木工旋盤のチャックの取外しはいかに

画像楽器のつくり方 (84) 2007/10/6

バロック木管楽器つくりには木工旋盤が必要。 また、旋盤に取付けるチャックも必需品。

木管つくりは、大きく分けると2つの工程からなります:

 ① 木管の外形・内径つくり
 ② 木管の音出しと調律

これら工程のうち、①外形・内径つくりの工程では、木工旋盤とチャックは欠かせません。

今回は、木工旋盤とチャックについて見てゆきましょう。 (旋盤の全体イメージは、→こちら

●木工旋盤

ベッド bed の上に乗っかる形で、左側に主軸台 head stock 、右側に芯押し台 tail stock があり、それぞれ左右に動かせるスライド構造。 高い精度を保ち、動きに対して回転の軸が変わらぬよう、高い精度に設計されています。

わたしの木工旋盤のベッドは、平行な2本のパイプ。 レールのごとく左右に伸びた2本のパイプが正確な平行度を保つよう、ベッドの両端で鋳造の取付け具が支えます。

取付け具を、頑丈な木工用の作業机にボルトで留めるか、専用脚に取付けます。 わたしは、パイプ式の4つ足状の専用脚を取付け、床置きとしています。

旋盤は自重40Kg。 専用脚を合わせ、大人1人分の重量。 作業机に据え付けるときは、旋盤を回してもビクともしない、しっかりした机が必要。 華奢(きゃしゃ)のものでは、ゆれが生じてうまく作業ができません。

主軸台は、回転する軸(スピンドル spindle) を支える単純構造の鋳造物。 ベアリングにより滑らかな回転と、ブレない高い精度を保ちます。

スピンドルには、同心を保つ大中小3種の径のプーリーが付いています。 また、駆動モータ軸に結合される2番目の軸にも、同様に小中大3種のプーリーがあり、プーリー同士をベルトで結びます。 (プーリーの様子は、→こちら

スイッチを入れモータを回転させると、スピンドルに回転力が伝わって回ると言う仕組み。 ベルトを掛けなおすと、3段階で回転速度を変えることができます。

チャックを用いて木管の材を結わえると、スピンドルの回転と同時に材が回ります。 反対の右側から、材を押す芯押し台により材の回転軸を保ちます。

芯押し台は、ベッド上をスライドさせて適切な位置で固定します。 芯押し台の中心の可動部は、回転ハンドル操作により左右にシフトします。 芯押し台の右側に回って立って眺めるとき、「時計回り」の方向にハンドルを操作すると、可動部が左に、すなわち主軸台の方向にシフトします。

可動部には、標準のモース・テーパー Morse taper 加工の空洞があり、固定センタや回転センタほか、各種のアクセサリーを取付けることができます。 仕様は、モース・テーパー#1(MT1)。 (アクセサリー類は、→こちら

わたしの旋盤は、主軸台のスピンドルも、MT1仕様。 一般に、旋盤により、スピンドルと芯押し台可動部の仕様が、MT1、MT2、MT3、あるいはそれらの組み合わせとなっています。 モース・テーパー仕様は、テーパー度合いは同じで径が異なるのみ。

●チャック

チャックは、種々のメーカーからさまざまなものが用意されており、目的に合わせて選択購入します。 わたしは、3爪構造のものを2品種を使用。 (→こちらの記事も参照)

チャックを選ぶとき、もっとも注意すべきは、取付けネジの規格。

主軸台のスピンドルの内径はモース・テーパーですが、外側には、オスネジが切られています。

規格に合ったメスネジのチャックを入手しないと、使い途がありません。

わたしの旋盤のスピンドル規格は、いわゆる、3/4" 16 tpi と呼ばれるもの。 スピンドルの外径が、3/4インチ(19mm)。 ネジのピッチは、1インチ当たり山が16個。

旋盤により、1・1/4" 6 tpi、 1" 12 tpi、 1" 8 tpi、 1・1/2" 8 tpi、 1・1/8" 12 tpi、 1・1/4" 8 tpi、 30㎜x3.5㎜、 33㎜x3.5㎜ と異なるのです。

次に、ネジ切りの方向に合わせ、スピンドルに対しチャックを「時計回り」に回して取り付けます。 一方、モーター駆動のスピンドルは、「反時計回り」。 材が奥から手前に向って回ります。

この結果、スピンドルとチャックは、「締まる」方向となり、回転中に外れることはありません。 しかし、逆に言うとスピンドルからチャックを外すときが大変。 「締まり」きったもの同士ですから硬くて、ネジを緩めるのには大きなトルクが必要。

モーターのスイッチを切り回転を止めても、スピンドルは自由に回ります。 自由に回るスピンドルから、どうやって固まってしまったチャックを取り外すか?

フォトは、主軸台近辺の様子。

チャックを外す方法、およびチャックに取り付けた材を外す方法を示すため、必要な工具をあてがって撮影。 工具は、左から順に、中型スパナ、ノックアウトピン、?型締め具。 実際には、これらをすべて同時に使うわけではありませんが。

スピンドルには、スパナで挟むための平行な凹みがあります。 この凹みを中型スパナで挟み、スパナ下方を旋盤のベッドの手前のパイプにあてがいます。

チャック本体には、丸棒状のノックアウトピンを受け入れる丸い穴があり、そこにピンを差し込みます。

チャックは、「時計回り」に締まっていますから、ピンを「反時計回り」、すなわち向こうから手前に向って、瞬間的に力を入れて回すとチャックが外れます。

このとき、自由に回るスピンドルも、「反時計回り」に回ろうとしますが、スパナがベッドのパイプに当たり阻害され、結果としてスピンドルを固定状態にできるのです。

一方、3爪チャックの中心の1インチほどの穴部分に、1インチ 25,4mm 径に削った材の端を挿入し、チャック外周のギザギザ環を「時計回り」に回して材を締め付けます。

このためには、フォト手前右の「?型締め具」を、チャックのギザギザ環の丸い穴に挿しフォトとは反対側の方向に垂らします。 一方、ノックアウトピンをチャック本体の丸穴に挿し、両方を左右の手でつかんで下方に押し下げ「時計回り」に締めます。

加工中は、材自体が「反時計回り」に回転し、結果として、やはり材とチャックが硬く締まります。 いかにして、材をチャックから外すか?

外すには、チャック本体に対し、ギザギザ環を「反時計回り」に回す必要があります。 チャック自体が自由に回転するスピンドルにしっかりと取り付いていますので、以下の方法を採ります。

フォトのように「?型締め具」を、ギザギザ部の穴に引っ掛けて手前に垂らし、下端をベッドの手前側パイプの内側に引っ掛けます。 その状態で、チャックの丸穴にノックアウトピンを挿し、向こう側、すなわち「時計回り」に押します。

●バカヨケ

これら、主軸台のスピンドル、チャック本体、チャックのギザギザ環について、取付けるとき、および外すときに、一体、どっち向きに回すのだったかと迷います。

頭で考えても、サットは分かりません。 相対的ですから、どちらを固定するかによって回す方向が反対になるからです。

また、結構大きな力を入れる作業ですから、危険性が潜んでいます。 この防止策として、目で見てすぐ分かる「バカヨケ」の工夫をしています。

フォトに見られるように、三角型の印を入れます。 白いテープを細長い三角状に切って貼るだけ。 

 - 主軸台に貼ったもの: チャックを「外す」とき、ノックアウトピンを手前に引く

 - チャックに貼ったもの: 材をチャックから「外す」とき、ノックアウトピンを向こうに押す

たったこれだけの工夫ですが、とても便利。 このノウハウに気づくまで、いつも回す方向がどっちだったかと迷うことが多かったのです。

何でも、聞いて見ると、「な~んだ、それだけのこと」・・・


【関連記事】  青字クリックで記事へジャンプします。

「金工旋盤とは無礼千万(せんばん)、われは木工旋盤なり」
快適な切削は、適切な回転数から
木工旋盤のチャック類は、どのようなものですか
双方向の同心確保:ピンチャックの応用



"木工旋盤のチャックの取外しはいかに" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント