50cm)などがあります。

これら広葉樹では、150~200年の成木でも幹径は、わずか0.25~0.6m。 白や薄い灰色の辺材(外側周辺の部分)は用いず、黒や濃い褐色の芯材(中心部分)を使用します。 割れを防ぐため芯を外して切り出すと、取れる角材は60mm▢~145mm▢。 まっすぐに成長しない広葉樹ですから、長い材は取れず太いものは短い角材のみ。 

●見つけ確保しておいた角材

入手していたバイオレット(キング)ウッドは、50mmx55mm、長さ350mmの角材。 一般に、オーボエのベル径は56~60mmもあり入手した材では細くて適用できません。

ベルの最大径は底部分ですから象牙マウントを施すときは、必要な木部の径は小さくて済みます。 適用できそうなモデルを探すと、象牙マウントを持つロッテンブルク I. H. Rottenburgh の木部径は50mmほど。 ぎりぎり実現できそう。

●オリジナル楽器と復元楽器

復元したのは、故ミシェル・ピゲ氏が所有し使用していた楽器。 故ピゲ氏は、リードのセッティングにより種々のピッチに適用していたらしい。 そこでローピッチ A=392 への適用を試みると、フォトに示すように2オクターブと少しの全音域にわたり完全にフラットな特性が得られました。

【適合リードのパラメータ】
  全長84mm、突き出し長67.5mm、ケーン長26mm、リード先端幅10.5mm、チューブDenner58mm

仕上がりの美しさとみごとな特性データ。 これまで復元してきた中で、最も豊かな気持ちにさせるオーボエが手に入りました。

この I.H.Rottenburgh モデルについては、復元製作家がいらっしゃらないでしょうか。 すでにわたしが復元していたブビンガ製(→こちら)と合わせ、2本のみ。

ここでバイオレット・ウッド製になると、おそらく「世界にただ1本」のロッテンブルク I.H.Rottenburgh オーボエと言えるでしょう。


【コピー】

材質: キング・ウッド イミテーション象牙リング
    洋白銀製のキー No.2167
    A=392Hz  重量303g

【オリジナル】  

(元)所有: 故ミシェル・ピゲ Michel Pigue (1932-2004)
製作: ロッテンブルク Jean-Hyacinthe (Joannes Hyacynthus) Rottenburgh (1672 - 1765)
    ブラッセル Brusseles 1730頃か
楽器: バロック・オーボエ 黄楊 boxwood  象牙リング 銀製のキー
    A=396Hz あたりか 全長594.8mm


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